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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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カーナビ商品開発者

潜在的ユーザーの「本質ニーズ」を掘り起こす法
パイオニア
モーバイルエンタテインメントカンパニー
事業企画部 ナビゲーショングループ
企画課
Tさん
Nさん



 カーナビゲーション・システムは不案内な場所に行くためには、大変便利な道具ですが、メーカーによる違いがよくわかりません。自動車用品売り場に行ってみても同じような商品が並んでいます。
 ところが一つだけオレンジ色をベースにした外観が目を引くカーナビがありました。パイオニアが去年発売した「楽ナビ」です。外見が他と違うだけでなく、操作性が非常に簡単で売れ行き好調だそうです。
 一体このカーナビは他のものと何が違うのか、それはどのような開発思想で生み出されたのか、消費者のニーズを発見する開発者の「慮る力」について、聞いてみました。

*リモコンの上にドライブを載せた単純化の発想

 カーナビゲーションは自動車メーカーが先行し、市販されたのは九〇年くらいです。それ以来新しいメディアをどんどん取り込んで発展してきました。
 最初は「自分の現在位置が分かる」「行きたいところにどう行けばいいのかわかる」という機能が主だったのですが、九六年にVICSの渋滞情報が加わりました。これが非常に大きな付加価値だったと思います。今またどんどん機能が加わって、操作がパソコンのように難しくなり、これを解決しなければという課題は以前から持っていました。
 当社には、カーナビゲーションシステムとしての最高級システムである「サイバーナビシリーズ」と、価格が安く使いやすい「楽ナビ」という二つのシリーズ(各々に三モデル)があります。
 
 二〇〇〇年の秋に発売した「楽ナビ」では、リモコンの上にある「お出かけボタン」「渋滞ボタン」「周辺ボタン」「お帰りボタン」という目的別のボタンに、ドライブ中に起こることを集約していて、まさに「このリモコンの上にドライブがある」と言ってもいいと思います。こうしたまったく新しいインターフェイスを通して、車を使う楽しさまで提案したいというのがこの商品なのです。
 今までのカーナビは、リモコンの中の「メニューボタン」を入口として、その先に行き先を表示したり、渋滞情報を見たりする、ウィンドウズのような複雑な階層構造がありましたが、楽ナビでは「お出かけボタン」を押すと、カーナビの機械が女性の声で、「どちらまで」と尋ねてきます。
 運転者がマイクに向かって「八景島シーパラダイス」と発音すると、音声自動認識で機械が、「八景島シーパラダイスですね」と復唱し、自動的に目的地の設定とルート探索をして、「一時間三〇分かかります」と案内してくれます。あとはカーナビの指示に従って走り出せばいいというわけです。このように、「僕にもできるかな?」とカーナビに対する不安を持っている人の心理的なバリアをなくしてあげられたと思います。
 
「周りにコンビニはないかな」と思ったときは、運転しながら「周辺ボタン」を押して「コンビニ」と発声すると、周辺のコンビニエンスストアの情報を検索して、「セブンイレブンまで一キロメートルです」と表示してくれます。「ここへ行く」を選択するとルート探索が始まり、その指示に従えばコンビニに着くわけです。
 渋滞情報に関しては、これまでのカーナビでは、「VICS情報を見る」という指示を、階層構造をいくつか降りていって機械に与える必要がありましたが、楽ナビでは「渋滞ボタン」を押して、「渋滞チェック」と発音すると、自動的にチェックをしてくれて、道路に設置してあるビーコンを通過するたびに、自動的にルートを弾き直して渋滞を避けるよう機械にお任せすることもできるのです。
 一日楽しんで家に帰るときは、「お帰りボタン」を押すだけで、自動的に自宅までのルートを検索して表示してくれます。ワンタッチで、実に楽チンです。この機能がかなりお客さんの満足度が大きいようで、「こんなに喜んでもらえるものなのか」と驚きました。
 今までのカーナビの、「階層が深くて操作が大変だ、何とかならないか」というお客さんの単純化ニーズに応えることができたと思います。
 
「ドライブ中にやりたいことは何なのか」を抽出して、それをリモコンに乗せただけで、それ以外の機能は他のカーナビと変わらないし、むしろ少ないくらいなんです。
 われわれは「カーナビが与える効用はシンプルで普遍的なものなんだ、それをわざわざ難しくしているからおかしいいんだ」と思っていました。
 「カーナビを使った生活はこんなに便利なんだから、もっとみんな使ってよ」という提案です。それと「安くてクオリティが低い商品ではなく、みんなが使ってもらうえるような商品である」という、楽ナビが目指す方向がマッチしたわけです。

*目線を変えて今までと違うユーザー層を探そう

 これ以前の楽ナビは、記憶媒体にCD-ROMを使っていました。ところが九九年の秋モデルが発売されたころ、「来年の秋に発売する商品はDVDにメディアチェンジしよう」という話が出てきたのです。
 それまでの楽ナビのミッションは、最高級のフラッグシップモデルである「サイバーナビ」の中から、初心者があまり使わないような機能を取り外し、CD-ROMを使うことで買いやすい価格にして、技術好きの人以外にも買っていただいて、カーナビを普及させるというものでした。
 しかし楽ナビもDVDを使用するとになると、安いだけではフラグシップモデルの弟モデルのように見られてしまうことになってしまいます。つまり「サイバーナビは高級モデルで、楽ナビはその機能をちょっと押さえたもの」と見られてしまう危険性があります。
 しかしDVDを使うとどうしても価格は上がってしまいます。それに見合うクオリティーを掲げなければ、ユーザーが離れてしまうかもしれません。そこでユーザーのターゲットを明確にするターゲット・マーケティングを考える必要がを痛感しました。

 カーナビの普及率は、全国に約七〇〇〇万台ある乗用車の中でも一〇%程度だと思います。ですからまだまだ普及の余地はあるはずなんです。
 カーナビの認知度は非常に高いし、みんな「便利そうだな」と思っています。しかし普及率の伸びは鈍化傾向にあります。「これはなぜなのだろうか」というところから考えをスタートしました。
 「今カーナビを喜んで使っていただいているユーザーの方とは違うニーズがあるのではないか」と思ったんです。「カロッツェリアのユーザーは、クルマ好き、メカ好きな人が多い」というところから考えて、商品のマッピングを考えてみました。
 技術系のユーザーか、文系のユーザか
という軸と、
 車好きで走り屋のユーザーか、車は単なる移動手段だと思っているか
 という軸を立ててみると、これまでのカーナビユーザーは「文系で、車自体が好き」(=不良系)か、「走りと技術が好きなマニアとしてカーナビを受け入れている」人(=NIFTY系)ではないかと思います。
 ドライ系の人は技術に詳し過ぎて、情報も多く持っており、機械の限界がわかっているので「まだ買い時じゃない」と考えているから新規ユーザーとしての掘り起こしは難しいだろうと思いました。
 そこで狙うべきは、「クルマでの移動は手段と考えていて、技術にもあまり詳しくはないので楽しく便利にドライブできればいい」と考えているスマート系の人たちであろう、という仮説を立てたのです。
 つまりその人の価値観が、どこに集中しているのか、ドライブなのか、車自体か、カーナビ自体か、それともカーライフであるのかを考えてみたわけです。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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