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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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ジャーナリスト
市民の代理人として取材対象にアタックする 3

日本ビデオニュース社長
神保哲生


*ジャーナリストは取材対象者の味方ではない

 われわれジャーナリストは基本的には、取材対象者に対しては責任は持っていません。われわれが責任を負っているのは読者や視聴者に対してなんです。われわれは広告をつくっているわけではないですからね。
 ですからジャーナリストはある意味、取材対象者に対しては敵対的ですらあるかもしれません。つまり、「取材に応じるも応じないもあなたの勝手です。取材に応じた場合には何を書かれるかわからないというリスクがあります。しかし応じない場合にはもっとリスクがありますがどうしますか」ということなんですから。
 もしかすると取材対象者は、その取材によって反論の機会を与えられているのかもしれないんです。取材を拒否するというのは、ジャーナリストがそれまで取材してきた認識を、自分の言葉で、直す機会を失うということにもつながるわけです。
 アメリカでは、取材対象者に取材する努力をしたことが証明できれば、反論権を放棄したことになるので、たとえジャーナリストが書いた情報が間違っていたとしても、「悪意の不在」として名誉棄損は成立しないという考え方があります。
 つまり、事実であることを確認する努力をある程度すれば、間違いを犯すリスクはどんな人間にもあるので、それを恐れていては民主主義が成り立たないという、ある意味これは「民主主義を維持するためのリスクである」という考え方なのです。

 次に、取材する相手については僕は、無意識のうちに取材対象を二つのカテゴリーに分けていると思うんです。
 ひとつは、事実の判断をするために必要な情報の絶対量を蓄えるための情報源。オフレコ取材もそうですね。
 もうひとつは、ピンポイントで「これが欲しい」という情報を与えてくれる人たちで、こちらの方は名前や顔がビデオの中に出てくる人が多いでしょう。そしてこちらの方はある程度、最初に判断をしているわけです。しかし「ここにはまる人が誰なのか」がわかるまでの取材の方がたいへんです。
 それがなぜ重要かというと、オン・ザ・レコードで公人に取材すると、彼らは海千山千ですからいろいろはぐらかせて答えるわけですが、こちらがまず「量の取材」をしっかりしていれば、「これは彼の本心ではないけれど、立場として言っているのだ」と、きちんと判断することができるわけです。だから相手が本心から答えていることかどうかはということはあまり問題ではないですよね、
 今彼が言ったことが本当かどうかというのは、顔つきや目の色で判断するのは危険です。ウソ泣きだってできるわけですから。だからオン・ザ・レコードの話についても裏取材を十分にして、どのくらい本心から言っているかの真実度をこちらが自信を持って判断できなければ、素材として使う気にもなりません。「今の発言はおいしかったな、使っちゃおう」という誘惑は常にありますが、それは自分自身に対して、ひいては読者・視聴者に対して過ちを犯す可能性があるんです。
 そういう意味では、乱暴に言うと九割は「量の取材」が大切なんでしょう。オフレコ取材やデータベースを使ったリサーチが重要です。

「取材は無条件でなければならない」というのが原則です。僕は取材を厳しく定義していて、「今あなたが僕に話したことは、僕個人に話したのではないと思ってください、僕はパブリックの窓としてここに立っていると思ってください」ということなんですよ。オンレコで話したことは、本人が話している画像を使わなくてもナレーションでその人の発言を使うこともあるわけですから。
 そして取材の前提「僕に話すと"公"になりますよ」ということ。だから、「これは取材行為です」とはっきりさせることが大切でしょう。
 よく週刊誌の記者など、やって来ていきなり話し始めるので、「ちょっと待ってください、これは載せるんですか」とたずねると、「ええ載せます」というので、「じゃあ取材ですね」というふうに確認することがあります。オンレコで話したことはどのような記事のコンテクスト(文脈)の中で使われるのかはわからないんです。書く側に悪意があれば曲げられてしまう可能性もあります。ですから自分が取材に応じる時は、書かれることを前提にした話し方をしなければなりません。

 また、この取材については「ここまでの掘り込みが必要だ」という感覚は、経験則から出てくるものです。取材量が少なくても「これでいける」ということもありますし、あるいは僕がうちの会社の新人の取材を見ていると、自分が詳しくないテーマでも、「ここが甘いな」という部分はカンでわかりますよね。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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