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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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五〇代婦人服への顧客の要求をすべて満たす総合力を発揮

KO百貨店




*路線をコントロールするのも自分の意志の力

 お客さんのニーズをつかみとるのはたいへん困難なことです。
 われわれはお客さんのニーズを絞り込むため、全店で毎週、レポート&レビューを行っており、その週の問題を話し合い、その結果から三カ月先の商売をどうするかまで、販売員とバイヤーがすりあわせ、必要とされるスピードに対応しようとしています。
 私自身は接客をしないので、お客さんの要望は販売員の人から受け取ることになります。販売員のメモを分析しますが、お客さんのニーズは多種多様です。しかしわれわれはそれを絞り込まなければならなりません。その場合、お客さんの言う通りつくってもダメなケースが多いのです。メーカーからの川上の情報や、トレンド情報などを適当にうまく混ぜて商品をつくりご提供すると、お客さんから「食べてみるとおいしいね」という評判をいただけるような気がします。

 ミセス商品は七割は定番商品で、三割がシーズンごとの商品であり、ここには新商品を投入していかなければなりません。お客さんからのニーズを感じ取るには、単品管理の情報を分析することと、お客さんからのご意見を伺い、売場にできる限りいてお客さんの動きや要望を肌で感じる必要があると思います。半分はデータなどの字面で知ることができますが、残り半分は現場からという感じでしょうか。

 そしてバイヤーはうちのフロアの戦略をアパレルメーカーの担当者に説明します。コートやセーターなど別々の商品についても、お客さんの要望のポイントについては、同じ横串を通す必要があります。一定の枠やフレームをつくって考えなければならないということです。売場が統一感を失い、五目ずしになって崩壊してしまうのが恐ろしいのです。五目ずしは食べたらおいしいけれど、見た目のおいしさは本当のおいしさの半分です。だから買う気になりません。ちらしずしは、具がきれいに載っているのでおいしそうに見えますよね。目指すべきなのはこちらなのです。

 平場であれば、母の日の前後など商品が売れる期間に、「計画に対してどのように商品が動いているか」を判断します。あらかじめ立てた仮説に対して、お客さんがどう判断しているかを検証するわけです。その段階で売上が上がっていなければその方針を止めなければなりません。どこかで線引きをしなければ、売る側の思いだけで続けていても売上は上がらないのです。
 ところがバイヤーは、自分たちが企画してつくった商品ですから、どうしても思いこみがあって続けたがります。そういう失敗があった場合は、バイヤー本人に自分の意志でその路線を捨てさせる必要があります。「自分でやった企画は、自分でやめなさい」という方向にもっていくのが、私の基本です。

*取引先の本気を引き出すのは販売力ではなくて「人間力」

 商品のサイクルは、セーターであれば素材がどんどん変わるので、一つの商品タームは一カ月半から二カ月半です。
 私の立場としてはナショナルブランドも見なければなりません。幾ら当店ではオリジナル商品の売り上げが大きいといっても、ナショナルブランドの売上は六五億円もあります。KO百貨店は単独店に近いので、アパレルメーカーとの交渉能力も必要です。しかし、ここでは二七個も日本一売っているブランドがあるのです。三陽商会さんも、伊勢丹さんを抜いてうちが日本一になりました。
 アパレルメーカーの部長さんは、売れる商品を回す力を持っています。こういう人と飲みに行ったりして、マーチャンダイジングについての論争をしますが、最後は侠気だと思いますね。私は都心有力百貨店の婦人服売場の部長さん八人くらいと、メーカーの部長さんを一人か二人招いた飲み会の発起人をやっています。彼らとしても、百貨店の幹部と一堂に会う機会なので悪くないですよね。そうした場で、私自身の能力や存在感を示すのも、相手の部長さんの力を引き出すことにプラスになっていると思います。

 私は、もともと学校で、体育会のアイススケート部にいたこともあって、相手との信頼関係をじっくりつくるのは不得意ではありません。お互い下手なウソをつけないような関係をつくってしまうんです。当然その相手は、「この人をつかんでおかなければならない」という人でなければなりません。

 いくら売れていても、販売力の数字の部分は交渉力の半分でしかありません。後の半分は、会話の中でホットな自分を色濃く出して、「信頼できる相手だ」と思っていただかなければ、メーカーさんにも本気を出してもらえません。
 地方の百貨店や郊外型店舗に行くと、都落ちと思われますが、その時人生観が大きく変わるんです。お取引先との商売でも、売っている金額が全然違うわけですから、先方の対応が都心の戦艦大和のような店舗にいるときとは全く違います。「これをやっていただけませんか」とメーカーに日参しなければなりません。ですから逆に、郊外店でメーカーさんにお世話になって関係をつくっておくと、担当者の信頼度が非常に強くなります。こういうことは都心育ちの百貨店マンにはなかなか難しいかもしれませんね。

 メーカーさんは自分の担当している商品が、最高の条件で多く売れることを望んでいます。そのためにわれわれができることは、売場のゾーニングです。本来は売れる商品なのにたまたま置かれる位置が悪く虐げられている商品というのもあります。そういう商品を置く場所をきちんと考え、売り続けることで、数字ができてくるというケースもあるわけです。反対に、本当はよくない商品なのにメーカーの販売力で売場のいい位置に収まっている商品もありますが、こういうのにつき合っていると一緒にドボンです。そこを切り分けるバランス感覚が必要です。ヤングが対象の売場の場合は、基本的にショップ(箱)なので、ゾーニングはあまり関係ないのですが。

 最後の最後はメーカー側の行動隊長である部課長とのタイアップがなければうまくいきません。その時はお互い、目を見開いていなければならないと思います。すべてに利害が絡む駆け引きになります。その時にこそ「無」になることができれば強いでしょう。最初から条件交渉をしようと思って始めると、結果として商品が売れた試しはありません。相手は、「こいつはこういう人間だ」とわかってくれるはずです。そのあたりのパワーが重要な要素なのです。
 われわれは、電鉄系百貨店であって、暖簾で商売している百貨店とは別なんです。商品を揃えて日本一売る、だから「KO百貨店に行けば色もサイズも揃う」とお客さんに評価していただけるんです。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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