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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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高級ホテル
顧客満足を実現するための最高のビジネスモデル

ザ・リッツ・カールトン大阪


*客の要望に関しては基本的に「ノー」は言わない

 カップルの方の場合は、誕生日や結婚記念日などが、少なくありません。そのような場合は、「日常を抜け出した優雅な雰囲気を楽しみたい」と思われているはずです。
 かりに女性の方の誕生日であれば、ホスト役である男性の方は「女性に満足していただきたい」と思っているはずですし、当ホテルをお選びいただき期待度も高いはずです。われわれはそれにお応えしなければなりません。
 そこでわれわれは「今日のご宿泊は何がメインだとお考えか」を考えます。食事を主にされようとしているのか、宿泊そのものを楽しまれようとしているのか、お客様のしぐさや表情、お持ち物の中にヒントがあるので、とにかく慎重に観察します。
 お荷物を持ったときにカチリと音がして、ある程度重いお荷物ですとワインが入っていることがわかります。夜はお部屋でワインで乾杯されるはずですから、「赤ですか、白ですか?」とストレートにお尋ねします。
 白であるならば、ワインクーラーに氷を入れてお持ちしますし、ワイングラスにこだわられる方もいらっしゃいますので、そのような場合はルームサービスやバーからワイングラスを借りてまいります。
 ケーキをお持ちの方は、ケーキ屋さんの包みですぐわかります。その時は、「何時ごろご利用ですか」とお尋ねして、ナイフやフォークを準備させていただきます。
 また、昼間にチェックインされる方の場合は、ホテルの方で冷蔵庫の中に入れているものが必要なければ、全部かたづけまして、お持ちになったものを冷蔵庫に入れるられるように片付けます。

 もうレストランをご予約されている方の場合は、ご案内の間にお二方とも指輪をしていらっしゃれば「ご結婚記念日ですか?」と伺えばお話が弾んで、「レストランも予約しています」とおっしゃっていただけますのでレストランへの行き方をご案内したり、一旦帰ってお客様のご予約をチェックして直接レストランへ行き、「あのお客様はお誕生日だとおっしゃってましたよ」と連絡しておくと、レストランの方で料理をお持ちするときに「お誕生日おめでとうございます」と一言言い添えてくれますから、お客様にさらにご満足していただけると思います。

 リッツ・カールトンではクレドにあるように、お客様のご要望に関しては基本的に「ノー」は言わないことになっています。個人の業務を離れても、本人がエンパワーメントされていますから、必ずできる限りの範囲でご要望にお応えするようにしています。
 お客様から依頼を受けた本人が二〇万円くらいまでのお金の範囲で、使えることになっています。
 例えばサンタクロースを信じているというお子さんに、「サンタの格好をしてプレゼントを渡してほしい」という親御さんのご希望がありまして、ベルパーソンがお部屋に案内した後にフロントのマネージャーが非常口の扉から入って、お子さんにプレゼントを渡して、また非常口から戻ってきたこともあります。
 これは、他の部署の人が助けてくれる信頼関係があって初めてできることです。ベルパーソンの業務を離れて、お客様の要望を満たそうとすると、それをやっている間はそこから離れることになってしまいます。だからそういうサービスは他のホテルではできませんし、「ここまでは私たちの仕事ではない」とお客様の要望に「ノー」を言ってしまうことになるのが普通です。

 それから、お一人で泊まりに来られる方の中には、本当にホテルが好きでいろんなホテルを泊まり歩いていらっしゃるというホテル通の方もいらっしゃいます。
 こうした方の目的は、過去に泊まられたホテルとの比較で、当ホテルが優れている点は何か、劣っている部分は何かというデータを集めて、ホテルを採点されることなのです。
 そしてご自身が非常にホテルにお詳しいという自負があるので、私たちにも非常に専門的な質問をされます。例えば「二〇個のベーシックがあるらしいですねぇ、見せて欲しいな」などとリクエストされます。いろいろお話しを伺うと、「この間ハワイのリッツ・カールトンに泊まって、こういうところがよかったよ」とか、悪かったよとお話をいただきますし、「今度はあそこに行くよ」などと伺うこともあります。
 そうすると、先方に「今度こういうお客様が行くみたいですよ」とお知らせしておきます。

