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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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Aさん



*「信頼」何を言ってもこの上司は×をつけないと思わせる

 人事畑や経理畑の人たちは、わりと「自分の言いたいことを言う」傾向がありますが、営業マンは「社命ならどこにでも行くよ」という人が多くて、非常にサラリーマン的で自立心が薄いと思うんです。
 サラリーマン的というのは、「働くことが生活の八割九割を占めている」と思っていることです。しかし私は「そうではない。家庭のことや自分の将来の目標などをバランスよく考えるべきだ」と言っています。
 そもそも、「会社のために」という人はいても「仕事のために」という言い方をする人はいないですよね。「ここまで会社のために尽くしているんだから、なぜ会社は、自分の面倒を見てくれないのか」という依存心があるわけです。
 さらに、「ウチ」という言い方をした時、その「ウチ」というのは自分が所属している部署のことを意味しているというケースが非常に多い。「ちょっと待てよ、ウチと言うならせめて会社とか業界のことを考えてほしいな」と思います。

 私は、仕事ばかりでなくプライベートのことまで含めて部下と話をする時間をなるべく多く持つように心がけています。結局、「なぜこの仕事をやるのか」を部下に認識させるためには、目標や目的の共有をする必要があるわけです。
 上から目標を押しつけると、わたし自身も含めて大抵の人は一瞬反発を憶えるはずです。ですから、その反発について、その時にとことん話し合うと思うんです。そのほうが物事が始まってから途中で話し合いの場を持つよりも良いのではないでしょうか。
 そういうわけで、私の仕事の半分は雑談になっています。部下は、上司に対してはなかなか自分をさらけ出せません。そこで、私はなるべく自分をさらけ出すようにしています。
 部下にしてみれば、「この人にも弱みはあるんや、アホなところもあるんや」と思うでしょうし、そのようなオープンな姿勢にしておいた方が言いたいことを言いやすい雰囲気ができるようです。
 
 部下が自分の心の中をちらりとでも見せてくれなければ、部下のことは理解することができません。この仕事が好きでやっているのか、楽しいと思っているのか、部下が能面をつけたままでは、判断のしようがないのです。
 自分を語ってでもらうためには、「僕がどんなことを言ってもこの上司は×をつけない」という認識を部下に持ってもらう必要があります。
 これは、極端にいうと親子の関係に近いものがあるかもしれません。親は何をされても絶対に子供を否定しないものですよね。だから部下に、「この人には無茶を言っても否定はされない」と信頼されれば、話を聞くことができると思うのです。
 自分が忙しくしているときでも、部下が相談に来たら、どんなにこちらが忙しくても、またどんなに細かな相談でも、面と面を突き合わせ、正面から向きあって話を聞いてやる必要があります。「ながら」で話を聞くのはタブーです。何かをしながら話を聞くと、後になって同じ質問をしてしまったりします。そうすると部下の心は離れます。こちらが真剣に聞いていれば、二回同じことを聞くようなことはしないでしょう。

*「認める」部下には、上司が知らない長所があるはずだ

 部下を褒めるには、事実を指摘して褒めてやる必要があります。だから部下の仕事を注意して見ておかなければなりません。そうして事実を褒めてやれば、部下には上司が自分の仕事を見ていることがわかります。
 出来が悪いとか、時間があったらさぼるとか、問題があると思われている部下でも、それは元の上司の下でのことであって、「自分で考えさせてもらえなかった」とか、「仕事を任せてもらえなかった」など、上司の側に問題があるケースも少なくありません。だから「どうせできない」とレッテルを張って色メガネで見るのではなく、眼鏡をかけ替えて新たな目で見てやると、違うものが見えてくるかもしれません。
 本人の意見を聞く機会をもてば、自分を開示してくれる可能性があります。そうすればしめたもので、小さな仕事でも部下に任せて、「君を信頼し切っているよ」と言えばよいわけです。
 部下には、上司が知らない良い点がいっぱいあるのです。よく話を聞くと、「前の上司はこんなことを聞いてくれなかった」と言いながら話してくれますし、そういう長所を活かせば生き生きと働いてくれます。

 キャリア面接などで、部下が「とにかく話を聞いてください」と言ってるのに、「聞かんでもわかっとる」などと言う上司すらいます。上司と部下は違う人間なわけですから、聞けば違う話が出てくるに決まっているのに、それを拒否するというのは部下の人格を否定していることに他なりません。
 部下は上司に相談をしようと思ってまじめに相談をぶつけるのですが、結局上司は自分の経験談しか話さないということもあります。ひどいケースですと、部下が相談する前に、上司が自分の経験に基づいて答えを出していることすらあります。
 部下は将棋の駒ではないわけで、一人ひとりの人間に尊重するべき一つの個性があるのです。彼らを一人の人間としてみたら違うものが見えてくるのではないでしょうか。

 部下を一人の社員として認めているのか、それとも単なる補助職と見ているのかだと思います。
 「部下は必ず尊敬できる」と思い込めば、上司の方もおのずと態度が変わってきます。本当にその部下を「自分と対等の人間だ」と思っていなければ、指示命令型になってしまうのです。
 しかし、現代では答えがない仕事が増えてきているので、自分で考えて対処してもらわなければ、上司が全部指示することになってしまいます。これは企画や人事の仕事では非常に効率が悪いのです。上司がすべてを決定し指示命令する立場に立つと、部下は「○○部長がこう言っていますがどうしますか」と、責任回避のご注進型メッセンジャーになってしまいます。

 私は、「私はここまでは自信を持っていますが、これついてはできません」と自分をさらけ出し、等身大の自分を見せています。部下に自分の像が歪んで見えないようにしないと、部下からの反応もストレートに返ってこないと思います。
 ですから、「自分はこういうことで失敗した」とか、「こういうことが恥ずかしかった」などという、仕事やプライベートのことについても話をするべきだと思います。
 そうすれば、最初に聴いた瞬間は部下は私を軽蔑するかもしません。しかし次からは教えてくれるようになります。
 「これは何だい?」と聞くと、「わからないので調べてきます」と返事をして、結局調べるのでその部下の育成につながることもあります。相手をより身近に理解し、対等なコミュニケーションを持つ努力が必要なのだと思います。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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