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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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ゴルフ場
心からのサービスが「客の心」の琴線に触れる

千葉夷隅ゴルフクラブ


 東京から車でスタートしてたっぷり二時間以上、高速道路を降りてから房総半島の山道をいいかげんうんざりするほど走った頃、房総半島中央部からやや太平洋よりの山の中に、スタッフのサービスレベルでは他を寄せつけないと評判で、近隣のゴルフ場に比べると頭抜けて高いプレー料金を維持しているゴルフ場、千葉夷隅ゴルフクラブがあります。
 二七ホール、四七万坪。年間売り上高一二億円。社員一六六名。日本交通の子会社です。
 車寄せに入ると、制服のキャディさん五人が頭を揃えてお出迎えです。お辞儀の角度が揃ってきれいなラインを描いています。この挨拶と澄んだ空気で、どんな人も「ゴルフ場に来たなあ」という解放感を感じるでしょう。
 クラブハウス自体は一九七九年のオープン当初から多少建て増しされた程度の古いものですし、いったいこのゴルフ場の何がそこまでゴルファーの心をつかんで離さないのか、そしてまた「日本経営品質賞受賞」(一九九七年)という客観的評価に値しているのかは定かではありません。
 オープンの時からこのゴルフ場を運営しているK総支配人は、以下のようにこのゴルフ場が提供するサービスの特徴をまとめています。

 お客様がゴルフ場を選ぶ基準は、立地とサービス内容です。
 サービス内容にはマニュアルに書くことができる「機能的サービス」と、個々のニーズに対応するための「情緒的サービス」があります。
 これらを提供するためにはきちんとした社員教育をしなければなりません。そして、従業員が「やらされている」のでなく自ら率先垂範する姿勢を持つことが大切です。また、フロントがレストランや売店も担当することができるクロスファンクショナル(横断的)なサービスが必要です。
 お客様の満足は絶えず変化するので、常にお客様の声を吸い上げて、われわれの方のプロセスを改善する必要があります。
 そのためにアンケートや情報カードによってお客様の声を吸い上げ、小集団活動によってプロセスを改善していきます。ベンチマーキングも行いますし、サプライヤーにも納入基準書を渡して期日管理への協力を要請するなどの努力を払っています。
 お客様アンケートで「優良可」を付けていただき、どのキャディでも均質なサービスができるよう、また最良のコンディションを保つコース管理ができるようにします。「優」が一番多かったキャディを「キャディ・オブ・ザ・イヤー」として表彰しています。
 フロントにはお客様の名前を覚えるという役割がありますし、レストランでは豊富なメニューを提供して、お客様個人の好みの味や盛り付けを反映するようにしています。また、同じテーブルの料理は同時にお持ちするようにしています。

 支配人のOさんにもう少しかみ砕いてご説明いただき、実際にキャディさんやフロント係がどのようにそれを実践しているかインタビューしました。

支配人 
Oさん

 支配人のOさんは、日本交通に入社以来リゾートや不動産関係の仕事をした後、七九年オープンの時にK総支配人と一緒にこちらに来られたそうです。五三歳。

*ボーイスカウト精神を取り入れた「全員参加の組織づくり」

 今は道がかなり良くなっていますが、二二年前のオープン当初は東京からは軽く車で二時間半かかるという場所で、この先には東急系列のリゾートゴルフ場があるくらいのもの。東京からの日帰りゴルフの限界点でした。
 ですから他と同じサービスやメンテナンスをやっていては、お客様にヨソのゴルフ場にいかれてしまいます。お客様が「ああ、来てよかった」と思うところがなければ、という危機感がありました。
 そこで、「サービスやメンテナンスをみんなが同じように細かくできるよう標準化し、マニュアル化する必要がある」と考えました。当時はキャディのマニュアルなどもなくて、染谷プロ(故人)に教わって二年間かけて独自マニュアルをつくっていきました。

 マニュアルができた後は、それを自分たちで改善して変えられるように、小集団活動を導入しました。まず最初に幹部が導入し、テーマを決めてシナリオをつくり自分たちで解決していくという方法を身につけたのです(つくったマニュアルは四七種類)。それをキャディの班長クラスに移植し、さらに社員全員に下ろしていって、「やらされている」という感覚ではなく、「自分でやっていく」という意識を全員に根づかせることができました。
 主体的なサービスに取り組むことによって「お客様も喜ぶし、ある程度自分たちも楽になる」のが社員にわかり定着するのに一〇年はかかったと思います。
 今年で一六回目になる小集団活動の発表大会は一月末にあります。六月~一一月を活動期間として、そこで出てきたものを標準化して発表。一月~三月にかけて反省や見直し、課題期間としています。また一月~二月はキャディ教育の期間にもなっています。サークルは、現在一三あり、各々リーダーがいるほか、幹部が世話人として方向づけのために入っています。
 これが成功した理由は、改善への達成感とチームワーク、それとお客様から「これは便利だ」「これはいい」という声が返ってくる、これらが積み上がってきた結果だと思います。それによって継続していけるわけです。

 小集団活動で出てきたものが、いろいろなところで生かされています。
 例えば、キャディのカートには「預かり袋」という袋が四つついています。これは、各々のプレイヤーのヘッドカバーやカッパなどを入れておくもので、キャディが考案したものです。同じように独自の救急セットも、「何が必要か」をキャディが考案してつくりました。足がつった時にゴムバンドを当てれば治るとか、ショットの時にズボンのおしりが切れることがあり裁縫道具も入れるとか、キャディが「こういうものがあったらいいな」と思ったものを詰め込んでいるわけです。
 こうしたものを用意するためには出費がかかります。しかしそこでわれわれが、「これはだめだ、あれはだめだ」と言ってしまったら、そこで社員のやる気はなくなり、小集団活動は止まってしまいます。だから「いいものはどんどんやる」という姿勢を貫く必要があるのです。

 K総支配人は大学時代にボーイスカウトやボランティアをやっていた人です。彼はそこから班長制度を取り入れていると思いますし、全員がうまく動く組織づくりのベースはそこにあるのではないかと思います。
 総支配人は、「ここに来るお客様は、千葉夷隅という家庭に来るお客様なんだ。われわれは、この家庭に一日で二〇〇人のお客様を迎えているのだから、キャディはキャディの仕事だけををすればいいというわけではなくて、全員が仕事をまたいでお客様に対応しなければならない。これは私の仕事とは違うと言うのではなくて、だれがどの仕事でもできるクロスファンクショナルな仕事ができなければならない」と強調しています。
 ですから、フロントの従業員もレストランやコース売店の仕事ができるように、コース管理の人もキャディができるようにしています。このようにして全員が一つになって、お客様をもてなすことができるわけです。
 お客様は、土曜日曜はだいたい二七〇名。六九組をお迎えしています。スタートは午前八時から一〇時三四分まで七分間隔で行います。


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