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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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百貨店
五〇代婦人服への顧客の要求をすべて満たす総合力を発揮

KO百貨店





*ターゲット層の「感覚」をきちんと捉えた接客術

 接客については、まず「接客をしない」というのは最低です。自分の担当するエリアに入って来たお客さんには、まず「いらっしゃいませ」と申し上げて、こちらがお客さんに気づいていることをアピールし、「ごゆっくりご覧ください」という姿勢を示して、お客さんに回遊してもらいます。そうしてお客さんが売場をご覧になっていらっしゃる間に、アプローチの方法を考えます。気になっている商品があるとすると、「その商品はしわになりませんよ」とか、「サイズ違いありますよ」と声をかけます。経験から、「接客してほしくない」と思ってる人はわかります。ですが、「一回は声をかけた方がいい」と教わっています。その後は必要であれば、向こうからお声掛けがあるでしょう。

 若い人に対してとミセスに対してでは、接客の基本的な考え方は一緒だと思うのですが、全体的に「より親身になってほしい」「心地よい接客をしてほしい」と思っておられるのではないでしょうか。ですから誠意を持って対応すると非常に喜ばれます。そういう意味では、たえずキョロキョロと目配りし、なるべく広く売場を見るようにしています。
 混んでいるところが目についたら、さらにお客さんを呼び込んで、活気づけるようにしています。活気がつけばますます人が来るし、それによって客単価が上がっていくんです。一人しかいなければ買っていただけないかもしれないのですが、一〇人いらっしゃればそのうち三人買っていただけるという感じでしょうか。ですから、まず来店していただかないとお話にならないわけです。

 何かを探していらっしゃる感じのお客さんには声をかけてみます。そうすると、喫茶室を探しておられたり、お手洗を探しておられる方もいらっしゃるし、「こういう商品を探している」とおっしゃる方もおられるので、販売員につなぎます。年配の方は、エレベーターを押していても、すぐにエレベーターが行ってしまって乗れないというケースもあります。そういう時はちゃんとボタンを押し続けて、「こちらが来ていますよ」とご案内し、お見送りしてあげるとすごく喜ばれます。このようにして、「またKO百貨店に行きたいな」と思っていただきたいのです。リピーターをつくるんですね。婦人服売り場の平場は、顧客というよりも、「あそこに行けば、私の欲しいものが何かある、お気に入りのものが見つかるはずだ」というファンがいらっしゃると思います。
 また、四階に入ってきた瞬間に、ディスプレーを見て「これなら私の欲しいものがある」と思っていただければと思います。
 婦人服売り場には杖をついていらっしゃっているお客さんもおられます。その方が若いころは、まだ着物の時代だったかもしれません。そうすると、若い人のようにトレンドを追いかけるのではなく、「これなら私にも似合う」と自分の心地よさを優先する感覚を持っていらっしゃるのではないでしょうか。ですから、四階はブランドを前面に出していないし、接客やちょっとした店員の目配りによる快適さをきちんと提供しようとしています。
 ギフトセンターなどで、五〇代や六〇代の人が悩んでいるときは、贈り物の相手のことを根ほり葉ほり聞いてあげて、それに沿って選んであげると喜ばれます。つまりこの年代の人は、対面接客やコンサルティングを求める傾向があるのです。
 いいかげんな対応はよくありません。接客で手いっぱいの時に、他のお客さんが「ちょっとごめんなさい」とお声をかけてきた時、「お待ちください」と申し上げただけで「無視された」というクレームをが来ることもあります。「何でそちらの人には懇切丁寧に応対しているのに私のことは無視するの」と思われているので、「自分は手一杯なので少し待ってください」ともうひと声添えるか、他の販売員につなぐべきなのです。
 ですから、ポピュラープライスで品出ししていても、お客さんは接客を求めておられます。気がついたことはすべて手を差し伸べなければなりません。そのようにして、来られた方の気持ちがウキウキするような売場をつくり、支持していたければ、売り上げを上げていけるのではないかと思っています。

婦人服部長
Mさん

 Mさんは三年前に異動してきて、初代婦人服部長の土井さんの方針を受け継ぎ、このフロアの責任者として活躍中です。KO百貨店の軍団長は、この日も体躯からやる気をみなぎらせていました。

*経験に裏付けられた信念がないと人と反対のことはできない

 並のことでは、お客さまの支持を得ることはできません。うちはコート三〇〇〇円、ワンピース二〇〇〇円という値段で出しています。セーターでもブラウスでも、フォーマルでも肌着でも、自家需要からお出かけ着までそろえることができます。値段は安く、かつクオリティーやセンス、トレンドは百貨店のレベルに合わせているわけです。
 小売業にはいろいろ流儀があると思いますが、適正や性格を考えたときに、私は「自分を捨てることができるか、真っ白な状態になっていられる強さがあるか」が問題だと思います。私は入社して三〇年経ちますが、その間に小さな専門店と、聖蹟桜ヶ丘にある郊外店で一六年働いていたので、こうした都心のターミナルの百貨店とはほとんど業種が違うような環境にいました。三人の副部長も一緒です、新宿育ちの副部長はいません。

 エネルギーと情熱と、スピード。最後まで完遂するという、地べたを張ってやってきた人間の精神的な強さはあると思います。ただし、私の場合突っ走ってしまう傾向があるので、誰か支えてくれる人間が必要だなとは思いますが。
 三〇〇〇円セーターを始めて今年で二年目なのですが、始めたときは、「スーパーみたいですね」とさんざん言われたものです、その時も、「今に百貨店の売り場はこうなるんだ」という信念でやってきました。
 私のこういう自信を支えているのは、今までの経験だと思います。専門店ではヤングもミセスもやり、ミセス商品で大失敗してたいへんな在庫を抱えたこともありました。聖蹟桜ヶ丘のKO百貨店では、世間のトレンドに乗ってミセス商品の売り場の若返りをやり、大失敗してしまいました。このときの経験も、「他のみんなと同じことをやったらダメなんだ」という信念につながっています。

 人には、性格、生い立ち、経歴というものから来る「自分はこうしたい」という意志があります。人と反対のことを、信念をもってやるべきです。高島屋が新宿にやってきた時、部下は動揺していましたが、「独自性が必要なのだ」と自分で気づけば、それはその人の肥やしになっていると思います。そして人と反対のことをしなければならない状況になった時に、「おれはあの時はあそこまでやったことがある」という過去の経験が、自分を支えてくれると思います。
 四階を改装するときも、売場の位置自体は異動させずそのままにしました。改装を行う場合何か目玉が必要で、レイアウトを変えるというのは分かりやすい目玉なんです。それをやらなければ、世間体が悪いとか格好悪いと思い、つい手を出してしまいがちですが、自分を無にしたときはそういう謝った判断をせずにすむのです。



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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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