HOME > オープンソース型ビジネスマン生きる道 > “オープンソース型ビジネスマン”の生きる道 8-1

linuxtitle.jpg

第8回 もうけられなきゃビジネスじゃない

○徳川家康は「怒りは敵と思え」と自分に言っていたそうです。会議の席で、怒鳴り散らす上司(特に幹部役員レベルの方)に従おうとは思えませんでした。小さなミーティングで、的確な説明と明確な指示で皆を動かしてしまう平社員の先輩の方を尊敬してしまいます。「怒鳴る」という「恐怖」で人を動かしても、必ずどこかで行き詰まる。私は、1つのプロジェクトが終わった時、「もう一度、一緒に仕事がしたい」と社内・外の人達に思ってもらえたら成功だと考えています。「今」ではなく「未来」につながっていく仕事にしたい。そのために、コミュニケーションは不可欠な能力だと感じます。(20代女性 製造業、技術)

 恐れ入りました。まったくその通りですね。去年ダライ・ラマの講演を聴きに行ったら、猊下も「怒っている人の話を聞く人はいない」とおっしゃっていました。私も耳が痛かったです(汗)。
 さて、前回までは、新しい環境下においてビジネスマンに必要とされる能力のうち、コミュニケーション能力とネットワーク能力についてお話ししてきました。
 今回と次回は、ビジネスマインドについて取り上げたいと思います。ここで主張したいことは単純で、ビジネスマンはもうけなければビジネスマンではありません。そのために肝心なのはお客さんを大切にすることだということです。
 そんなの当たり前ですよね。でも、そんな当たり前のことができていないのはけしからんことです、プンプン! あっ、しまった、怒らない怒らない……。

○幹部社員や役員を保護せんがため、様々な関連企業(子会社)をつくりました。その結果、各子会社がばらばらに動き、それぞれの子会社で同じようなソフトを作成したり、同じようなハードを作ったりしています。つまり会社のリソースの無駄遣いをしています。統一をしようともそれぞれの関連企業の役員、事業部長クラスの思惑が働き本社からの働きかけにも一切聞く耳もたない状況です。
 本社はもともとコンピュータ会社であるため、そこから来る役員、事業部長などはとにかく会社経営を無視してものをつくりたがる風土があります。 (年齢20代男性 IT、事業企画)

 会社経営を無視して自分のやりたいことをやりたがる。「仲間とうまくやっていく」ことしか考えていない。その場をうまくごまかして、現状を維持することばかり考えている……。これらはビジネスとしては無意味です。そんなことでは状況はますます悪化するばかりです。
 ではなぜこんな行動形態が放置されているのか考えてみましょう。

●今回の「化石体質のおじさんたちの呼称」
「プールサイダー」  (「20代男性 ISP、コンサルティングチーム」さんの作品)

■登場人物
○佐々木マネージャー
35歳。脂の乗りきったバリバリ中堅社員。経営幹部の無能に悩まされている。
○マリちゃん
若手女子社員24歳。帰国子女。元気で過激なやる気ウーマン。
○亀田部長
登場しないけどさんざん陰口をたたかれる損な役回り。

カイシャでやっているのは「仕事」でなく「生活」である

 佐々木マネージャー、4月から国立大学が独立行政法人になるので、新しいニーズが発生するって話知ってますか?

 ああ、あの話は君の部署が担当だろ、いいチャンスだから頑張れよ。いままでウチの会社みたいな業態は国立大学に入ってなかったんだから。それが独法化されると大学によって個別のニーズができるから、大チャンスなんだよなー。

 ところが、亀田部長はぜんぜん動こうとしないんです。

 なんだってー!?

 だってこの話は急がないと、「よーい、ドン」だから、ライバル企業のほうが先に市場を押さえてしまうかもしれないんですよ。それなのに亀田部長は、「いいんだよ、ゆっくりやれば」と、ぜんぜんやる気がないんです。わたしが一人で走り回ってるんですけど。そのくせ文句ばかり言うし。
 部長は体裁のために仕事してる振りをしているだけで、本気で勝つつもりがないとしか思えません。困っちゃうな〜。

 うーむ、亀田部長はプールサイダーだからねえ。

 なんですか、それ?

