HOME > 「慮る力」単行本 > 管理職

「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

「慮る力」目次はじめにヘイコンサル安全運転中央研修所|プロの心構え|相手の心を知る|プロの仕事をする

N自動車販売富士ゼロックス|T社|KO百貨店|ジャーナリスト|デルコンピュータ|和幸|N住宅産業|再就職支援会社
|パイオニア|日本航空|公益社|ザ・リッツ・カールトン大阪|千葉夷隅ゴルフクラブ|ザ・クラブ|医師|千宗室

管理職

上司の役目は、仕事を通して部下の力を開花させること
ラーノロジー・ジャパン ディレクター
本間正人

 管理職は、部下に指図をして組織の業務を戦略的に遂行し、目的を達成する仕事です。
 多くの企業では、これまで「部下は上司の指示を忠実に守り実行すればそれでよい」と思われてきましたし、上司にしてみれば「いかに部下を服従させて効率的に働かせるか」「精神的なプレッシャーをかけるか」が問題であるという意識が根強く残っています。
 
 しかし最近では、組織のフラット化が進み、また各業務で部下自身にも多くの判断が求められるようになったために、「上司の仕事は部下の能力をうまく引き出す仕事である」という考え方がなされるようになりました。そうなってくると管理職という仕事も、一緒のサービス業だと捉えることができると思うのです。
 
 そうした考え方の一つとして「コーチング」があります。これはスポーツのコーチと同じ意味で、「大切な人を、その人がいるところから、その人が望むところころまで送り届ける」という動詞が語源になっているそうです。
 つまり「人を動かす」のではなく、「人を活かす」ためのテクニックと言えるでしょう。アメリカで発生したこの概念を、企業の管理職研修などを通して日本で普及させる活動をしている本間正人さんに、管理職におけるコーチングの考え方を伺いました。
 
 あわせてN住宅産業の人事畑を歩いて来られたAさんに、部下を活かすための実践的な管理職の心がけについて聞きました。
「そもそも管理職は部下の心を慮る必要があるのだろうか」というレベルの疑問を感じている人も少なくないと思います。しかしそのような発想の管理職は、今後の競争に勝ち残るための「不可欠の条件」の一つを見落としているといっても過言ではないでしょう。

*「コーチング」では「まず信頼し、信頼される」こと

 コーチングで一番大切なことは、人間を大切にすることだと思います。中間管理職では、まずなにより自分を大切にしない人が多いし、まだまだ「部下は将棋のコマのように使える」と思っている人が少なくありません。管理職として「自分には能力がある」と思っている人ほどそう考える傾向があるようです。
 営業課長が自分の目標を達成しても、部下の心は寒々とし、心が離れてしまっていることが少なくありません。部下は、「自分は上司が成績を上げる道具にすぎないのだ」と思ってしまうのです。
 そして何より、企業トップが軽率なリストラをやりすぎています。人間を数字にして、「人員の何パーセントの何百人を削減する」などとやっているわけですから。経営トップは、リストラ以外の選択肢がなかったのかをしっかりもう一度考える必要があるのではないでしょうか。

 コーチングでは、一人一人の人間を大切にすることが基本になっています。
 人間は心のある存在です。やる気があって、具体的な指導を出せば、パフォーマンスは必ず上がるはずなのです。
 上司が指示する時に、「気を利かせて臨機応変に、とにかくやれ」などと言うのでは指示とは言えません。指示はかみ砕いてきちんと説明する必要があります。上司が自分で「これは当然だ」とイメージしていることは、部下にとってはぜんぜん当然のことではないわけですから、そうしたあいまいな指示の仕方では上司の意図が伝わるはずがないのです。
 
 上司が部下と話すときは、部下が答えやすい質問から入る必要があります。
 しかし往々にして、上司は自分が聞きやすい自己中心的な質問を部下に投げかけています。「部下を育てたい」という気持ちはあるのですが、自己中心的な発想から抜けられなければ、結局押しつけになってしまい部下の持ち味を殺すことになります。
 そこで、部下に質問する時は、相手の答え易さを考えて、まず一五秒、「彼ならどんな質問から入ると答えやすいだろう」と考えてから質問するとよいでしょう。というのも人によって答えやすいことは違うからです。売り上げ成績が好調な部下であれば、取引先からニコニコして帰ってきたときに、「今日はどうだった」と聞けば話が弾むでしょう。
 しかし成績がうまくいっていない部下にが帰ってきた時に、「売上は?」などと聞くからますます暗く元気がなくなってしまうのです。

 企業は顧客へのマーケティングを行います。そして顧客のニーズに合う商品を提供しようとしています。しかし、会社の中では、「部下が何を望んでいるか」に思いを致す上司は数少ないのが現実です。
 部下はおのおの違う欲求を持っています。「自分の能力を認めてほしい」と思っている部下もいれば、「温かみのある言葉をかけてほしい」と思っている者もいる、また「もっと仕事を教えてほしい」と思っている者もあれば、「自分が自由に使える時間がもっと欲しい」と思ってる人もいます。こうした部下の望みを上司は知っておく必要があると思います。
 そうして、信頼感がある自然なコミュニケーションができなければ、効果的な部下の指導はできないでしょう。

 松下幸之助翁は、「管理職は人飼い」と言いました。その言葉を使えば、上司と部下はお互いが飼い合っていて、活かし合う関係にあるのではないかと思います。上司はいろいろな部下に接して壁に突き当たり苦しみ、それに向かい合うことによってよい管理職に育ててもらっているわけです。上司はそのように部下から学んでいます。
 顧客情報は部下が一番よく知っているわけですから、それを部下から聞き出す力が管理職には重要なのです。部下にどのようにしゃべらせるかを考えれば、部下が話しやすい話題を選ばなければならないのは当然だと思います。
 そのためには、試行錯誤が必要です。マニュアルはありません。一人ひとりの部下に合わせて、「彼に対してはどういう方法がベストか」と、いろいろ試してみる必要があります。
 レパートリーはある程度数が決まっていると思いますから、それを使い分けて試しながら対応するわけです。そういう意味で、あの手この手を繰り出せるクリエイティビティが求められます。創造力のある人は、「この手がだめだったら違う手を使ってみよう」と発想を変えることができますから、失敗を恐れることがありません。
 そのように、自分でちょっと工夫をすることによって、まったくコミュニケーション能力は変わってくるでしょう。
 
 しかし、そうした必要性にもかかわらず、上司のコミュニケーション能力はどんどん低下しつつあるようです。上司自身が、仕事の上で、自らの情報の発信能力を高める機会があまりないからです。




b.pnga.png

▲ ページトップへ

『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

「人間力」エピソード101本

人間力とは、「大人になること」と見つけたり