3月21日 ミラノ経由ベルリン着




 すぐに着替えて、地下鉄に乗り、オペラ座を目指す。地下鉄の中では若いレズのカップルが目の前でいちゃついている。その隣で、人懐っこい大型犬を連れた人がいて、犬は周囲に迷惑を振りまいている。なかなかこれは日本の地下鉄の車内ではない景色だ。
ベルリンの赤の市庁舎ベルリンの赤の市庁舎 アレキサンダー広場で地下鉄を降りて、さっきタクシーに乗った乗り場からタクシーを拾い、反対方向のウンター・デン・リンデンにあるベルリン歌劇場へ向かう。切符を窓口で買って開演時間ぎりぎりに滑り込む。国立歌劇場は、とにかく小さい。舞台にも間口と高さがない。ロココ風のぼろっちい木製のいす、木張りの床、中央通路がないので、真ん中の席の人はみんなに席を立ってもらわないと座席まで辿り着けない。とは言うもののこの劇場は、宮廷歌劇場の面影を伝えている。チケットの値段の安さにも驚いた。これは、指輪の日本公演は、この劇場にとって相当な稼ぎになったに違いない。
 平土間は埋まっているが、2階や3階は5割くらいの入り具合だろう。4階はガラガラである。東側の劇場であっただけに、ボックス席がなくて、2階から4階も座席である。

 劇場の印象はしょぼいが、オペラは素晴らしい。歌唱・演奏、演出、舞台・ライティング、衣装、すべてが楽しめる質の高いものになっている。
 演目は、リヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」だ。「バラの騎士」に続いて、シュトラウスとフーゴー・フォン・ホフマンスタールが構想した究極の冗談オペラである。続けて演奏されるものの、二部に分かれているこのオペラの前半部分は、舞台の前の方だけを使って上演される。中央に回転する階段を配し、その階段の左右でオペラ作曲家と喜劇役者たちの対比を見せる。片方が歌っている間は、片方が停止しているという演出だ。
 歌の方はオペラ作曲家の1人舞台で、素晴らしい。一場の幕切れは、オペラ作曲家がオーケストラボックスに落ち、作曲家の師匠と喜劇役者のマネージャーは舞台わきの客席に仮面をつけて着席する。ほかの出演者は階段に乗ったまま舞台の置くに引っ込んで、そのまんま照明を落とさずに後半が始まるという趣向である。劇中劇の流れをうまく演出している。

 後半の劇中劇では、舞台を隠していた仕切りが落とされて、この歌劇場の十分な奥行きを生かしてスノーボードのハーフパイプのようなセットが作られている。アリアドネが悲劇的に歌っている間、ツェルビネッタとおとぼけ3人組はそのハーフパイプを滑り降りて遊んでいる。
 コロラトゥーラ・ソプラノの難曲、長大なツェルビネッタのアリアは堪能させていただいた。素晴らしい。
 このあと舞台の印象はガラリと変わって、非常に引き締まったものになった。バッカスの声が上の方から降ってきて、姿は見えない。やがて上手から光が差し込んできて、仮面をつけたスケートボードの若者が二回りほど舞台を走り回る。これがバッカスの登場なのだが、その後ハーフパイプ上に現れるバッカスとは明らかに体型が違うように見える。そういえば、ツェルビネッタ役の歌手は、ナタリー・デセイをさらに寸詰まりにしたような体型だった。最後の方のバッカスとアリアドネの二重唱はややしつこいと思う。
 演出は非常に整理されていてわかりやすい。オーケストラの演奏は聞きとりにくいが、声はまっすぐに舞台から伝わってくる。実に質の高い舞台だった。
 日曜日の夜で、レストランも終わっているので悲しいことにバーガーキングで晩飯を済ます。しくしく

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これはあくまでも個人的な備忘のための旅行記であり、ここに書かれている情報を利用したためにどのような不都合があったとしても、当方は一切関知しませんので悪しからず。