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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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再就職支援会社

相手の心の中にある「生きるための答え」を導き出す
R社
カウンセリング・教育部
チーフカウンセラー
Hさん


*転職者個人と同じスタンスで、共に考えともに悩む

 クライアントに過去の自分を振り返ってもらうと、だいたい普通、会社のことが最初にあって、仕事があって、大切な順に考えていくとかなり後の方に自分のことや家族のことが出てきます。
 三〇代であればキャリアアップを考えるのは当然のことだと思いますが、五〇代から将来の自分を考えるときには、「ライフアップ」を考えるべきではないでしょうか。つまりまず自分が最初にあって、自分が何をするのか、家族はどうなのか、その糧となる報酬はどこで得るべきなのかという順番に考えて、これからのことを決めていく必要があると思います。
 そこに、自分で気がつかなければならないわけです。他の人に言われたり意見されたり、本を読んでそう思ったというのでは気づきになりません。

 当社では、試用期間である六カ月間は保険期間としています。実際に企業に入ってみないと相手先の企業の文化はわからないわけですから。
 そこで試用期間内に「やっぱりやめて帰ってきちゃった」という人もいます。そういうときは泣きたいような気持ちになります。当社では就職が決まるとクライアントや、コーディネーターがみんな、「おめでとうございます」と言います。「おめでとうございます」という素直な気持ちで、再就職を支援しているのです。ですからわれわれの仕事の根底には「人間主義」という哲学があると思います。
 「クライアントの人に喜んでもらえたらうれしい」という気持ちが基本なのです。入社する前に、当社の会長と社長が書いた、『なぜアウト・プレイスメントなのか』という本を読みました。その中で、私が感じ取ったのは、

  •  転職者個人と同じスタンスで、共に考えともに悩む
  •  単に一個の人材として扱うのでなく、一人の人間として接する
  •  人材としてだけでなく、人間として企業に選択してもらう
  •  キャリアアップダウンという価値観を捨てなさい。過去を振り返りながら新しい生き方、新しい価値観を考えてもらう

 ということです。
 カウンセラーは、転職者が自分自身を発見するのを手伝う仕事なのです。その人の立場にどれだけなることができるかどういうことで、その結果として本人に自分の可能性に気がついてもらうことなのだと思うのです。

*相手になり切るほどの「真摯な共感」

 尾羽打ち枯らしてやってくる再就職希望者の心の中に分け入って、本人の記憶の底に埋もれている本当の業務能力についての、自発的な気づきを促し、職務経歴書を作り上げていく中から再び自分の能力に自信を持って目標に向かって突き進む活力を与えるというのがHさんのお仕事です。まさに「究極の取材力」だなと感じました。
 業務の流れは二段階に分かれていると思います。まずカイシャに見捨てられて心の傷を負い、世の中すべてに対して猜疑心を持っているクライアントの信頼を獲得するのが第一ステップです。
 多くのサラリーマンは会社に属していること自体がアイデンティティの保証になっているので、それがなくなった時点で自分が何者かすらわからなくなってしまいます。ガラス細工のように壊れやすくなっているクライアントの信頼を獲得するための心構えの第一は、相手を一個の人間存在として承認してあげることでしょう。
 それなくして、会社から離れて漂っているクライアントの心をつなぎとめることはできません。そして笑顔と言葉で精一杯自分の誠実さをアピールし、相手に疑われるようなことは何ひとつしないよう細心の注意を払わなくてはなりません。相手の話をじっくり聞く姿勢も大切です

 クライアントの信頼が得られて、クライアント自身に過去の自分を振り返らせるときには、自分がどんなことでもまじめに聞いてあげる姿勢を示して安心感を与えるとともに、相手の意図をまちがえずに理解して、相手になり切るほどに真摯な共感を示す態度が重要です。
 昔の自分が輝いていたころに戻っている相手の心に寄り添う気持ちが必要ですから、その時のカウンセラーの心は「無」の状態になっているのではないでしょうか。クライアントの心に手を添えてあげることによって、心の中にある「自分の本当に得意なことは何か」という回答にクライアントは自発的に気づくわけです。
 逆にこの時に自己中心的に、「話を早くまとめよう」とか、「どうすれば転職に結びつけることができるだろうか」などと考えていたのでは、クライアントの気づきを引き出すことができないばかりか、せっかく得ていた信頼も失われクライアント心は離れていってしまうでしょう。

 生きるための答えは他のどこでもない、自分の心の中にあるのです。ここでもまた心の持つ力の強さを感じることができます。
 そうした力強い芯が自分の中にあることが理解できれば、一度は存在を否定された人間でもそれが自信の源になり、そこから新しい生き方や新しい価値観を得ることができるでしょう。個人個人の本来の能力は自覚していなくても心の中にあるわけで、「たいした仕事をしなくても会社に毎日行っていること」が自分の存在証明である、などというのはばかばかしい錯覚でしかないのですから。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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