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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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高級ホテル
顧客満足を実現するための最高のビジネスモデル

ザ・リッツ・カールトン大阪


*日本旅館の女将の「パーソナル・サービス」を目指す

 われわれは、お客様が何を求めておられるのかを常に探り続けています。
 年に四回外部調査機関に依頼して、「実際に泊まった時に何がよくて、何が悪かったか」を調査しています。
 日常業務の中では、総支配人向けのレターには必ずご返事申し上げるようにしています。ここには「何が嬉しかった」とか、「どういうことがよかった」というお客様の具体的なご希望が指摘されています。そうした情報はみんなに紹介して、「明日からこれをやろう」と情報共有しています。組織として情報を受けたら、それを、従業員に拡げていくわけです。
 フロントでチェックアウトするときに「何かお気付きの点はありませんか」とお尋ねして、ご返事は必ずレポートさせるようにしています。
 お客様が求めておられるニーズが分かったら、それを丹念に従業員に広げて、実現していくよう努力しているのです。
 従業員への権限移譲(エンパワーメント)ですが、問題が起きた時それに対処するための権限移譲は当然として、「このようにした方がお客様が喜んでいただけること」を実行するためにも権限を委譲しているわけです。
 ですから「お客様が何を求めているのか知る努力をしなさい」と従業員に伝えています。それを感じ取り、サービスを実行して喜んでいただけたら、またお越しいただけるはずです。
 例えば、レストランが朝七時にオープンするとして、開店前に「コーヒー一杯だけ飲んでから外出したい」と思っているお客様がドアの外に立っているとするなら、外から見てレストランが準備中なのはわかりますから無理な注文はしないわけです。
 それなら中にいる従業員が「ドアを開けよう」と考えて、どうぞと招き入れて、コーヒーをお出しするというようなことは自然なことだと思うのです。

 外国人のスタッフと話していると、「日本人のお客様は自分がやってほしいことを言ってくれない」という話が出てきます。お帰りの時には何も注文をされずに、帰ってから「あのホテルは」と文句を言われると。国籍にかかわらず、自分が不満に思ったことについて何も言わないお客様はいらっしゃいますけど。
 人によって望まれていることは違うわけです。たばこを吸う方も嫌いな方もいらっしゃいます。ですから個人個人の方に合わせて、最高のパーソナル・サービスをご提供しようというのがわれわれの目標です。

 そうした個人個人とのおつき合いというのが、関西弁で言う「くすぐり」につながります。
 スタッフは、ゲスト・プリファレンス・カードという小さなメモを持っていて、お客様から聞いた情報を書き取っています。お泊まりになったときに、「私はもっと高い部屋のほうがよかったな」とか、「今日はどの辺に飲みに行った」とか、「この眺めが気に入った」とか、「禁煙の部屋がいい」とか、その情報をゲスト・リレーションズの女性がコンピュータに入力してデータベースをつくっています。
 それをサービスに反映させて、「なぜここまで私のことを知っているのか」と驚いていただく、それがリッツ・ミステイク(神秘)です。
 これは、日本旅館における女将のサービスのようなものだと思うのです。
 旅館に着いたときに、「○○さんいらっしゃい」「料理はこれが好きでしたね、これはお嫌いでしたね」と個人個人のお客様に対応するサービス。阪神電鉄にリッツ・カールトンの理念について説明するときに、「ホテルのサービスの究極は、日本の旅館にあったんだ」と考えて、「日本の旅館の女将のようなサービスをするんですよ」と説明したのを思い出します。

*「おいしかった」よりも「楽しかった」という評価を

 客室については、三〇年前であれば、空調やシャワーなど、普通のご家庭にはないものもあり、それ自体がホテルのサービスになっていました。しかし今やホテルよりもいい部屋に住んでいる人がいるかもしれない時代です。そこでわれわれは、皆さんの家と違う空間処理、景観、ルームサービスなどを充実させなければなりません。
 意外にお客様のご関心が高くて大切なのは、「薄汚れていない」清潔感です。そこでメンテナンスが非常に大切になります。
 われわれは三カ月に一度「新品にする」という言い方をしますが、じゅうたんの染み抜きから家具のタッチアップまで、部屋を総点検し、開業当初と同じ状態に保つように心掛けています。われわれの部屋はごみ一つ落ちていません。このあたりがご家庭と違うところです。
 二四時間ルームサービスは、お客様が飲みたいとき食べたい時にその望みをかなえるためのご用意です。
 起きたときの目覚めの時の気持ちよさ、目を覚まして最初に目に飛び込んできた部屋の様子というのが、私たちが客室において提供しているものではないでしょうか。
 大阪にお勤めのOLの方で、客室の中に一日中いらっしゃって本を読んでいる方も少なくありません。「ここに長くいたい」という使われ方をされているのだと思います。

 レストランでは、お客様が食事をされて帰るときに「おいしかったね」と言われるよりも「楽しかった」と言ってもらうように努力をしています。
 「おいしかった」というのは料理に対してのみの評価です。「楽しかった」というのは従業員との会話やロビーからレストランまでのプロセスや、隣り合わせになったお客様の印象など全体の評価になります。
 それから「メニューにないものを頼んでください」と申し上げております。そうするとウエートレスとの対話が発生し、その過程でお客様がどういうものお求めなのかという目的を把握することができます。また、少しとっつきにくい感じのお客様の場合でも、スタッフとお話しをされていく中で少しずつ心を開かれていくでしょう。
 われわれは「わが家」という表現をしていますが、親しみやすいインテリアや、フレンドリーなサービスをご提供することで、お客様の緊張感もほどけるし、「何をお求めなのか」を把握して、親しく気安く対等に従業員に接していただいて、「楽しかった」という印象を持ってお帰りいただきたいと思っています。

 ご婚礼については一日に一一組行うことができ、年間六五〇回から七〇〇回のご婚礼を執り行っております。
 開業以来四年間で二四〇〇組の披露宴を行ったわけですが、ひとつとして同じ花のアレンジであったテーブルはないはずです。「オリジナル」という表現は、われわれが最初に使ったのではないかと思っていますが、われわれは結婚式を手作りで行っております。「パッケージはやめよう、全部お客様の都合に合わせよう」という考え方からスタートし、すべてを調整して決めるスタイルをとっています。
 そのために普通の結婚式の五割増し程度の打ち合わせ時間が必要です。
 しかしお客様にとっては、「自分が結婚式で何をしたいか」をじっくり聞いてくれた、どうすればそれができるかについての的確なアドバイスをくれた、その結果として披露宴のお客様が喜んで帰ってくれた」と受け取っていいただけるため、兄弟や親せきの結婚式をご紹介していただけるなど、準リピーターになっていただけます。
 披露宴一人当たりの単価も五万円程度となっていますが、宿泊におけるパーソナル・サービスを結婚式の方にも持ち込んでいるわけです。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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