岡本呻也著 文藝春秋刊 

解題 『ネット起業!』 田中裕士vs.岡本呻也9

インタビュアー 田中裕士
文藝春秋(取材スタート時の編集担当者)

  ●川の流れのように

田中 編集者から、物書きへ生まれ変わったわけですね。ご苦労さまです。
 その後はちょっとは休めたんですか。

岡本 いえいえ、編集者としての仕事は続けますよ。少なくとも編集的センスを生かした仕事を今後もやるつもりです。

 それでね、9月の初めに奥入瀬渓流に行ってきたんですよ。会社を辞めてから初めて、一息ついた瞬間でした。
 奥入瀬は十和田湖の水が青森県側に流れ出すところにある14キロメートルほどの渓流です。そして、僕はここが日本で一番きれいなところだと思っているんです。
 その理由というのは、あそこには京都の庭園を20個くらい一度に回ったくらいの自然が作った箱庭的な景観があるからなんです。何が面白いかというと、あの景観をつくっているのは十和田湖から来る水の流れ、風、雨、気温、日差しといった、外的条件がまずあって、そこに植物が生え花が咲き、カワセミやら日本カモシカやらがやってきて、それらがつくってきたものなんです。
 そうして自然にできた景観なのに箱庭になるのはどうしてなのか。それは実は逆でして、庭のほうがあれをマネしているわけです。
 奥入瀬の自然がつくった箱庭が表現しているものはいったい何なのか。
 それは、「そこにあるものを、あるようにならしめているものは何なのか」ということについて表現しているわけです。つまり真理を表現しているわけ。時間が経つにつれて自然がつくり出していく造形は、「ものごとがこのようにあるのはなぜなのか」ということ、即ち「ものの理」を表現しているわけです。

田中 あるがままに、見れば分かると。

岡本 そう。
 何でもそうなんだけどいい仕事というのは自然の法則が織り込まれていなければならない。そこまで到達していなければならないんです。
 僕の本の中では、例えばポジティブ・フィードバックとか、WIN-WINパートナシップとか、あるいは資本の回転速度をなるべく上げるためにはスピードやアライアンスが必要だとか、そういうカタカナ言葉を使って説明していますけれど、実のことを言うとそれは自然法則に逆らうことなくそれに巧く乗っかって、労働の効果を最大化するにはどうすればいいかということを書いているわけであって、それは奥入瀬の自然の中で見ることができる自然のつくった造形の姿とぴったり重なるものだと思うんです。あるいはあの景観の中に含まれていて、透かし見ることができるんです。

田中 なんだ。休みの時も本のこと考えているじゃないですか(笑)。
 何か突き抜けてやっている才能のある人というのは、どういうものか、どういう生き方をすればそうなるかというのを僕はよく考えているのですが、そのためには実際に何かをやった人を見るのが一番なんですよ。百万遍の書を読んでも、最後はやるかやらないかしかない。実在の人間を見れば、その人の潰れた理由、今後足を引っ張りそうなダメな点もわかるわけです。しかし、過去、あるいは今現在一つのモデルとして成り立っているという存在感が大きいわけです。
 岡本さんの本の中に出てくる人たちは、やはり圧倒的にこの見ればわかる才能のある人たちですが、この本を読めば彼らが人と違う部分や、その限界が見えてくるという表現になっていると思いますね。

岡本 結局人間、無理があるとダメなんですよ。ビジネスでもそうだと思うのですが。この本の中で、最初に失敗をした人たちは、その時は無理をしていたのかもしれません。自然法則に逆らっていたかもしれない。
 でもその経験から何かを学び取って、さらに大きくなってきますよね。彼らは真理を知る者になっているんだと思いますよ。

田中 あやしげな整体師みたいなこと言ってますね(笑)。 最後に今後の予定を聞いておきましょうか。

岡本 僕が今現在思っているのは、僕は寡作になるだろうけれど、一作一作ごとに、他の人では絶対に盛り込むことができないであろうような価値を織り込んでみせる、ということです。

 ここまでごちゃごちゃと事実に対する意味付けを書かなくてもいいだろうと思う読者もいるでしょう。でもまあ、そこがやっぱり僕のスタイルになるんだと思います。それと今後のテーマというのは、実は決まっていて、一つは「ビジネス・センス」。言葉にならないから「センス」という言われ方をしているものを、明示知にしてみたい。じゃないと、みんなわからないじゃないですか。

田中 次回作も頑張ってください。まあ、その前に処女作のプロモーションをよろしくね。  


(この項終わり)

b.pnga.png

サイト運営者は桜内ふみき氏をサポートしていますサイト運営者は桜内ふみき氏をサポートしています




人間力★ラボ
人間力★ラボ




人間力営業
人間力営業



「人間力」101本