岡本呻也著 文藝春秋刊 

ボツ原稿 ネットベンチャーに聞く「ネットビジネスの本質」

マネックス証券の松本大は

「金を得るために起業する」という人もいるかもしれないが、それだけが動機では長持ちしない。成功者はどこかで金以外の目的を見出している。
 アイデアやビジネスプランから入る者の場合は、「これをやったらきっとうまくいく。みんな驚くぞ」というゲーム感覚を持ち、それが実現した暁に感じるえもいわれぬ恍惚感の麻薬的な期待が行動力の源泉になっている人もいる。その目標が単純な自己満足ではなく、人びとの潜在的なニーズを満たすところに嵌っている場合は成功を納める確率が高くなるだろう。そこに近づくためには運かセンスか経験のどれかが必要だ。

 マネックス証券の松本大は
「自分は防人派ではない、屯田兵派だ」
 と自己分析する。彼は勤め人だった時もパートナーになってからも、既に存在するビジネスをマネージするのではなく、いつもリスクを取って、今までに無かったものを新しくつくる立場に身を置いてきた。ソニー社長の出井と颯爽と握手している姿をテレビで見たり、30代にして大手企業が群がる新規ビジネスで先駆している様を雑誌で読むと、「松本という男はスーパーマンに違いない」と思ってしまう。だが彼は「真実は面白くないですよ」とそっけない。
 「僕が育った浦和は高校サッカーがやたら強くて高校の二軍が実業団に勝ったりしていたのですが、強いのは当然で、小学校の時からクラス全員がサッカーをしていたからですよ。サッカー人口が断然多い。朝昼晩サッカーばかりやっていて、野球をやってたりすると"なんだお前は"とのけ者にされてしまう。そういう土地柄だから強いんです。そのように兵力を集中すれば強いに決まっているのですが、外から見ると結果しか見えないから"彼は能力があるのではないか"と錯覚する、そんな感じじゃないですか。
 僕は単純なので仕事は全身運動だと思っています。全活動を集中すれば勝てると思う。人間の全能力の個人偏差は少ないと思うからです。
 われわれは社会全体から見ると既存の枠組みから外れた"異物"ですから、いくら根っこのビジネスモデルに確信があっても、いつも梯子を外されたり時間に遅れたりしてたいへんなんです。だから流されず潰されず、ちゃんとビジネスを成り立たせるためにやっている水面下の水かきはたいへんなものですよ。ひたすら働くのみです」
 トリックプレーで人の目をくらませているわけではない。コツコツ辺境を開拓している屯田兵なわけだ。開墾に行くのも、誰かがそれをやらなければならないから。ニーズの空白を発見したら、それを満たさずにはおられない。松本の場合は、そうした使命感と同時にエンジンの回転を常にイエローゾーンまで高めておかないといけないという強迫観念を持ったスーパー貧乏性なのである。松本は常に能力を100%発揮させるように自分を駆り立てている。
 「人ができることは、根性を出して全てやる。後は運を天に任すしかありません」
 しかし彼が幸運なのは、それについて来てくれる社員がいてくれることだろう。
 仕事が好きな松本に対して、同じ仕事中毒でも困難に立ち向かうことを純粋に楽しむタイプの経営者もいる。リスクと、膨大な仕事量にわくわくするという。一種の仕事マゾである。

 その一方で、好きなことをやるために起業する経営者がいる。自分の自由度を最大化することが動機となっている経営者にオン・ザ・エッヂの堀がいる。
「自分の精神世界の充足が大切なんです。好きなようにやりたいから働く。そのためには少々の徹夜はするけど、でも長期的に気持ちよくないことが続くというのは耐えられません」
 その分彼は、「道は自分で切り拓く」という強い意志力を持っている。堀江の夢は宇宙旅行だ。みんなが行けないところに行ってみたいからだが、既存の道を選ぶなら宇宙旅行士になる訓練を受けることになる。これは実に狭き門だ。そんな訓練を受けるよりも、彼にとっては自分でやるのが一番早い。
「民間の宇宙旅行会社をつくる。せめて地球の軌道上を1周したい。100億円あればできるでしょう」。
 彼は既にそのくらいの金を手にしている。
 わがままといえばわがままだが、わがままを通すためというのは十分な起業の動機になりうる。

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