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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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料理人
心を込めてつくれば、料理はお客さんの心の中に残る 1

茶懐石料理 和幸
Tさん



 Tさんは、一九三七年生まれ。父親の築地の鮮魚商で三年間修行し、五六年に銀座に進出してきた京都の懐石料理店「辻留」に弟子入りして一〇年にわたり主人の辻嘉一さんから懐石料理を教わりました。
 料亭胡蝶の板前主任を経て六九年に茶懐石料理和幸を開店し、本格的な茶懐石料理を提供しています。また茶会にも出張して懐石料理を提供されています。
 茶道とは、もてなしの精神が凝縮されたものですが、お茶をいただく前に味わう懐石料理には、相手に対する気遣いがどのようにこめられているのでしょうか。

*「そこまで客のことを考えている」という気持ちを料理で示す

 辻留の辻嘉一さんに教わった料理人としての心構えは、「お客様が第一である。どのお客様も差別はしてはいけない。お客さんに頼まれたことは、なんでもできる範囲内でやってみること。やったことがないと断るのでなく、仰せつかったら料理をつくってみるのが、料理人である」ということでした。
 辻さんは茶懐石で初めて京都から東京に進出し、東京店ができてバリバリやっていたころで。裏千家の先代家元もよくやって来ておられました。

 お茶事は、呼ばれたらまた呼び返すわけですが、そのためにはわざわざ茶室を作って席開きをしなければなりません。そういう意味ではお金がかかるものですが、しかしお金がない人はできないというわけではありません。
 高価でない道具でも心がこもっていればいいわけで、その意味では心のつながりが大事なのです。茶の心の中心には、「亭主は、自分で料理をつくって接待せよ」ということがあります。それが一番のごちそうで、どんな人にでもできることですし、心を込めてつくるのが一番大切なんですよ。
 私も、端の方だけかじっても茶の心はわからないので、お客さんに聞いたり、教えていただいたりしてお茶を勉強しました。
「懐石料理」は、昔は「会席料理」だったのですが、それを懐石と書くようになったのは江戸時代中期からだそうです。
禅僧は厳しい修行の中で、腹が減ったのを収めるために石を温めて懐に入れたんだそうです。それを「懐石」と書いたのですが、なぜそれがお茶の料理に転用されたかと言いますと、お茶会は気の合う人を接待する席なのですが、お客さんははるばる遠くからいらっしゃるからお腹がすいているわけです。寄り付きで門を開けて、お客さんにまず喉を湿らせるための湯をお出しして、足袋を変えて服を整えてから、茶室に入ってお茶のしつらえをする中で、濃茶をおいしくいただくために「粗飯ですが」と言ってお出しするのが懐石なのです。
 ですから空腹をしのぐための料理という意味の「懐石」は、「亭主がそこまで客のことを考えていること」が意味として込められているのではないでしょうか。料理をたくさん出されると、満腹になってその後でお茶をいただくときに苦しくてしょうがないということにもなりかねません。ですからほどよい量の料理を、旬の素材で、酒の肴もお出しして、お菓子を食べていただいて、その後でお茶を飲んでいただくという流れが「懐石料理」なのです。

 お茶事でも何でもそうですが、人を接待する時はまずお客様を、お互い知り合いの方に同席していただくように選ぱなければなりません。
 話や性格が合わない人の同席は避ける必要があります。「お茶会にお招きしたい」と皆さんに紹介状を出すのはお茶会の半年も前のことです。招待状をもらった方は、誰が同席するかが招待状に書かれていますから、「あの人に久しぶりに会えるな」と思いながらその日を待つことになります。亭主の方では、畳やふすまを変えたり、きれいにして怠りなく準備を進めます。

 私どもに料理を注文される方は、お茶会の何カ月か前に注文をされます。
 当日の二、三週間前に先方に伺いまして、お客さんや、お道具、料理のお好みについてお話を伺います。お客さんの年齢や、「正客、次客はどの方か」「どのくらいお茶の席に慣れていらっしゃる方々か」「年配者はいらっしゃるのか、その方は正客から何人目にお座りなのか」などなどお尋ねします。料理の内容が凝りすぎいてもいけませんし、分量が多過ぎるのもよくありません。
 道具については、盛り合わせを考えるために拝見します。お献立は旬の素材を考えて、下書きをお持ちしてご相談します。「この季節は鯛の旬だから、明石の鯛にしよう」とか、「あのお客さんは麩がお好きだから、味噌汁の具は麩にしよう」とか、相手のことを考えて吟味します。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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