 「実際に努力して必死にプールで泳いでいる者を横目に、プールサイドからあーだこーだと下らない評論ばかりする人たち」のことだよ。

 はぁ……。

 言っとくけど、カイシャ共同体に住んでいる人たちは、「ビジネスの目的はもうけることだ」とは本気で考えてないからね。

 それじゃ、そのプールサイダーのおじさんたちがカイシャに来てやっているのは何なんですか? 仕事じゃないんですか?

 仕事じゃなくて、「生活」なんだよ。カイシャはおじさんたちの「生活の場」。家よりも落ち着くし、毎日小さないざこざが起きるので見ていて飽きないし、家庭のいざこざと違って基本的には人ごとだしね。そしてなんとなく意味があるのかないのかよく分からない仕事をドタバタと忙しくやっているうちに四季が巡ってきて、「ああ、今年も暮れだなあ。今年の憂さは忘年会でパーッと忘れて……」とホントに忘れてしまって、毎年なんの進歩もない繰り返し、それもまた「いとをかし」とね。

 ふざけないでくださいよーっ! ぜんぜんおかしくありませんっ!

 彼らは「共同体が続く限りは、永久に給料をもらえる」と安心してるから。そっちが優先で、利益追求は後回しなんだ。
 「どんなインチキ赤字企業でも、カイシャを潰してはならない」とみんなの心の中では思っている理由も、「共同体は拠り所」という意識にあるんだろう。カイシャはおじさんたちの「魂の拠り所」だね。

 不良企業に、融資でも出資でも、おカネを逐次投入して支えるのは資源の無駄遣いでしかなくて、そこに合理的な理由はない。ただ「共同体を潰すとよくないことが起こるのではないか、自分の属する共同体も巻き添えになるのではないか」という迷信に近い畏怖がみんなの気持ちの中にあるわけだ。
 これは日本のカイシャの根本問題だろうな。コストをかけて売り上げをあげる方向にはみんな積極的に動くんだけれど、コストを下げて利益率を上げようという方向の動きは鈍い。コストを下げると、自分が痛いからね。むしろ「肥大化してきた共同体をさらに肥大化させるのが、自分たちの役目だ」と思っていたわけだから。

 だからリストラにしても、経営資源の組み替えにしても、組織内の抵抗は大きいかったんだよ。ところが、それが限界まで来て経費削減をいったんやり始めちゃうと、今度は坂道を転げ落ちるみたいに歯止めなくやっちゃうんだよなぁ。

 なんか、行革に抵抗している役人みたいですね。商売人に役人根性があったら、ビジネス成り立ちませんよ。
 しかもおかしいのは、司令塔であるはずの本社が、一番改革意識が薄いということですよ。
 営業現場の人たちや工場の人たちは、本社からのコスト削減要求を受けてぎりぎりの節約をやってますよね。この前取引先の工場を見学に行って、「ここまでやってるんだー」って驚いちゃいました。「昼休みにはオフィスの蛍光灯を消す」「ビス1本で何銭」というコストダウンをやっているし、無駄なことはぜんぜんしてないように思えるんですけど。あれにくらべたら本社って、なにかにつけて優雅ですよね。

 いやーまったく、そのとおりだよ。ところが、マーケットから一番遠いのは戦略を決めている本社であって、問題は本社にあるんだよね。魚は頭から腐るのさ。
 しかも中央集権体制だと、本社に資源配分権がある。そしてここには、現場からの声や現場からのアイデアが届いてない。それよりまずいのは、「そんな声は聞く必要がない」と本社が思っていることだろうな。むかし、選挙結果を評して「天の声にも変な声がある」と言った政治家がいたが、そういう傲慢さがあるね。
 これじゃ、情報化投資をいくらやっても無意味だな。

8_1.gif

 どうして亀田部長って、現場の声を完全に無視できるのかなって、不思議に思うことが多いですよ。

 本社は共同体の中心に近いので、バリアで何重にも守られている。ピラミッド組織の頂点だから「自分は偉い」と思っているし、それはなぜか「自分は常に正しい」という意識に転換するんだ。それだけでもすごい勘違いだが、それゆえに「変化しなければならない」とも考えなくなってしまうんだよ。しかしそれでは環境変化を感じずにすむから、かなりヤバイ。
 ビジネスマンは「まず利益、そのためにはよい仕事、法令遵守」と心に刻むべきなんだけど、まあ、こいつら石頭のプールサイダーたちには何を言ってもムダだなぁ……。ふぅ。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

sign.jpg

人間力とは、「大人になること」と見つけたり