ジャーナリスト 東玲治氏を悼む
 



 

「事実を知りたい」という強い動機を持つ

東玲治

岡本呻也

 それと、今日お話しする内容は、東さんが書かれた、二冊の『記者物語』『続記者物語』の中から多く引用しています。この本は本当に読む値打ちのある本だと思います。『記者物語』というシンプルなタイトルは、「記者というのは本来こうあるべきだ」という東さんの矜持の込められたものだと思います。この本は、ジャーナリズムを志す人間は、読まなければならない本だと思います。

 僕は、東さんがジャーナリストとしてひじょうに優れている点を6つあげたいと思います。

・「事実を知りたい」という強い動機を持つ
・権力を恐れない
・正しい価値判断力を持つ
・メディアのあり方を正しく理解し実践する
・真の優しさを持つ
・強い信念と美学を持つ


 これらの一つひとつについて、『記者物語』の中から引用しながら、これからお話しをしたいと思います。


・「事実を知りたい」という強い動機を持つ

 ジャーナリスト特有の好奇心と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、東さんはこう書いています。
 今起きている事実、事件の全体像をくっきり浮かびあがらせる事実を知りたい。
 記者は誰の目にも明らかな事実を示せばよいことになっている。

 ジャーナリストは、とにかく事実をつかんできて、紙面に載せればよいということですね。

 東さんのこの「あくまでも真実に迫る」という強い姿勢が輝いたのが、昭和49年の甲山事件のときの大スクープです。甲山事件というのは、新聞やテレビの社会部に入ろうという人間であれば知らない者はいないくらい有名な事件なんです。彼はそのとき産経新聞の神戸支局にいました。
 この事件は、西宮市内の施設で園児がふたり殺されたというものですが、冤罪として警察に捕まっていた女性がシロであるということを、東さんが初めてスクープしたんです(産経本社は朝刊に載せる勇気がなくて、夕刊社会面扱いにしてしまったのですが)。そしてその翌日、全紙が東さんの後に続きました。全紙が「シロである」と報道したわけです。
 すごいスクープです。ところがですねえ、警察はそのシロを、クロと言いくるめて、この無実の女性の無罪が確定するまで25年間引きずり回したんです。この女性は人生をふいにすることになってしまいました。このとき東さんは、警察のそうした体質に出会っているわけです。

次に進む

 

 

ジャーナリスト 東玲治氏を悼む目次 に戻る


日本のカイシャ、いかがなものか! copyright(c) by Shinya Okamoto, all rights reserved.