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「人間力」をめぐる冒険

「てんびんの詩」が教えるもの







インタビュアー 飯坂彰啓
答える人    岡本呻也

岡本 そう考えると、ほんとうにこの「相手と心が通じ合う」状態に到達できるかどうかが、営業マンとして大成するかどうかの最大の関門だと思いますよ。
 それがわかって、やっとほんとのビジネスができるようになるんですよ。

飯坂 ほんとだよね。まず土俵に上がって来いよと。
 しかしまあ、日本には近江商人とか、松阪商人とか、伝統のある商人道があるんだから、その世界の中で「心の通じ合い」を教えているモノがあるんじゃないの?

岡本 ええ、近江商人の世界で、「てんびんの詩」というのがあって、教材として盛んに使われています。
 昭和初期の話なんですけどね、小学校を卒業した近江商人の息子が、親から「跡継ぎになりたければ、鍋蓋を売れ」と命じられます。だけどふつう、そんなもの売れませんよねぇ。3カ月いろいろやったけど、どうやっても売れないので、本人が腐っていると、農家の軒先に汚れた鍋があるのを見つけるんです。それでそれを無心に洗うんですね。
 そうするとその農家の奥さんに見つかって、「何をしているのか」と問われたので、「鍋蓋を売っているけど、全然売れない。売る気持ちができてなかった」と本心から話すんですね。それが相手に通じて初めて鍋蓋が売れるという話です。
 この話をビデオで見せて、いろんなことを考えさせるんですよ。なんか禅の公案みたいな話ですよね。

飯坂 だけどそのケースは、農家の奥さんに人間力があったから通じたわけで、ふつうは「泥棒か」と疑われて終わりでしょう。

岡本 そのとおりです。まあ、その奥さんの子供と同い年で同情されたという設定にもなっているのですが。
 この話の一般的な解釈としては、「お客さんの立場に立って、お客さんのためになることをしたら物は売れるんだ」とか、「商人は人柄が大切だ」ということになりがちです。ぼくもこの話を知って20年近くになりますが、いまのところぼくの解釈は、「お客さんと心が通じ合えば、売れる物は売れるんだ」というところに落ちついてますね。

飯坂 あと、「自分は鍋蓋を売りたいんだ」とちゃんと言わなきゃいけないということ。

岡本 言わないとこちらの意思は伝わりませんからね。鍋を洗ってくれたタダの親切な少年になってしまう。
 なぜならば、自分と相手の心は繋がっていないからですよ。自分と他人は別なんです。それがわかっていない人がどれだけ多いことか!。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

「人間力」エピソード101本

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