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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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料理人
心を込めてつくれば、料理はお客さんの心の中に残る 3

茶懐石料理 和幸
Tさん



*骨付きのものは出さない

 食べやすさに関しては、懐石料理では骨付きのものは出ないことからもわかるように、たいへん気をつかっています。骨をお出しする場合は、うずらの吹き寄せなど、骨もたたいて一緒に食べられるようにして出します。
 また漬物には、必ず隠し包丁を入れ、固いものは薄く細くしてお出しする工夫をしています。刺身などをぶつ切りにして出す店がありますが、これは年配者にはつらいことです。口の中で何回か噛んだらなくなって、それで「うまい」というものがでないと。
 味の濃い薄いの組み合わせで献立にリズム感をつけることも考えます。懐石料理の中にはいろいろな料理が出てきます。箸洗いというのは、料理が一段落して、亭主がお酒のお相伴に預かる前の小吸い物のことなのですが、お湯にちょっと味がついたくらいの、まったくほとんど味のないものです。「コブの味がしているのかな、それとも梅かな」と判らないくらいの味で、これで舌をきれいにして酒のさかな、新しいお酒を味わっていただくわけです。
 最後に出てくる香の物の中には、必ずカリカリしたものが一品あり、それによって口の中をさっぱりさせるという働きがあります。ですから、この時にはぬか漬けのようなひつこいものは出してはなりません。このように、懐石料理というのは、料理の組み立てとしては素晴らしいものだと思います。

 盛りつけについては、「日本料理は舌で味わうと同時に目で味わうもの」と言われていますが、そうした感覚を磨くため辻留は、「絵を見れば必ず役に立つよ」と言っていました。
 器でも良いものを見て勉強する必要があります。そこで、上野の博物館や日展などに行って勉強しようと思うのですが、修行中は休みは二、三カ月に一度しかありません。辻留が京都に行ってる間を盗んでさっと見にいきます。私が「いいな」と思ったのは、昭和の初めの画家で橋本明治さんですね。小林古径さんもいい。
 絵と一緒で、料理が出てきた時に活きる盛り付けがいいんです。辻留でも基本があって、それを教えてもらいましたが、東京国立博物館の館長さんに「黄金分割法」という、アンバランスの中のバランスで空間の美を作ることを教わりまして、これがものをきれいに気を見せるコツとして素晴らしいと思いました。

 懐石の当日は、朝早く起きてだしをとって、魚の下ごしらえをして料理をお持ちします。
 料理は、承った数より三、四人分多めに持っていきます。なぜかというと、急に人数が増えることもあるからです。席中が五人で、水屋にお手伝いの人の分も含めて三人前という注文をされる人もいれば、五人分しか注文されない方もいらっしゃいます。そういう時でも、黙って予備の分を持っていきます。この分はサービスになってしまいますが、そこのところは心入れなんです。お金のことを考えてないですね、私は。いい料理人は、そういう傾向があります。
 ある程度は採算を考えなければなりませんが、サービスの方は気持ちよく出して、お客さんに料理を味わっていただかなければならないと思います。

 茶会の亭主は、「お客さんを最高にもてなそう」と神経を精一杯使っているので、「もう胸がいっぱいになってお客さんと同じ料理を食べることはできない」という人も少なくありません。ですからおにぎりと味噌汁だけで満足される方も多いです。
 昼夜、別の席がある場合は、私がずっと同席していますとどうしても亭主が気を遣われるので、昼食については前もって「うちに帰って食べますから」と言っておいたり、「ちょっと用事があるので」と若い人を連れて必ずいったん外に出て、喫茶店に行ってコーヒーを飲んできたりします。
 その間は、亭主はほっと一息つけるわけです。そしてわれわれはまた次の席に間に合うように帰って準備をします。亭主はお客さんへの接待でずいぶん気を遣っているので、われわれはそうした心遣いを持たなければなりません。


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