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「人間力」をめぐる冒険

「単なる商取引」ではない関係







インタビュアー 飯坂彰啓
答える人    岡本呻也

岡本 だから言ってやったんです。お客さんは、自分がお客さんであるということをよく知ってるんですよ。お金持ちのお客さんであれば、自分がお金持ちであるということを一番知っているのは本人なんです。だから、バカみたいに内装に金をかけなくても、スタッフが「私はあなたがお金持ちで、特別な人であることを知っています」ということをそれとなく態度で伝えてあげればいいだけのことなんですよ。内装より、気持ちを伝えるほうが大切なんです。
 お客さんは、自分がお客さんであることをよく知っています。だからお客さんは、お店に行ったらお店のスタッフができること以外のことは頼まないものなんですよ。そうじゃないのは、クレーマーです(笑)。
 だから富裕層だからといって、お客さんのあらゆる要望に対処しなければならないと脅迫的に考える必要はないし、内装をひたすら豪華にして、「あなた様はお金持ちでございます」と強調したとしても、あまり効果がないことなんですよ。
 アメリカのプライベートバンクでは、富裕層を相手にするのに、店舗の内装を豪華にしたりして、「レッドカーペットバンキング」と言われてバカにされていますね。
 そうじゃないんです。お客さんはアホじゃないんですから、彼らが求めているのは、その場でヨイショしてもらうことではなくて、自分のニーズを満たす商品を探すお手伝いをしてくれることなんだから、それ以外のことに関しては、お客さんの方が営業の人に合わせてくれるものなんですよ。そこのところがわかっていない人が多いですよね。
  このへんは、スイスのプライベートバンカーに教わりました。「プライベート・バンク」と聞くと日本人は舞い上がってしまって「なんでもやってもらえるのか?」と思うけど、あっちじゃあそんなに思っている人はいないと。ホテルの手配をしたり、オペラのチケットを取ったりするのも、「友人として対応できる常識的な範囲のこと」という、お互い自然な感じですよね。
 お客さんは営業マンが信頼に足る人間かどうか試しているわけです。それで営業マンがお客さんの目にかなった場合は、本筋と関係ないところはお客さんの方が営業マンに合わせてくれるんですよ。じゃないと、話はいつまでたっても先に進まないんです。お客さんもそんなにヒマなわけじゃあないし。だから心が通じ合っている状態というのは、つまるところ相互的、あるいは相補的な関係になっているはずなんです。

飯坂 なるほど。じゃあ、心が通じ合ってるケースというのは?

岡本 んー例えばですね、ある人がいつもコンビニに行ってたばこを買っていたと。ある日コンビニに行ってレジ前に立つと、おばちゃんが何も言わないのに、いつものたばこを出してくれたと。
 このケースは、お互いの心が通じ合っていますでしょうかね?

飯坂 そうなんじゃないですかね、そこで商取引が成り立っているわけだし。

岡本 いえいえ、それは外見的な話であって、商取引が成り立っているという事実だけを見るのでは、「お客さんの気持ちなんかは考えていられませんよ」と言ってる営業マンのレベルと、そんなに変わらないですよ。
 僕は、「お客さんとの心の通じ合い」という場合には、単に商売を成り立たせる以上の付加的なものがなければならないと思うんです。お互いが自分たちの関係を、単なる商取引でやっていることではないと考えている状態を以てして、「心が通じ合っている」ということなのではないかと思うんですね。
 そこでは、関係のレベルが1段階上がっているのではないでしょうか。

飯坂 だけど、そのおばちゃんが、その人を「嫌な奴だな」と思っていたとしても、やっぱりタバコを出すんじゃないですかね。

岡本 そーなんですけど、いいんですよ、相手を他の見ず知らずのお客さんと同じように考えずに、ちゃんと個体認識して、「この人が望んでいるものはコレだ」とわかってるわけですから。お互いを個人として認めて尊重してあげるという心の状態になっていて、はじめて心が通じ合ってるといえるわけです。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

「人間力」エピソード101本

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