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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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スチュワーデス
乗客の心の安定を図るコミュニケーションの力

日本航空
客室本部 客室CS推進部 キャビンコーディネーター
Oさん


 Oさんは九一年入社。一〇年間勤務した中堅のキャビンアテンダント(スチュワーデス)です。九一年当時は一年間に五〇〇人がキャビンアテンダントとして採用されていました。
 国際線のジャンボジェット機には、一六名のキャビンアテンダントが搭乗しています。日本航空ではグループ制をとっており、この一六人のうち外国人の四人を除いた一二名の乗務員が会社で言うところの課とか係のようにいつも同じ乗り合わせになっているようです。
 そのリーダーを務めるのが客室責任者であるスーパーバイザー。その下に五名程度のキャビン・コーディネーターがいて、このキャビンコーディネーターが二階と一階の合計五つのコンパートメントをおのおのインチャージ(責任者)として担当する仕組みになっているようです。
 ファーストクラスは合計三名の乗務員がつき、ビジネスクラスは五人~六人、エコノミークラスも五人くらいで担当することになります。
 エコノミークラスでは、四〇人程度のお客様を一人のアテンダントが担当するという計算になります。

 よく空港では、一団となってさっそうと胸を張って歩くキャビンアテンダントの姿を目にして、「カッコいいな」と思うことがあります。しかし、その時アテンダントたちはフライトを前にして、極度の緊張状態にあるのだそうです。

*乗り馴れていない客にとっては「地獄に仏」

 私たちの使命は、

  • お客様を安全に目的地までお運びする
  • 個人のニーズに合ったサービスをする
  • 快適に過ごせる空間をつくる

 ことです。いろいろな年齢層、ステータスのお客様を長いフライトの間お世話するわけですから、あるときはお母さんであり、ある時は介護婦であり、安全上の問題についてはきっぱりとご注意する必要があります。

 お客様には、信頼していただいて安心して乗っていただけるようにしたいですね。そして「頼んだらすぐやってくれること」が信頼感につながるはずです。放ったらかしにしておくと、「わかってもらえない」とか、「わがまま言っているわけではないのに」と思われてしまいます。
 お客様が「こうしてください」と言っていただきやすくする必要があるのです。そのために自分たちから積極的に働きかけをします。

 キャビンアテンダントは、フライトの二時間前に全員集合でミーティングを行い、そのフライトでの配置を決め、頻繁に利用される上顧客や、車椅子の方、お年寄り、お子さんが何人乗られているかを把握したうえで、ストレッチ体操などをやって体をほぐし、ターミナルビルに出てきます。
 一歩ターミナルに出るとものすごく緊張します。フライトを遅らせるわけにはいかないので、離陸までの準備のことを考えるともの凄い責任感を感じます。飛行機が離陸してしまえば、もう代わりは利かないわけですから、すべての問題を自分たちで解決しなければなりません。ですから私たちの当事者意識というのは大変なものです。独特のピンと張り詰めた気分があり、その緊張感をほぐすためにことさら大きな声で話しながらターミナルの中を歩くアテンダントもいるのです。

 搭乗すると、客室の清掃ができているかチェックし、コックピットとその日のコースや危険な荷物についての打ち合わせをした後、お客様を迎える準備をします。第一印象が決め手なので、身だしなみに乱れがないかのチェックは大切です。
 特に外国から日本に帰る便の場合は、「おかえりなさい」という気持ちでお迎えすると、既に日本に帰ってきたような感じがして安心される方が多いと思います。
 お客様が飛行機に乗り込んで来られたときは、「いらっしゃいませ」と言うよりも、「おはようございます、こんにちは」というように、お客様から言葉が返ってきやすいご挨拶をするように心がけています。
 これはなぜかというと、外国の方はグッド・モーニングとかハローとか、気軽に声をかけてこられる方が多いのですが、日本の方の場合は私たちに声をかけられるよりも、「自分の座席がどこか」に注意がいってらっしゃる方が多いので、そういう気ぜわしさを和らげるためにも、言葉がお客様から帰ってくるようなご挨拶をするようにしているのです。それでお客様の方からも、「こんにちは」などと自然に言葉が返ってきたら、自分でも「今のご挨拶は合格かな」と思いますね。

 国際線の場合は、乗り馴れていらっしゃるお客様と、そうでないお客様の間にかなりの差があります。
 例えば外国に初めて行かれるご年配の方などは、「怖くて怖くてしようがない」こともあるわけです。そういう方に対しては、「大丈夫ですよ、何かあった時には"いの一番"に私が助けますから」という感じでお声掛けします。
 女性の方であれば、ボディータッチをすることでご安心していただけます。また、疲れていらっしゃるように見えたり、いらだっておられるような方には、わざとゆっくりお話ししてお心を和らげるようにしています。

 お子さま連れの方ですと、お子さんが泣いたり体調を崩したりするので、お母さんは緊張していることがありますが、その場合はお子さんをあやすのではなく、お母さんを安心させてあげるような言葉をおかけします。そうすると、お母さんの安心感が子供に伝わって、お子さんも静かになるわけです。
 お子さんの泣き声の意味は母親にしかわかりませんし。国際線の機内というのは、携帯電話からビジネスマンが解放される静かな空間なので、みなさん「とにかく寝かせてほしい」と思っているわけです。そういうところで子供の泣き声がしたら、ビジネスマンのお客様のひんしゅくを買っているのでお母さんはますます緊張してしまいます。ですからお母さんはただでさえ周りに気をつかって疲れてしまうわけです。

 気分がちょっと悪くなられたような方には、「大丈夫ですか、何かお手伝いしましょうか」と声をかけます。しばらくすると、「さっき声をかけてくれたので全然良くなりました」とおっしゃっていただけることもあります。
「閉所恐怖症で不安なんですけれど」とおっしゃる方には、頻繁に声をかけたり、飲み物を持っていったり、運動してリラックスしていただいたり、青竹踏みをお勧めしたりします。常に私たちが自分に注意してくれているということが、そうした不安を持っている人に安心感をもたらすようです。
 そのような目配りと同時に、安全に関する問題はないか、手荷物の収納は正しいか、棚はちゃんと閉まっているか、たばこを吸っておられる方がいないか、気分や具合いの悪そうな方はいないか、など客席に常に目を配り続けます。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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