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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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マンション建築コーディネーター
「心の旅」の終着点=オーナー意識に究極の顧客満足がある 2

T社社長
Kさん



 それで、われわれが説明会で提示するケースは、お客様がコーポラティブハウスのオーナーとして参加される以前の「前提条件」として申し上げているものにしか過ぎません。
 ですから皆さんで議論して、「この場所に合うのはこういったコンセプトではないだろう」と意見が一致されるのであればわれわれのプランをひっくり返されても構わないんです。
 われわれのプランは、「この場所でこの建物規模であれば、このようなイメージの建物」ということをプロとしての知識と経験によってご提案しているわけです。このような提案をせず、組合でお話いただいて決定しようとしても、なかなかまとまらないんですよ。
 例えば、「外観をみんなで考えよう」というと、「僕は石貼りがいい」「いや私はモダンなコンクリート打ちっ放し方で」「マンションならタイルが普通でしょう」と意見はバラバラにわかれます。「石貼りなら各住宅が二〇万円ほど値段がアップする」と聞くと、「そんなバブルのような成り金趣味はいやだ」「デザイン自体が気にいらない」と、いろいろな意見が出て話が分解してしまいます。
 そこで、「われわれはコーディネーターとして「とりあえずの前提となるプラン」を示すので、皆さんの合意があればそれに換えればいいですが、合意できなければこのプランに戻って行きましょう」という前提として提示しているというわけなんです。

 説明会では、ペットは「ある程度厳しいルールに従って買うことができます」と説明しています。各オーナーとの面談の時には、「ペットについてはエレベーターに乗せることはできません、三匹以上を買うことはできません、ベランダで毛繕いしてはいけません」という条件を提示します。「あたしはアレルギー体質だからペットはダメです」という人もいるからです。
 次に総会の時に、「ペットについてはこのようなルールでいかがです」かとアンケートを取ります。そして、関係者全員がOKであれば「ペットをエレベーターへ乗せることをができる」ということにします。アンケートにする理由は、総会で賛否を挙手してもらった場合、「あいつが反対したから私の可愛いペットがエレベーターに乗れなくなってしまった」と感情的なしこりが残ることもあるからです。
 つまり「最初にルールとしてそのように提示されているなら、自分としてはしようがない」という風にみんな納得できますから、先に前提条件があるのはたいへん便利なことなのです。そういう形で、われわれがコーディネーターとして前提を出すのですが、議論していただいたほうがいいことはどんどんやっていただきます。

 コーディネーターという立場は、土地所有者や近隣住民との交渉や、組合員同士の間の交渉、また設計者と組合との交渉など、いろいろな関係者の間に入って専門家とオーナーとの家づくりのすべてを調整していく仕事です。素人が銀行と交渉したり、専門用語を駆使するデザイナーと話し合うのはなかなかたいへんですが、われわれは、オーナーの人に「あの先生いかがですか、うまく設計は進んでいますか」などと話を聞いて、「いいと思うんだけど、ちょっと専門用語が多くてよくわからないな」という話があったら、どのオーナーから言われたのかを明らかにせずに、間に入ってデザイナーに注意したりします。
 マンションが竣工してパーティーの席で、「あんたら何をやってくれたの?」とオーナーの方に言われることもありますが、われわれは、トラブルを察知して先に手を打っていくわけで、縁の下の力持ちなのです。
 ですから「何もやってくれなかったね」と思われているくらいの方が、もめごとが起こるよりもよいのではないかと思っています。

*家の設計はオーナーの意識を探るカウンセリング

 素人の家づくりでも、なかにはイメージやコンセプトがしっかり固まっていて、「この素材を使って、この間取りでやってください」とはっきりおっしゃる方がいらっしゃって、このような場合は全く問題がなく進行するのですが、「よくわからないな、お任せしますよ、なんでもいいですよ」なんて言う人に限って、実際の家づくりが始まるとたいへんなことになるんです。

 かなり豊富な知識を持っておられる方がここのところ非常に増えているのですが、雑誌や本からの視覚的なイメージから「このようにしたい」と考えていらっしゃる方は、アイデアを取り入れたり、また元に戻したり、なかなか決まらないことが少なくありません。
 そこでわれわれは、設計のスタートラインに立ったときに、まず「あなたにとって理想の家とは何ですか」「あなたにとって家とは何なのか」という質問をぶつけて、考えるきっかけをつくります。
 すると、最初は「いや、雨露凌げれば、それでいいんですよ」というところから始まるのですが、「子供のことを考えると、仕事が忙しいから家にいる時くらいは子供と居続けられるような所がほしい」とか、「娘がアトピーなので健康素材を使った住宅がいい」とか、「使いやすさを優先したい」とか、「趣味を優先したい」とか、「自分が手を加えることによって愛着を持てる家にしたい」とか、いろいろな望みが出てくるものです。

 こうした言葉は、設計を進めるうえでのキーワードになります。例えば、「広い空間が欲しい」という場合でも、それはワンルームにするという意味なのか、開放性を持たせた部屋にするという意味なのか、いくつかの受け取り方があるわけです。
「子供にとって良い家を」というイメージからスタートした場合でも、「それはどういう意味ですか」と詰めて質問を続けると、「子供となるべく会話できる家にしてほしい」。「じゃあ、リビングを通って子供部屋に行く形がいいですね、それとも子供部屋を狭くしてできるだけ子供がリビングに出てくるようにしますか、あるいは子供部屋をすりガラスにして中の様子がなんとなくわかるようにもできますよ」。
すると「いや、子供に独立心を持たせるためプライバシーは尊重したいんだ」などという返事が返ってきます。「では子供の勉強机と、お父さんのパソコン机を並べて置けるスペースをつくるのはどうでしょう」などとに、オーナーが大事にしたいところを尊重しながら言葉のキャッチボールを続けて行くわけです。

 いろいろな考え方が出てきますが、当然ながら各戸の面積や資金などの制約条件があるのである時点で妥協が必要になります。
 「八〇平米しかないのにそんなに入らない」というところまできたら、オーナーにとって大事なところを整理し、折り合わないないところを切り捨てることになります。
 ある程度イメージが固まったところで、担当の建築家がオーナーが今住んでいるお宅にお邪魔し、現在のお宅の不満を聞きます。実際にお宅に行ってみると、住み方というのはその人の個性や特性を表現するものでして、「私はあまり服は持っていません」という人でも、意外と衣装持ちの人もいます。また「収納は得意だからあまり必要ない」と言っている人でも実際は、「ああ、この人整頓は苦手だな」ということがあったりして、収納を増やすように方向修正したりします。
 質問として便利なのは、「掃除機はどこに置いていますか」という問いかけです。掃除機は案外収納場所に困っている人が多く、リビングの隅っこに置いてあったりします。ですから掃除機の置き場所にはその人の性格がよく出るんです。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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