3月22日 ベルリン3



 ちょっと歩いて、地下鉄のチェックポイント・チャーリー(冷戦時代は、よく映画に出てきた地名だか)の駅からコミッシェオパーへ。このオペラ座は東側が作った新しい劇場だ。内装はロココ風で非常に豪華に見える。天井にはどこの劇場よりも豪華そうなシャンデリアがぶら下がっている。3階席までしかなく、その上部は音楽を奏でるギリシャ神話の神のような像や天使のストッコでごてごてと飾ってある。ほどよい規模の劇場ではある。なんせ共産国が作ったものなので、王家の紋章などの装飾材料はなく、何となくそれとなく見えるように作ってあるのが悲しい。
 私が買ったチケットは、2階席中央最前列のど真ん中の席である。こんなに足もとがゆったりしている座席は初めてだ。つまりおそらくは、東ドイツが華やかなりしころは、ホーネッカーだの、ソ連からやってきた書記長だのが坐っていたであろう席なのである。時代が変われば変わるものだ。世が世であれば、東洋からやってきたわけのわからない野郎がこんなところに座るとは考えられなかったことであろう。

 客の入りはまあ4割くらいだろう。あまり演奏も気乗りしていないような感じがしたが、主役のイエヌーファは熱演であった。イエヌーファが字を教えてやる少年が、女性になっていた。このプロダクションは二期会との共同製作らしい。舞台には一面に砂が巻かれていて、黒い背景だけでセットは一切なし。ライティングで見せている。背景の正面中央に戸口が開いて、そこから人が出入りする。ドイツ語上演である。第二幕は青白い光で、舞台全体が青白い世界になっている。イエヌーファの服も白く、イエヌーファのおばさんだけが黒い。子殺しの場面は、三方の背景が吊り上げられて、後方で子供を殺しているおばさんの黒色い服と、舞台前方で祈っているイエヌーファの白い服を対比していた。
ソニーセンター 照明の変化が素晴らしい。これは舞台芸術と演出が楽しめる舞台だ。昨日の国立歌劇場でも思ったが、ベルリンには表現主義の根深い伝統が感じられる。もはやここの人たちには身についてしまっているのだろう。同様に建物を見ていても、バウハウス以来の独創的な建築がそこここにみられ、目を楽しませてくれる。イタリアとは違った美的センスが発達しているように見受けられる。
 第三幕は、二幕目と同様にイエヌーファの家の中だが、舞台の色調は灰色、主要人物の衣装は黒。イエヌーファの結婚式である。地面に石が転がっているが、これはイエヌーファの赤ん坊を殺したのを知った人々が振りかざしておばさんを責めるのに使われる。各人の罪の重さを表しているのだ。「罪を犯したことのない者が最初に石を投げろ」というやつだ。群衆は灰色の服を着ていて、これは世間を表している。
 最後のシーンでイエヌーファと旦那は、自分たちのこれからの困難を憂えて歌うが、この時は壁がずっと前の方にせり出して、この2人に対する世間の圧迫感を示す。その後で彼がせり上がって、一幕と同じ黄色い色調の大地が現れ、彼らは壁をくぐって舞台奥へ歩み出していく・・・という分かりやすい演出だ。

 劇場を出て地下鉄で見当をつけていたレストランに向かうが、閉まっていたのでポツダム広場まで戻り、100種類のビールをそろえているという店に入る。グラスもビールによって変えてくるのがすごい。性懲りもなくシチューに近いグーラシュスッペとでっかいアイスバインを頼む。11時満腹になって店を出る。もう食えない。地下鉄を乗り継いで11時45分ホテルに帰ってくる。

ソニーセンター

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これはあくまでも個人的な備忘のための旅行記であり、ここに書かれている情報を利用したためにどのような不都合があったとしても、当方は一切関知しませんので悪しからず。