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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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高級ホテル
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ザ・リッツ・カールトン大阪


*お客様のお好みと目的を探るテクニック

 家族連れの場合気をつけなければならないのは、お年寄りと子供さんです。
 お子さんは大人が話に夢中になると、すぐに飽きて歩き回ってしまうので、なるべく話すようにしています。
 子供用マットに書いてあるキャラクターなどが話の材料になります。あまり子供扱いされたくない子も多いので注意します。
 お年寄りの料理については、固いものや高血圧に悪いもの、お嫌いなものなどに注意しなければなりません。
 「お嫌いなものはないですか」という言葉がキーワードになります。そうすると「糖尿病だから」とか、「コレステロール値が高いから」などとおっしゃっていただけますから、それに合わせてメニューの一部を変え、料理をつくってもらうこともあります。

 記念日でいらっしゃったお客様も見極める必要があります。
 たとえば若いカップルで、こういったお店に慣れていない人はちょっと立ち居振る舞いに違和感があります。そういうちょっと緊張感のあるカップルの場合は、彼女の誕生日であるとか、何かスペシャルの日であるケースが少なくありません。そうするとなんとかしたくなるので、聞き出し作戦を始めます。
 記念日だとわかれば、メッセージカードを書くことが多いです。例えば会話に聞き耳を立てていて、奥様の方がプール好きで、当ホテルのプールが気に入って、ここで食事をされている場合などは、プールについて一言言い添えるようなカードをデザートの時の下の受け皿に置いて、デザートを食べ終わった後に見えるようにする演出を工夫します。

 毎年来ている方で「去年は中華レストランの方に行ったんだよ」などとおっしゃる方には、「では来年はすしや天ぷらなど違うコーナーの方にお越しください」などと書き添えます。
 記念日であることがわかっているので、メッセージカードを書こうとしながら、会話の中から材料をうまく拾い出せなくて、お帰りに間に合わなかった場合など、悔しい思いをすることもあります。
 カップルの場合、会話の中に入ってこられたくない人もいます。そういうときには、「お酒は飲まれますか」とか、「お嫌いなものはないですか」と聞く合間に、「二人の会話の中にちょっと入れるかな、それともぜんぜんだめかな」という頃合いをはかります。
 これらのお尋ねをきっかけにして、話の切り口を見つけ、お客様のお好みを見つけていくわけです。

*本当の満足は支払い後の「ありがとう」にこめられる

 ですからまず「どうして花筐に来られているのかな」を前提として捉えて、次に「では何を食べたいと思われているのかなぁ」について考えます。
 ここを「特別な場所だ」と思っているお客様もいらっしゃれば、「第二のキッチンだ」と思っている方もあるわけで、ニーズはまさにさまざまです。
 そこのニーズをある程度絞り込むまでは、私の方も不安なのですが、しかし興味津々でニーズを拾おうとします。夕食の場合はコース料理が多いのですが、毎晩接待や接客で胃が疲れていて「もうコースは食べ飽きた、出る前から次が何かわかっちゃうからね」とおっしゃる方もいらっしゃいます。逆に「今日はじっくり食べたい」とか、いろいろなパターンがあります。
 そういったお客様のご希望を、「どんな風に食べたいですか」とイメージを聞き出して、「お任せいただけますか」とこちらの方で組み立ててお出しして、お客様の食べたかったもののイメージと、私の方での組み立てがカチンと合う瞬間が一番の喜びです。食べているお客様の反応を見ている間は、ドキドキしますけどね。
 例えば、「お腹はすいてない、さっき披露宴で食べてきたところなんだ。でも夜は長いし、ちょっと入れておきたいしね」。
 「では何が食べたいですか」。「うどんかな。あとは野菜か何かさっぱりしたものを、ほんのちょっとだけでいいんだけどね」というふうなイメージを伺って、では最初に貝とワカメの酢の物、次にタケノコとアスパラガスの春野菜の煮物を小ぶりにお出しし、メインは素うどん、奥さんの方にすしをちょっとを出ししまして、さくらんぼをデザートにとっていただきました。
 それで「いかがですかぁ」とお尋ねして、「ちょうどよかった」と、お客様の肩が落ちてホッとした表情をされたのを見て、「よかった、満足していただけた」と思います。しかし、ここは本当の満足ではありません。本当の満足は値段を確認していただいて、支払いを済ませた後、「ありがとう」と言っていただけたときなんです。その時には「ハー、よかった」と心から思います。
 値段は料理長がつけますが、自分がイメージした値段とあまりにもかけ離れている場合は協議させていただきます。

 そのように、お任せしていただけるお客様が増えると嬉しいですね。ですから、料理に関しては可能な限り「イエス」と言うことにしています。
 例えば、「今日の昼飯はトンカツが食べたい」などというお客様がいらっしゃいます。とんかつはメニューにないわけですが、「豚肉が今日の食材にあったかな」と考えます。「卵はある、パン粉はフランス料理から借りてくればよい、問題は豚肉だな」。
 料理長のところに相談に行くと、「うーん、豚肉はここにはないけれどフレンチ・レストランから借りられるかもしれないね」との答えです。ランチタイムなので外に買いに行く時間はありません。聞きに行ってもらって、たまたま材料があったので「時間がかかりますがそれでよろしいですか」とお客様に確認をとって、メニューにないトンカツができあがりました。この時もお客様に「ありがとう」と言っていただけました。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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