岡本呻也著 文藝春秋刊 

サイバード設立

 真田は98年夏、アクセスに辞表を出した。
 「僕は携帯電話コンテンツの会社をつくります。僕の方でコンテンツ事業をやるので、そのうちアクセスの閲覧ソフトと合わせて継続的に収益が上がるように考えますよ」
 起業家は、サラリーマンとしての引き際も見事な円満退社で辞め括った。真田はリョーマやQネットの頃の感覚を完全に取り戻しつつあった。雌伏7年、真田はやっと本来の自分を回復しつつあると感じていた。
 98年9月、サイバードが設立された。資本金9000万円。堀は瀬戸際になって伊藤忠商事の出資を仰ぐことに成功した。持ち株比率は堀社長、真田副社長、岩井専務取締役で50%超、オムロン・コミュニケーション・クリエイツと立石琢磨、伊藤忠商事で50%弱だった。

銀行決済コンテンツ

 ドコモ榎チームは、着々と98年末に予定するiモードのサービス開始に向けて準備を進めていた。魅力的なメニューリストをつくり、情報提供者と共栄関係を築くためには、コンテンツ・ポートフォリオに従って泥船の漕ぎ手を見つけれなければならない。
 夏野はその中でも取引系にこだわり、銀行をメニューに加えたいと主張する。榎はもちろん銀行が話に乗ってくれればありがたいものの、無線のセキュリティーを気にする保守的な銀行が乗ってくるという確信は持てなかった。
 夏野は住友銀行の本店支配人であった國重惇史を訪ね、ハイパーネットでかけた迷惑を詫びてiモードの情報提供者になってくれるように頭を下げた。國重は夏野の話を聞いて、担当役員に話を繋ぐことを約束した。この際「他にどんなコンテンツがあると便利だと思われますか」との質問に國重は「うーん、競馬の結果情報なんかあると便利だと思うけど」と答えている。
 2週間後、住友銀行副頭取の堀田健介がドコモ社長の大星を訪ね、住友銀行がiモードの情報提供者第1号になることが決定した。話を聞いた榎は「ラッキー」と思った。銀行が乗るのであればiモードのセキュリティ面が認められたということである。これで証券など他の金融機関や大企業からの情報提供がぐっと受けられやすくなった。
 住友銀行の参加は大きな一歩だった。メニューが揃い始めたのである。みんなが泥船を懸命に漕げば、泥船は金船に変わる。ところが、「取引」「情報」「データベース」「エンターテイメント」という4つのカテゴリーをきちんと満たすためには、最強企業との提携というアプローチ方法が通用しない分野があった。「エンターテイメント系」である。

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