岡本呻也著 文藝春秋刊 

3億円の出資

 こう書いてくると、ただのパソコンおたく四人組のマンションオフィスではないか、そんなものは80年代にゲームソフトを作っていた連中と変わらないよと思われるかもしれない。しかしこの27歳の若者4人は、ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業専門に投資し、株の値上がり益を収益とする会社)2社から3億円の出資を受ける予定である。出資とは、会社がつぶれたら戻って来ないという性質の金である。そのかわり株価が上がれば出資側は株を売って利益を得ることができる。

 小澤が99年8月に会社をつくったときの資本金は1500万円。小澤が75%。10%が第4章以降に詳しく説明する「ビットバレー」の創唱者の一人、西川潔率いるネットエイジ、残りを3人の社員が払い込んだ。それを翌年に4275万円に増資した。今回の増資分、3億円は、同じくビットバレーの創唱者の一人小池聡が経営するネットイヤーと、グロービスというビジネスマン向けの経営教育学校を経営している堀義人が世界最大規模のベンチャーキャピタル、エイパックスと合併でつくったエイパックス・グロービスが引き受ける予定になっている。
 彼らは一株50万円で600株を買ったことになる。つまりビズシークの株価は当初の10倍になったわけで、小澤が持っている50%の持ち株は1億円以上の価値を持つことになる。社員のうち一人は会社設立時に5万円で一株しか買う余裕がなかったそうだ。しかし、彼の株も250万円の価値をもつことになる。

 もちろん、棚ボタで3億円が空から降ってくるわけはない。
 ベンチャーキャピタルの商売は、投資先のビジネスが将来さらに伸び、企業価値として上昇するであろうことを見越して、まだ安いうちに株を買っておき、いろいろ仕事を手伝ったり経営指導したりして(何もしないことの方が実際には多いようだが)、株式市場に公開して高値がついたところで株を売ろうというものである。
 公開市場で一般投資家が売り買いする会社が簡単に潰れてしまうようなことでは市場が成り立たないので、企業が株式公開するためには毎年の利益を維持し、正しい情報をオープンにできるよう、きちんとした社内体制を整えて、証券会社や東証が行う審査をパスしなければならない。この審査に合格して、「これなら株売買を証券市場で行っても問題ない」と判断されれば、晴れて株式市場に株式公開できる。これはつまり、資本市場から一流企業としてのお墨付きをもらうことなのだ。
 加えて公開時には、公募による時価発行増資で10億円規模の資金調達を行うことができる(インターネットの仮想商店街を運営している楽天は、2000年4月の公開時に495億円という巨額の資金を調達した)。これは銀行借り入れと違って返済する必要のない、経営者が自由に使える事業資金だ。好業績を続けてより多くの投資家を引き込み、株や社債で市場から事業資金を調達するというのが資本主義における優等生的企業のあるべき姿なのである。
 つまるところ、この操業一年弱、社員4人のビズシークが近い将来こうした公開企業の仲間入りをするという現実的な可能性をベンチャーキャピタルが認めたが故に、3億円の投資が行われることになる。あえて大げさにいうと、この会社がトヨタやソニーに連なる日が来るかもしれないと、小池や堀は踏んだということだ。

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