岡本呻也著 文藝春秋刊 

 買い相場をつくる

「うちの場合、゛消費者が買いたい値段゛を知ることができるというのがミソなんですよ。探し物と値段のマッチングをやっているわけですから」
 たとえば、"ペンティアムの500メガヘルツ(処理速度)のCPU(演算装置)を搭載したパソコンを幾らなら買いたい"というニーズが1000件集まったとします。それはつまり、先に受注してしまっているようなものなんです。だってそうでしょう、売り先は決まっているんだから、商品を供給すれば売れるに決まってます。
 データー数が多ければ多いほど、値段に説得性が出るでしょう。われわれは、それを゛買い相場をつくる゛と言っています。゛この地域に住んでいる人は、こんな商品をこれくらいの値段で出せば買う意志があるみたいです゛なんてデーターを、個人属性を切り離してメーカーさんに売ることができます。あるいは、それをイージーシークを通して売らせていただいてもいいですよ。そういうデーターが現在9万件。そして今後も続々と集まりつつあるわけです。
 ここまで言ってもわからない人は、僕から言わせればもう堕ちるところまで堕ちてください。ということですね」
 小澤は声のトーンを上げてくつくつと笑う。

「幾らなら幾つ売れるか」。それがわかれば苦労はしないと思いつつ、足を棒にしながら営業をされている人は多いだろう。だがネットは個客との間に架け橋をつくり、その夢を叶えるかもしれない。出資者で社外取締役の西川潔は、
「彼の場合は、99年春の段階で既に2年間もやっていたという実績がすごい。しかしイージーシークが本当にビジネスとして立ち上がるかどうかについては迷っていたようだ。僕が背中を押してやったようなもんですね。ネットビジネスの中でも、潜在的にものすごく面白い可能性があると思う。あとはこれをカネにできるマネジメント力があるかどうかですね」
 と語る。
 小澤はこの商売の仕組みについて特許を申請済みなので、このビジネスを他人がそのまま真似ることには大きなリスクが伴うだろう。いわゆる「ビジネスモデル特許」である。まだ30歳にも満たない3人の若者は、ネット上でカネを生む大きなチャンスを手に入れた。その現在価値は3億円と評価されている。小澤たちは成功を信じて猛烈に働いているが、ビズシークが実際に大きな収益を上げる企業になるかどうかは、私には判断できない。彼のビジネスはスタートしたばかり。初年度8カ月間の売り上げは500万円と、ほとんど立っていないレベルだ。

 今まで無給で働いてきた小澤は、2000年に入ってから年棒600万円を受け取ることになった。金額は西川が決めた。この本が出版される頃には、ビズシークは創業の地秋葉原を離れて、渋谷に近い三軒茶屋に引っ越している。1年もここに居つかなかったことになる。50坪の格好よいインテリジェントビルだ。社員やアルバイトも増やすため、毎日面接を行っている。
 「分不相応なオフィスです。でもやっぱり専用ブースを作って、2人くらい社員が住み込むことになると思いますよ」
 と小澤。どうやら住み込みだけはここの社風のようである。



 (この項終わり)

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