岡本呻也著 文藝春秋刊 

熱狂のあと

 十数人のコミュニティから始まったビットバレーだったが、彼らは火のつけ方がうまかった。インターネットの普及という乾いた薪も一杯積んであった。薪の山はパチンと弾けて、世間の耳目はビットバレーに集まった。だが、次にくべる薪がなかった。
 ビットバレーの会員は約6000人に膨れ上がっていた。4500人が利用しているメーリングリストは、3月12日にいったん閉鎖し、そのまま「カフェ・メーリングリスト」に移行、4月20日にはこのメーリングリストの運用も停止し、BVAが提供する「ネット業界の交流メールリスト」も姿を消してしまった。
 事務局の宮城は言う。
 「メーリングリスト=ビットバレーという誤解がありましたからね。会員数を限定することもできたんですが。今は分科会のメーリングリストがビットバレーのホームページに載っています。前から勝手にやっている人のリストを載せているだけなんですけどね。
 月一回強力な求心力のある定例会があるとみんな安心しちゃうんですが、なくなってみるとはっと我に返って、自分たちで新しくグループをつくろうという動きも出始めましたね」
 淡々としたものである。「ビットバレーは拝金主義者の集まり」という批判は、彼にだけは当て嵌まらない。宮城はNPOであるETICから収入を得ており、BVAからの収入はない。欲も存続に対するこだわりもない。あるのは「社会に対してイノベーションを呼びかけ、発信していかねば」という強烈な使命感だけだ。
 「もしビットバレーで金儲けをしようと考えて始めていたら、その分何かサービスを提供しなきゃいけないし、人数が急激に増えてきたのですごいプレッシャーになったでしょうね。
 今までは自由にやってきたのですが、全国にビットバレーの動きが広がっているし、行政からも協力を求められている。寄付の申し出もあります。大きな期待が寄せられていて、主体的に動かなければならない時期が来ているんだと思いますね。
 今後ビットバレーはNPOの名前ではなく、シリコンバレーのような地域名称になるといいなと思っています。その時BVAが果たせる役割はいろいろあるはず。
 ビットバレーという言葉の役割は、もともと渋谷周辺にあったネットベンチャーの潜在的集積を、目に見えるようにしたことです。僕は元々はネットではなくて企業家を支援するところから入ってきましたから、ビットバレーの盛り上がりによって学生たちに"起業"に対しての気づきの場を与え、大企業の中で自分の可能性を見いだせない人や、飛び出したくても飛び出せない人撃ェ企業から飛び出せるようになった。20代、30代の人に選択肢としてベンチャー起業を気づかせ、それによって今ベンチャーをやっている人たちを応援できたというのが大きかったですね。この1年でベンチャー全体を底上げし、その層を広げることができたと思います」

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