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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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料理人
心を込めてつくれば、料理はお客さんの心の中に残る 2

茶懐石料理 和幸
Tさん



*懐石料理に込められた究極の心遣いを見よ

 茶懐石で一番大切なのは、まず分量をどれくらいにするかということ。
 若い人であれば増やしますし、年配者ならあまり多くしてはなりません。お年寄りに一番気を遣います。それから召し上がりやすさと素材。季節は実際の春夏秋冬よりやや早いので、一月はすでに春なわけですが、しかしそのころ本当にうまいのは冬の柚子だったりします。ですから木の芽で春を一瞬見せるだけで、あとは素材の旬をよく考えながら季節感を取り入れた献立を考えます。
 味付けは、その素材を生かしたものにしなければなりません。調味料はあまり濃すぎない方が素材の味を味わうことができます。
 思い出すのですが、辻留で修行中に、辻留さんが北大路魯山人さんにインタビューを申し込んだことがありまして、魯山人さんの鎌倉のお宅にお邪魔をしました。
 私は大きなテープレコーダーを抱えて録音係でお供したのですが、ある程度対談が進んだところで魯山人さんが三〇分ほど中座してしまいました。「何をされているのかな」と思っていると、当時初夏のことでして、魯山人さんは葉唐辛子の葉っぱを庭に出て摘んでた、それをお酒と醤油で調理して持ってきて、自分の焼いた器に入れて、「ちょっと食ってみ」とおっしゃったわけです。辻留は一口食べて、「うん、結構でございますね」と。私はそれを見て「彼は何を言いたいのかな、残りがあれば、食べればわかるんだけどな」と思っていました。
 幸い少し残りがあったのでいただいてみると、葉唐辛子の香りと味がよくわかっておいしかった。「なるほどな、なんの変哲のない葉唐辛子でも、辛くもなく味が薄くもなく、おいしくいただけるものだ。これが味付けの基本なんだな」とよくわかりました。
 魯山人さんは「料理する者、素材の味をどう考えるか。醤油で固めた葉唐辛子はダメなんだ、素材の味を生かすのが大切なんだ」と教えるためにわざわざ料理されたんだと思いましたね。

 ですからタケノコでも、味付けに砂糖はまず使いません。そら豆も、まだ水っぽいのはちょっと塩味にするように、素材の時期によっても味付けを変えるのです。
 サトイモの煮転がしなども、あまり砂糖や醤油を効かせると、甘みや辛みだけしか感じられなくなってしまう。「素材の味を引き立たせるために砂糖や醤油を使うんだ」と考えなければなりません。魚の煮付けでも、みんな砂糖を使いたがりますが、私はほとんど使いません。酒、みりん、醤油を少量使う、それで煮ただけでうまいのです。
 刺身やお作りにつける醤油は、その魚によって味を変えるようにしています。加減醤油と言って、だし、かんきつ類をお醤油に混ぜるだけですが、魚の脂が乗っているか、あっさりしているかによって味を変えるわけです。
 味噌汁にしても同じで、八丁味噌はコブ、カツオしか入れず素直なおいしい味をかもすものなのですが、容器の厚さや気温によって、味噌、コブ、カツオの量を毎日変えています。吸い物のだしに関しても同様で、一番出しに対して塩、醤油の加減がその日によって変わります。

 こうした味付けは、椀が下がってきたときにだしが残っていればその味をみて覚えます。それを五、六年繰り返せばやっと味が舌にわかってきます。ですから舌で味わって味覚を憶える必要があるわけで、そういう意味ではたばこは若いときには吸わない方がいいですね。
 辻留では、たばこ、ラーメン、カレー、肉はご法度でした。ラーメンがだめなのは、中華料理は砂糖や化学調味料を使っていることが多いので、それに慣れてしまってはよくないというのが理由です。ものを味わって、舌を訓練する必要があるからです。一人前になってやっと解禁されるのでしょうが、それまでは我慢が必要です。
 私は辻留に修行に入ったときには、「ここでこの仕事を覚えないと一生一人前になれない」という覚悟があったので、「この仕事に精進しよう」と思い込んでました。
 オヤジにたたかれようが蹴られようが、オヤジの言うことを聞く。ものを聞き取る力がたいへん大切です。ただ通り一遍に聞いても、オヤジさんは高級なことを言っているので、側にいても一生懸命聞いていなければ理解できないわけです。今の人は「ここは大切なんだからよく聞いておけ」といっても上の空で聞いていることが多いですがね。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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