岡本呻也著 文藝春秋刊 

解題 『ネット起業!』 田中裕士vs.岡本呻也8

インタビュアー 田中裕士
文藝春秋(取材スタート時の編集担当者)

  ●その他、泣き言

田中 それにしても、ゴールデンウィークもずっと働かせて、日比谷公園のビールぐらいしか奢らなくて申しわけなかったですねえ。

岡本 いやあ、田中さんにこの本の構想をお話ししたのが2月2日で、その日の夜にマネックス証券にいる友人から「今日ヴェルファーレでやっていたビットスタイルに行った。凄かった」というメールが入っていて、「しまった、取材に行けば良かった……」と思ったのを憶えてますよ。

 僕は今度の本を取材して書いてる時は本当に苦しくて、まだこんなに苦しいことが残っているとは思ってなかったですよ、わたし世の中なめてますから。いろいろ泣き言も言いましたが、でも、すごく苦しくてつらいことがあった場合、その時こそ自分が成長している時なんです。苦労はするもんです。
 この年になってまだ先に進めるとは思わなかった。そうすると、まだこの先があるかもしれないと気が付きますよね、じゃあそれに挑戦しなきゃ。

 だから、今何かを書いたりつくったりするときにも、またレベルが上がっているなあと思うし、次に何かを書くときはすごく楽になっているはずだと思うんです。壁を乗り越える闘いだったんですよね。でもやってるときはそういう意識じゃないから、ただ苦しいだけなんです。「何のためにこんなことをやっているんだろう」と思いましたよ。逆にそれだけ追い詰められるということは、それを切り抜けられれば確実に力がついている。

田中 それはノンフィクションを書くときには、すごく大切な過程です。
 僕が、オウム事件の取材をする時も常にそうでしたね。オウム事件の被害者に会うときは、岡本さんがこの本の中に書いてある倒産の話を聞いて打ちのめされるのと同じで、取材者側として、被害者の置かれた状況にすごく打ちのめされるわけです。それをどう自分が受けとめたらいいのか、どのように書いたらいいのか。
 自分が混乱していると、読者にわかる文書は書けないわけだから、自分の中で価値観の折り合いをつけて、何が重要かということの意味付けをしていかなければならないわけです。その中で、だんだん自分が正しいと思えるものとか、重要とも思えるものがはっきりしてくるわけです。

岡本 たぶん、「これでいい」と、パッと飛びついたらダメなんですよ。ずーっと疑問に思っていて、何が正解かというのを常に考えていて……、そうすると時間がある程度かかるんですよ。

 いや、ほんと。偉そうなこと言ってますけど、この本のテーマの本質の部分がはっきりしてきたのって、実のことをいうと7月くらいだと思うんです。元々書いていた第1章をさっぱり切り捨てて、スコーンと抜けた地点で、見えてきたものなんです。だから、もし夏前に本を出していたら、その点が見えないままに出すことになっていたかもしれません。読者に対して不親切になっていたかもしれませんね。

 本業とは別に本を書いている友達と飲んでいて、彼が「やあ、本を書くのってつらいよね」と言うわけですよ。それで私も「いやまったくです」と合わせることができるようになったわけですな。彼にしてみると「やっとこいつもわかるようになっただろう」ということでしょうね。毎回毎回、新しい挑戦を続けなければならなくなってしまった、そういう因果な商売だと覚悟を決めるしかないでしょう。

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