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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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管理職

上司の役目は、仕事を通して部下の力を開花させること
ラーノロジー・ジャパン ディレクター
本間正人


*「認める」色メガネを外して素直に褒めてやる

 部下を認めるのに有効な手段は、「プラスリスト」をつくることだと思います。
 これは、一人ひとりの部下に対して、「過去に彼の能力を認めたことがある」という褒めるべきケースを記録しておくものです。これがあると、部下に対する態度は格段に変わるでしょう。
 部下を信じられなくなった時にこのリストを見直してみると、「そうだこいつはこんなことをやってくれたっけ。こいつもいいところあるんだな」と思い直せます。
 最悪なのは「こいつはやる気がない」と一面的なレッテルを貼ってしまうことで、これはたいへん危険なことです。なぜなら、その色メガネをかけて部下を見てしまうので、上司の目からはどんどんやる気がないように見えてきてしまうからなのです。

 部下を叱るのと、怒るのとは全く別のことだと思います。怒るというのは、上司が自分の心の奴隷になってしまい、感情を爆発させているだけのことです。
 部下を怒ってはならないのです。そうではなくて、やらなければならないのは「改善提案をすること」です。「遅刻をするな」と叱るのではなくて、「八時五五分に出社しましょう」と言うのです。そうすると、部下は「八時五五分に行けばよい」というイメージが頭に浮かぶから、来ることができるわけです。
 同じように、「ミスをするな」とか、「近ごろの若い者は」と言ってしまうと、ミスをすることを先に考えたり、「若いものはダメなのだ」と思い込んでしまうので逆効果です。
 改善する指示を部下の心の中に浸透させるためには、「三つ褒めて、ひとつ改善を提案する」くらいの心掛けでなければならないでしょう。レポートを直させるにも、「この見出しはいいねえ、文章もよくなってきたし、ここのフレーズは特によい、ただしここの表現だけなんとかできないかな」という感じです。最初からネガティブなことを言っても、部下は心の扉を閉ざすだけです。

 うまく褒めるためには、上司には褒め言葉のレパートリーを増やす心掛けすらも、必要になってくると思います。褒め言葉ひとつとっても、いろいろなパターンで部下の心に訴えかける必要があるのです。
 特に仕事ができる上司の場合、自分を基準にして判断してしまってはいけません。一人ひとりの部下をよく見て、「どの点がどう伸びたか」を観察すれば、必ず褒めるべきところがあるはずです。そういうところを褒めていけばよいのです。

*「任せる」達成感を味わせれば部下は必ず成長する

 松下幸之助翁は、「任せて任さず」と言っています。部下がやる気を出すのは、「上司に自分を信じてもらえた、認めてもらえた」という意識ができて、その意識が形になって表れて成績が向上するのです。
 この時は、飼い犬が首輪を外してもらったような、うれしさと不安がないまぜになった心の状態のはずです。こういう時は、任せっ放しにしておくとささいなことでつまずいて、その失敗がどんどん膨らんでしまうことがあります。だから手を放しっぱなしだとよくありません。直後のフォローが大切で、部下の様子を見て気持ちや状況を聞くようにします。そのように心理的にフォローするコミュニケーションが成功を導くのです。彼の不安を上司がくみ取ってやる必要があるわけです。

 山本五十六の言葉通り、仕事を任せて、実際にさせてみなければ部下の能力は伸びません。仕事は頭の中で理解できても、実地に体験して初めて身につくものです。ですから任せる機会というのは非常に重要な学習の機会です。
 初めてトライさせる場合は「七〇点の出来であれば、プラスリストに記入してあげる」という感じでいいのではないでしょうか。そのように部下を認めて、動かしていくべきでしょう。
 もし三〇点しか取れなければ、それはその仕事を部下に任せた上司の見極めが甘すぎると考えるべきなのです。「この仕事をだれに任せるか」という見極めは、上司の仕事なのですから。点数が悪かった場合には、もう一度部下と手をつなぎ直してやる必要があります。しばらく一緒に走ってから、また任せてやればよいのです。
 このように仕事を学習の機会と考えて、指導の仕方や研修の方法など、あの手この手で上司は部下の育成を考えるべきでしょう。
 九九%の人間は上司の指導によって、より輝くことができるはずです。
 人間が育つには時間がかかります。田畑を耕して、そこに種をまき、手入れをして収穫を待つように、人間は自然のサイクルで育つのです。さらに早稲や晩生があるように、開花する時期も一人ひとり違うわけです。

 上司は、自分の感情をコントロールしなければなりません。
 なぜなら、他人の感情をコントロールすることは誰にもできないからです。自分の感情こそ制御すべきなのです。しかし実際は、自分をコントロールせずに部下をコントロールしようとする人が非常に多い。しかししょせん他人の心なのです。
 怒りやフラストレーションに流されてしまわないためには、上司はストレスレベルを下げる必要があります。そのために一番いい方法は息を吐くことです。これによって副交感神経の働きをサポートすることができます。人が緊張したときにたばこを吸うのは、ニコチンを求めるよりも、息を吐きだすという効用を求めてのことでしょう。
 部下の仕事に怒りを覚える人は、完璧を求めすぎているのだと思います。しかし人間は完璧ではありません。上司も部下も、お互い成長途上の学習者なのであり、お互い学ぶ存在なのです。
 部下は部下としての学ぶべきことがあるし、上司は上司として部下の成長を見つつ自分の勉強を続ける必要があります。そういう学習者の立場としては、お互い平等なのです。

 目標管理がうまくいかない理由はたいてい、本来的には積み上げで目標を決めるべきところなのに、トップが前年度の数字を元にして目標を部下に押しつけているからです。
 そういう押しつけをせずに、一人ひとりの部下が十分達成可能な水準の目標を設定しそれをクリアさせて部下をうまく育てていけば、結果として課としての成績は必ず上がるはずです。
 上司がプレイングマネージャーの場合は、トップが課全体の目標を押しつけてくるのであれば上司が、自分の目標をあえて高く設定してその分、部下の目標を低くすることができるでしょう。
 部下に目標をこなす達成感を味わせ続ければ、自分の成績が達成できなかったとしても、部下が成長して売上げを上げてくれるはずですから、だいたい二年のタームで見れば元が取れると思います。上司がそれを信じて「自分の目標をあえて高く置く」ように腹をくくれるかどうかのほうが問題です。
 私はそのくらい人間を信じたいと思います。でもやってみると、課全体の成績は、目標に達しないかもしれません。それでも、部下本人の人間的な成長には役に立っているはずです。もしそれであれば、上司にはいつかいいことがあるはずなのです。

 人間はひとりで生きられる存在ではありません。そして人には、共通点もあれば相違点もあります。複数の人間がお互いかかわり合い学び合っているのです。
 コーチングでは、一人の個人だけが救われるのではなく、全員が「組織の状態を良い方向にもって行きたい」と考え、お互いが心を通わせることでその方向をつかもうとしています。
 厳しい状況に立たされている日本企業では、現状では社員一人ひとりを無力感が支配しているかもしれません。でも、どんな人も「夢やビジョンを語りたい」という要求を持っているはずです。
 人と人とのつながりを回復することによって、会社全体が良くなってほしいという考え方ができれば、その気持ちのつながりから沸き上がってくる連帯感があるはずです。
 あくまで個人を維持しながら、個性と自発性を活かしつつ、人とのつながりを活かすという方向性は十分考えられるのではないでしょうか。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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