日本国憲法は和訳に失敗している
桜内文城 氏
桜内 それはなぜかというと、公務員には「公正中立」に行政を執行することが求められているから身分保障されているわけです。
しかしながら実際は、役所がやっているのは「いかにして自分のポストを守るか」ということに偏っているような気がします。
運営者 それは私益の追求であって、ぜんぜん公正中立ではない。バイアスがかかっていますよね。
特殊法人改革の時だって、政府系金融機関の「統合」すら嫌なんですよね、「縮小」どころか。
桜内 いえ、統合が一番嫌なんじゃないですか。天下りのポストが減りますからね。
運営者 ハー、なるほど。考えも及びませんでした。
しかしそれは、仕事をする上でのインセンティブのつけ方が全くまちがっていますよね。役人が法律上求められている役割をきちんと果たせないのは、インセンティブシステムが間違っているからなのでしょうか。

桜内 法律では、自分の「仕事とは何か」というミッション・ステイトメントが不明確なんですよ。特に「どの方向に働くべきか」ということは書いてない。
日本国憲法が和訳に失敗しているという側面もあります。
運営者 どういうことですか。
桜内 憲法65条には「行政権は内閣に属する」と書いてありますが、「行政権」の元の英語は、「エグゼクティブ・パワー」なんです。
それから「行政各部」、つまり役人とか役所のことを、「アドミニストレイティブ・ブランチ」と書いてあります。日本国憲法の和文の中では、この行政権と行政各部というふうに一応書き分けてはいるものの、その違いは不分明になっている。
エグゼクティブ・パワーを持っているのは、本当は閣僚のはずなんです。「ブランチである行政各部は中立にエグゼクティブ・パワーから言われたことを実行しなさい」ということなのですが、実際の行政では行政権と行政各部が、ごちゃごちゃになっているわけです。
ミッション・ステイトメントという観点から行くと、閣僚はまず、議会に対して責任を持っています。「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」(66条3)と書いてありますから、それはそれでよいのですが、では行政各部のほうは実際はどうしているかというと、大臣の責任の下で勝手に行動しちゃってるわけです。
その時に、「行政権」と「行政各部」の区分はどうなっているのかと考えてみると、非常にあいまいなのです。
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