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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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スチュワーデス
乗客の心の安定を図るコミュニケーションの力

日本航空
客室本部 客室CS推進部 キャビンコーディネーター
Oさん


*「最初のひと声」で客の表情を変える挨拶の効用

 ビジネスクラスのお客様にはウエルカムドリンクをお出しして、上顧客の方にはご挨拶をします。
 インチャージのキャビンコーディネーターは、自分が担当するコンパートメントのお客様に対しては「私のお客様」だというイメージがあります。
 「コンパートメントごとに、独立したサービスをしてもよい」と内規で認められているほどです。ですからインチャージば一度は必ずお客様のところにご挨拶に行きます。

 ファーストクラスでは、ビジネスクラスのお客様よりも、お一人お一人に対して細やかな気配りができます。お客様の過ごしたいペースに合わせた対応が可能です。
 ファーストクラスのお客様は搭乗間際までラウンジにいらっしゃって、ギリギリに乗り込んで来られます。お座席で荷物の収納や身支度を、「お手伝いしましょうか」と言いながら手伝ったり、「新聞はいかがですか」と伺う時に、「一三時間ぐらいで到着します」と言い切ってしまわずに、「一三時間かかります。お疲れではないですか?」と、こちらにものを頼みやすい雰囲気をアピールします。「自分はこの先十数時間の間お世話をさせていただく、なんでもものを頼みやすい人間である」とさりげなく伝えるわけです。

 ですから、まず最初のひと声を工夫します。「お客様が機内に乗ってこられた時の表情と、私たちが声をかけた時の表情に変化があるかどうか」というのが大切なんです。
 にこやかにお迎えのご挨拶をし、お客様に笑顔で「ありがとう」とおっしゃっていただけたら、「心が伝わったな」と思います。それはそのフライトの間、よいサービスするためのきっかけのようなものです。
 お客様が席に落ちつかれるのを待って、こちらから声をかけて欲しいようなそぶりが見えたらすぐに行けるよう、つき過ぎず離れ過ぎず、なるべく近くにいるようにします。
 何か手伝ってほしいことがあるとき、お客様がこちらに振り向いた瞬間にはタイミングよくお声をかけることができるように、客室乗務員がお客様を見ていない瞬間がないよう気を配ります。
 ですからあるお客様への対応をしながらも、常に反対側も見るよう顔を動かしています。

 気難しいお客様や、イライラしていらっしゃる人の場合は、無理にそこで関係をつくらなくても構いません。なぜなら、例えば飲み物ひとつをとっても、「お酒を飲む人かそうでないか」、飲むのであれば「ワインはビンテージものか」と考えると、そう話しかければワインに興味のある方であればお話に乗ってきます。
 お酒を飲まない方であれば、「ほうじ茶を入れましょうか」という具合いで、コミュニケーションのためのツールはいくらでもあるのです。

*「自分のペースでゆっくりくつろぎたい」に対応する

 お客様の要望は「ヘッドホンが欲しい」とか、「まず飲み物が欲しい」とか、「新聞が欲しい」などさまざまです。お客様の要望にタイミングよく対応するためには、私たちの側のチームワークが欠かせません。
 「2Kのお客様の横に置いてある上着はかけなくていい」とか、「コスメキットはすでに配った」とか、離陸前にメモをやりとりしています。そのようにしてサービスが重複しないように心掛けます。
「あれ、コスメキットはさっきもらったよ、コーディネーション悪いねえ」とか、「さっき頼んだのに、頼んだ人と別の人が同じものを持ってきたよ、狭い飛行機の中なのに何もお互い言わないわけ」などと言われてしまっては、お客様の印象も良くないですよね。

 食事を出すときには、まずベジタリアンや宗教によって食べられないものがある方の場合のスペシャルミールは間違えて出してはなりません。
 ビジネスクラスでは、インチャージが肉か魚か和食かのオーダーを取りますが、ご本人のお好みに添う食事をお奨めするように気をつけます。
 ファーストクラスでは、客室責任者であるスーパーバイザーがお食事のオーダーを取ります。
 洋食か和食ですが、二年前からアラカルトメニューというのを導入しました。これは、一食目は普通にお出しするのですが、それ以降のお食事については「お好きな時にお好きなものをお召しあがりください」というものです。カレーライスやラーメン、うどんといったものも用意してあります。
 一流ホテルのようなお食事をお出しすれば必ずお客様は満足されるというわけではなく、「ワインでのどが乾いたので何か汁物が食べたい」とおっしゃる方も多いのです。

 ファーストクラスの人も、エコノミークラスの人も、一番期待しているのは、「自分のペースでゆっくり静かにくつろぎたい」ということだと思います。
 以前であれば、「個人テレビが座席についていたほうがいい」とか、ハード面でもソフト面でも何でも手厚くサービスしてほしいというニーズがあったと思います。バブルのころは、「○○様、これはいかがでしょうか」「どうでしょうか」、と勧められるのが良いサービスだという感じでしたが、今はもうビジネスマンはみんな携帯電話に追いまくられて疲れていますから、「つかず離れず見ていてくれたらそれでいい」という感じですね。座席に個人画面がつくことで、「自分が見たい時に映画を見、飲みたい時に飲む」というのが飛行機に乗っておられる方のふつうのスタイルになりました。
 ファーストクラスに乗っておられる方は忙しい方ばかりなので、「食事をしたら早く眠りたい」という方が多いのです。「何時になったら起こしてくれ」とお休みの時間を最初におっしゃる人もいらっしゃいます。そういう方は、「わざわざ言わなくても水が出てきてくれたら嬉しいな」と思っていらっしゃるので、「そろそろ喉が乾くころじゃないかな」と思うときには継続的に「水はいかがですか」と伺うようにします。
 起きておられる方の場合は、お話相手になったりすることもあります。

 私たちは客席を常に見ています。ファーストクラスであれば、後ろにあるバーカウンターに立っていて、見回りをしてグラスの水が減っていれば持ってきますし、全然召し上がっていらっしゃらなければ、コーヒーには飽きておられる人も多いので、「コーラはどうですか」とお勧めしたり、また、お客様がトイレから出てこられたときは、「お飲み物はどうですか」とか、「お休みになられましたか、雑誌を交換しましょうか」などとお声をかけます。
 読み終わった新聞を畳んだりするときに、周りのお客様の様子も観察するようにします。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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