岡本呻也著 文藝春秋刊 

解題 『ネット起業!』 田中裕士vs.岡本呻也4

インタビュアー 田中裕士
文藝春秋(取材スタート時の編集担当者)


  ●旧体制に見切りをつけ、新しい価値を創る

岡本 僕は、ビジネスの文化では、ベンチャーの方に正当性があるんだと書いていますが、当時その人たちはどのように見られていたかというと、大企業の中あるいは社会の中で、横紙破りというか、元気だけれども上司や目上の人たちがコントロールすることができない困ったちゃんだなと思われていたわけです。僕も似たようなものでしたから、彼らの気持ちはよくわかります。

田中 日本の組織はみんな均質でなければならないですからね。
 一緒に取材に行った、ハイパーネットを立ち上げて破綻した板倉雄一郎氏が常にエネルギーが余っていてそれを消耗する対象を探していたという話は印象的でした。自分でも持て余すようなエネルギーをもった人間っているものなんですよね。

岡本 組織の中でじっとしていられない人々。彼らは才能があって、自分は自分単独でも仕事をすることができるという自信があったんです。実は、組織の論理に縛られている人間というのは、自分がベンチャーをやるなどということは考えることすらしない。そういうことは理解できないですよ。

 彼らは、そういう中で新しい世の中を作ろうとした人たちだったですよね。
 ビットバレーなんかを幕末の維新の志士にたとえるステロタイプな見方がよくされていますが、ある部分僕は合っていると思うんです。つまり幕末の志士は何を見ていたかというと、「これは幕藩体制は死んだ」と。徳川の世というのは終わったのだから、次にくるものは何かということを見据えて、その方向に向かって走ったわけです。まっすぐに、確信をもって、虐待されつつも。家絶対の時代に脱藩しちゃうわけですから。
 そうしてことを起こして、実際に新しい世の中をつくっていった。ある種、そういうふうに目が利いた人間が90年代の初めに僕は出ていたと思いますよ。それがまさにIT革命の前夜の話だったと思うんです。

 あるいは、体制側にも勝海舟のような人が出てこなければならない。
 今まさに、僕の目から見ると、そういう維新の過程なんです。ネットベンチャーブームの衰退というのは安政の大獄かもしれませんね。あるいは第一次長州征伐とか。でも、この動きは絶対に止めることはできませんから、体制変革側が必ず勝つでしょう。

田中 既存の会社の側にそういう文化を受容する人たちが出てくるでしょうね。

岡本 出てこなければ、勝てないですよ。大政奉還が起こったときには、経済の主権は消費者に引き渡されるわけですから、消費者が財やサービスの価格を決めるわけですよ、その中で消費者が望む価格で商品を提供できない会社は潰れるしかないということになるでしょうね。

田中 自分と違う他人の存在を受容するということは、自分の資質はどこにあるかを見つめる第一歩だと思いますが。

岡本 そうなんです。
 ビジネスモデルの競争というのは、如何にして自分が仕事を通して価値をつくっていくことができるかという世界なんです。
 自分が属する社会の中での自己同定(アイデンティファイ)の話になるのですが、「自分が社会の一員であるということは、各々自分の長所を世の中で発揮して生きていくのだ」ということです。
 この本の中に出てくる人たちは非常に単純で、「このビジネスをやるしかない」と旗幟鮮明なんですよ。


 仕事を通して価値をつけるということはどういうことかというと、A4の文章に目を通して、赤ペンで添削しただけでも、そこにはちゃんと付加価値があるわけです。要はその積み重ねなのですが、ではその朱を入れた価値というのはカネに換算するといくらなのか、が重要なのです。
 そう考えていって、一番高い付加価値をつけることができた人間が最大の利得を得るということですよね。日本の社会の中で突出していく人間というのは、ある程度そこのところがわかっている人たちです。だから、本の中で板倉氏が無料プロバイダー「ハイパーネット」のシステムを考えたときに、「これで1兆円ビジネスをつくる」と言うわけです。動機はそれでいいんです。あとはビジネスがそれについてくるかどうかという問題です。新しいことをするということは、新しい価値をつくるということなんです。そこに対価が支払われるんです。

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