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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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料理人
心を込めてつくれば、料理はお客さんの心の中に残る 4

茶懐石料理 和幸
Tさん



*仲居さんを通した間接的コミュニケーション

 昭和四〇年に、胡蝶が六本木に開店した時に私は辻留から移りましたがお茶の人があまり来ず、接待でお酒ばかりを飲まれる方は料理を残されます。それは寂しかった。
 茶懐石では、「お嫌いなものはありますか」とか、「お好みを最初におっしゃってください」と伺います。それで「えびや蟹はダメなんです」というお話を伺えれば、そうしたものはお出ししません。料理人の心が入っていなければ、「ただ出せばいい、料理が残ろうとどうしようと関係ない」という考え方ができるのでしょうが、茶懐石はそういう料理ではないんです。

 うちで料理をお出しするのは、家内がやっております。
 お酒を飲む人はゆっくり目にお出します。お酒を飲まずにゆっくり食べられる方もいらっしゃいますし、わりと早めに食べられる方もいらっしゃいます。この間合いが非常に大切なんです。「熱く出すものは熱く、冷たいものは冷たいうちに」は利休の教えです。
 料理を運ぶときに、お客さんの雰囲気で「早めか遅めか」を判断することができます。「このお客さんはゆっくりめだ」とわかれば、仲居さんは「あのお客さんはちょっとゆっくり目」と板場に報告します。そうすると板場の方では、いつでもできたての料理を出せる態勢をつくることができます。
 料理を出すときには、お客さんがお話に夢中になっていても、「お熱いうちにどうぞ」とお勧めします。これが女将さんの仕事です。この接待が大切なのです。

 ある時胡蝶の板場に、「今日のお客さんはせっかちで、早く早くと言っている、お椀五人さんお願いします」と、仲居さんがあわててきました。「だって、今さっき持っていたばかりなのに早いんじゃないの」と聞くと、「いやもう早くしてほしい」というので急いでお椀をつくりました。しばらくして廊下に出てみると、仲居さんは中でお酌をしていて、小盆にお椀が五つ載ったまま廊下に置いてあります。これでは冷めてしまっておいしくなくなるので、私は下げてきました。仲居さんは廊下に出てみるとお椀がなくなっているので慌てたようです。
 後で板場で仲居さんに、「"胡蝶に行ってお椀が温かった"とお客さんに言われたら、それは板前の責任になるんだから下げなさい。料理は熱いものは熱いうちに出さなければならないんだよ」と言うと反省していました。こういうことも普通の板前ならやらないことかもしれません、しかしおいしくないものを出すことはできないと思うんです。タイミングが非常に大切です。
 逆に板前は、仲居さんの言葉はお客さんの言葉と思わなければなりません。だから受け容れてあげないと。板前はお客さんと話せませんから、板場と料理を運ぶ人がコミュニケーションを持たないとうまくいきません。
 料理人が威張って仲居さんの言うことを聞かないようではならない、そういう意味ではまさに五分五分の関係だと思います。仲居さんが変な人だと料理が殺されてしまいます。

 店にお客さんが来るときは、着いたときに家内から「若い人か年配者か」を聞いて、「では今日は普通にしよう」とか、「味を濃い目にしてみよう」などと決めます。
 年代が一番大切なんです。常連さんについては、好みがわかっているのでお嫌いなものは出しませんし、「この料理は嫌いなんだ」とちょっともらすと、その情報は女将さんから私に伝わります。そういう意味ではやはり五分と五分なのです。


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