HOME > 「慮る力」単行本 > 葬儀社 公益社.3

「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

「慮る力」目次はじめにヘイコンサル安全運転中央研修所|プロの心構え|相手の心を知る|プロの仕事をする

N自動車販売富士ゼロックス|T社|KO百貨店|ジャーナリスト|デルコンピュータ|和幸|N住宅産業|再就職支援会社
|パイオニア|日本航空|公益社|ザ・リッツ・カールトン大阪|千葉夷隅ゴルフクラブ|ザ・クラブ|医師|千宗室

葬儀社

自分の心を殺して遺族ために仕事をする
公益社 世田谷営業所
Aさん




 ご遺体に接する時には、自分の親だと思って接するように心がけています。ドライアイスをご遺体の傍らに置くときもそっと置く、いつもそういう気持ちでおります。
 ご遺族の方に自分の印象を聞いてみると、「誠実さ」については自己評価よりもお客様の評価の方が高いのです。
 最初のころはそれに戸惑いましたし、罪悪感すら感じました。「お客様は困っているので、そう思われるだけではないのだろうか」「自分の方がお客様より優位に立っているだけではないか」と不安なのです。今でもこれについては結論が出ていません。実際の自分よりも過剰にお客様に誠実性について評価されているような気がしています。

 この仕事をやっていまして、泣いた経験というのは一度もありません。私はあえて泣かないことにしているのです。
 葬儀の現場というのは決してドラマチックなものなどではありません。ご遺族にとってはシビアな現実なのです。ですから葬儀の場に行ってもらい泣きするというのは、テレビのドラマを見て泣いてるようなもので、たいへんな現実に直面しているご遺族の気持ちが本当にわかっているとは思えません。
 私は、自分が機械になったようなつもりで自分の感情の整理をし、ご遺族のために仕事させていただいているのです。

*喪主の心を知るからこそ、決して弱みにつけ込まない

 Aさんの仕事に対する姿勢は、自分の両親の二度の葬式のときに感じた死の不条理に対する怒りと、喪主として感じた葬儀社の不親切に対する不満という原体験に発した、顧客への強い共感性がベースになっているようです。
 彼が非常に強く認識しているのは、肉親の死に大きな打撃を受けて弱りきっている喪主の心の状態です。「その弱みに決してつけ込むことがあってはならない」という職業倫理と、むしその喪主の気持ちに深く同情し、小さな失敗すら犯さないようにする細心の気遣いを心がけています。
 遺体に接するときは、それがあたかも自分の親の遺体であるかのように大切に扱うことからも、その共感性の高さがわかります。

 ここまでくると、中途半端に相手の心を推量するテクニックも否定されてしまいます。なぜなら、遺族が心から求めているのは、目の前にある遺体の命を取り戻すこと以外にないのであり、それは不可能なのですから、そうした親族の心情を理解しようとする自分の自己満足など許せなくなってしまうのです。
 ですから彼は、そうした自分の感情を頭から否定し、自分の心を殺して遺族の身になって仕事をしているわけです。そこまで自分を「無」にする姿勢には、すさまじいものを感じずにはおられません。


b.pnga.png

▲ ページトップへ

『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

「人間力」エピソード101本

人間力とは、「大人になること」と見つけたり