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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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高級ホテル
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ザ・リッツ・カールトン大阪


レストラン「花筐」
アシスタント・マネージャー
Cさん

 日本料理店「花筐」で接客にあたるCさんは、和服が似合う女性です。でも彼女の目だけは落ち着かずよく動いて、今話している相手が一体何を考えているのかをちゃんと探り出そうとする職業的な癖がある様子です。

*「ホスピタリティ」に対する明確な回答を求めて

 私は一〇年間東京のホテルの飲食部門で働きまして、その後料亭「青柳」(東京)に二年間。九八年にリッツ・カールトンに移りました。
 東京のホテルでは、お客様のご希望に対して、実際はできることにも「ノー、できません」とお答えする事が多くて「おかしいなあ」という疑問を感じ続けていました。
 例えば隣合っているレストランで、その店のソファーが好きで座っているお客様が、「でも隣の店の料理が食べたい」とリクエストされた時、できないことではないのに、上司に「それはだめ」と拒否されてご要望に応えることができなかったことがありました。味付けやディスプレーについても、お客様のニーズを知っているのに、「これはうちにはできない」と上司に言われたり、変えるためには稟議書にいくつも判子が必要だったりして、不満を感じていました。

 青柳では鳴門の鯛が有名で、お刺身の盛り合わせを持っていくときに、新鮮なので運んでいる途中で身がぐプルプル揺れるんです。「自分でも食べたいなあ」という料理でしたし、それをお客様の前にお出しするときには、「ほんとにおいしいですよ」と言える嬉しさを感じていました。
 このホテルに移ろうと思ったのは、書店でたまたま買った『ホスピタリティ サービスの原点』(商業界)という本の中で、従業員を採用するときに「リッツ・カールトンの理念に沿って仕事ができる潜在的な力を持っているか」を判断するための「クオリティ・セレクション・プロセス」のテストのことが書いてあったんです。
 私はそれまでの経験で、自分が本当にこの仕事に向いているのか不安だったので、「もしこのテストに通ったら、私の適性が証明できる」と思って受けてみたんです。とにかく一〇年間仕事をしている間、私の中に「ホスピタリティ」に対する明確な答えがなかったんです。「自分は本当にいい仕事をしていたんだろうか……」
 入社が決まった後二日間、クレドについて勉強するオリエンテーションがありました。お客様優先という価値観が明確に出ていて、「まあ、なんていいホテルだろう。本当にそういうサービスをしていいの」という気持ちでいっぱいでした。ただ、「そういうことを建前としては言っているけれど本当はやはり決め事を守らなければならないのではないか」という疑いの目も半分は持ちましたが。
 私自身、今まで「お客様のためにこうしよう」と思ってやって、かえって失敗するようなこともありました。しかし、ここまでしっかりしたクレドがあるのであれば、トレーニングを積んでいけば自分が「こうしよう」と思ったことと、お客様の満足との間のギャップを埋めていくことができるはずだという希望も期待も感じたんです。

*鈍感ではとてもやっていけない仕事

 私の仕事のゴールは、お店にいらっしゃったお客様が代金を払って帰られるときにしっかりご満足いただけるようにすることです。
 お仕事は毎日変わります。花筐にいらっしゃった方は、まずご案内係が入り口でお出迎えします。ここには京風会席料理をご提供するお部屋と、鉄板焼きのカウンター、すしのカウンター、天ぷらのカウンター、個室があります。
 お席にご案内した後、ウエイトレスに引き継いで、料理をを伺ってお出しします。
 インチャージをやっているときは、そうした全体の流れを見ながら、料理が遅れていたり、ウエイトレスが見落としている部分を補ったり、お客様のフォローをしたりします。キャッシャーをやる場合は、注文をコンピューター入力し、会計伝票を作成し、代金を受け取り、予約をチェックをします。
 お会計が終わった後は、またご案内係がエレベーターホールまでお見送りします。

 お客様がいらっしゃった時に、まず「そのお客様が何を求めているのか」を考えてご案内しなければなりません。
 接待の場合は、「どちらがゲストでどちらがホストか」を見極めて、次に「ホストはゲストにどのようなもてなしをしたいと考えているか」を見てとる必要があります。
 花筐がゲストのお気に入りで、「なるべくいいものを思いっきり食べさせたい」とホストが考えている場合は、すし・鉄板焼き・天ぷらの目的別のカウンターに、お連れします。
 しかし「ちょっと食べながら大事な話をしたい」とホストが思っている場合は、カウンターでは三人以上の場合お話がしにくくなってしまうので、必ずテーブル席に案内しなければなりません。
 ホストによっては、個室でさえもお隣に聞こえないかどうか気にされる方もいらっしゃいます。ですから、テーブル席の場合はなおさら同じ業種の人が隣り合わせにならないように気を遣う必要があります。
 お話が大切なわけですから、ホストの人ができるだけ料理やお酒に気を使わなくて良いように、注文や料理を伺うタイミングが大切です。ですが最初の十数分間の状態を見ていると、ある程度見えてきます。

 ホストとウエートレスはできるだけ会話をする方がいいと思います。
 例えば「お時間は大丈夫ですか」と伺いますと、「いや、八時三〇分の、新幹線で帰るんだ」と教えてくれる場合もありますし、二次会をご用意するかどうかも伺わなければなりません。
 乾杯するときにビールの銘柄を気にするのは当然ですが、ゲストの方がお酒を飲まれないこともありますから、幹事さんがゲストのことを気にするのであればあるほど、ウエートレスと話をしなければならないわけです。

 ゲストとホストがもうすでに何度も会っておられる場合はよいのですが、あまり馴染んでおられないケースでは、こちらが先回りしてお好みを伺わないと、結果的に接待側の幹事さんがものすごく焦ることになってしまいます。
 ゲストがのんびりしている場合はいいのですが、気の短い方の時は、直接ゲストの人にお好みを聞くようにします。ゲストの方にお酒を勧めるにしても、幹事さんが「もう飲ませないで」と目や手ぶりでサインを送ってきますから、そういうところにも注意を払わなければなりません。鈍感ではとてもやっていけない仕事だと思います。

 基本的には、席が始まったらゲストの方に目配りをするようにしています。「ゲストにお酒を注いでほしい」とか、「上着を取ってあげてほしい」とか、幹事さんが思っていることはゲストを見ていればわかります。
 中には接待のうまい幹事さんもいらっしゃいます。非常に慣れていて、今の状況を把握して、常に少し先を読んで手配しています。ですから私たちを「ちょっとちょっと」と呼ばなくてもスムーズに事が進行して、車の手配から会計まで見事な流れで終わります。
 こういう人にお目にかかると、「なんて素晴らしいんだろう。私たちも見習わなきゃ」と思いますね。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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