*常にアンテナを三本立てている

 常に実践しているのは、ふだんの生活の中で自分が客になるシチュエーションがあるわけですが、例えばコンビニで物を買うときでも、レジの人の対応を自分がどう受け取るか、どう感じるかを観察することです。
 サービスマンである以上、客の側の立場になっておかないと、お客様の気持ちが分かりません。
 私自身小さな子供がいるのでわかるのですが、ベビーカーというのは大きくて重いし、旅行で持ってきておられる方はたいへんなんです。お子さん連れの方がチェックインをされますと、調乳ポットを持ちのことがあります。ミルクをミネラルウォーターで沸かす人が多いので、「ウエルカムドリンクの代わりにミネラルウオーターを差し上げますよ」と申し上げます。
 「食事はレストランでとります」という話を伺えれば、ベビーカーのまま席に着くことができるようにレストランの方に連絡をして、あらかじめ椅子を一つ除けておいてもらいます。
 そのように、「自分が今のこのお客様の立場であったら、ホテルに対して何を一番望むか」を、常に意識しています。そうしておかなければ、お客様が発しているサインを見過ごしてしまうことがあると思います。

 私自身は、人を楽しませることが昔から好きでした。笑うのが好きで、自分が笑えることで周りも楽しくなるし、生活がより楽しくなるという考え方なんです。
 ですから、お客様が喜んでもらえることが、わたし自身のを楽しみでもあるわけです。ある部分、接客をしている自分自身が非常に好きですね。お客様のニーズの先読みができて、それがお客様のお望みとピタッと合ったときが、すごくうれしい瞬間です。
 前勤めていたホテルでは、私が、「こうするべきだ」と思ってサービスをしたときに、上司から頭ごなしに「そんなことはしなくていい」と言われて、悔しくて泣きながら一晩ロビーに立ちつくしていたことがありました。ある意味、サービスは結果論なので、最後にお客様が満足していただければ成功だと思います。
 マニュアルには最低限のことが決められていると思うのですが、それに反することをやっても、お客様に満足してもらえるのであれば良いのではないかと当時から思っていました。サービスについては、マニュアルはあってなきがごとしだと思うのです。だからマニュアルを崩してでも、もっと柔軟な対応をするべきだと思っていたのですが、そこのホテルの上司はそういった考え方はしない人でした。

 ベルパーソンの仕事の範囲というのは定められてはいますが、当ホテルではその枠を取り払って、「お客様に言われたことはできる範囲でやりなさい」と従業員に教えています。
 ある晩、外国の方がスーツケースを転がしながらロビーにお越しになりました。「お泊まりですか」と聞くと、「ここは○○ホテルですか」とあるホテルの名前をいうので、「いえ違うホテルですが、どちらから来られました」と聞くと、大阪駅から歩いて来られたらしい。見るからに長旅の疲れで疲労困憊され、うんざりした表情です。
 そこで、荷物を運搬するための社用車を使ってご希望のホテルまでお連れして、フロントまでご案内して引き継ぎました。本当はナイトマネージャーの許可が必要だったのですが、その時外していたので無許可で行きましたら、後で「許可を得ないと、もし事故があったら保険が下りない」と怒られてしまいましたが。

 こうした自分の業務の範囲を超えたサービスというのは、部署間が協力し合った状態でなければ実現できません。
 従業員同士で物事を頼んだ時に、「ハイ」と快く言えなくて、なぜお客様に言われたことを快くできるでしょうか。そういう意味で、われわれは「従業員同士もゲストである」という考え方を持っており、お互い敬意を払いつつ仕事をしています。
 私はロビーに立っているときはアンテナを三本立てている感じを持っています。一本は常に正面を見ており。一本は反対側に向けており、もう一本はフロントに注意しています。それプラス、仲間の従業員たちにも常に気を配っています。ベルキャプテンからのサインを見逃すと、お客様をお待たせすることになってしまいますから。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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