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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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百貨店
五〇代婦人服への顧客の要求をすべて満たす総合力を発揮

KO百貨店



婦人服第2部 バイヤー
Sさん

 Sさんはセーターとブラウス担当のバイヤーです。
 婦人服二部には一〇名のバイヤーがいるそうです。バイヤーには大きく分けると、売り場づくりや商品の企画を行い、アパレルメーカーのマーチャンダイザーと共同して必要な商品をつくる人と、ショップでメーカーから商品を仕入れる手続きをしている人がいます。

*コンピューターにはできないニーズ解析の手法

 私は、外商二年、ゴルフ売場三年、バイヤー歴が七年です。
 バブル時代は「ものを仕入れれば何でも売れた時代」でしたからメーカーにお任せの百貨店が増えてしまい、百貨店は自分で品揃えができなくなっていました。私が展示会などに行って、「これいいですね、発注しましょう」と言うと、メーカーの人に驚かれたくらいです。しかしバブル崩壊以降、現場は「今まで売れていたものが売れなくなったこと」を肌で感じ始めました。そして、「これでいいのだろうか」という疑問が出てきました。

 今は、百貨店によってお客さんが違う時代なので「顧客をどう絞り込むか」を考える必要がありますが、当店では「ミセス対応」に主眼を置いています。われわれがお客さんのニーズを知るためには、まず前の年のデータを読みます。ミセスのファッション衣料はかなり安定しているので、これにトレンド情報をつけ加えて判断します。ヤングの場合は、トレンド情報の比重を高めなければなりません。コンピューターで単品管理を行っており、「今日は何が何枚売れたか」がわかるし、それに基づいて「フォロー発注をかけるかどうか」なども判断することができます。しかし、百貨店の場合型番やサイズ、色が非常に多く、しかも短サイクルで回転するので分析はかなり難しいです。
 ショップだと、メーカー側の生産スケジュールに主導権を持たれてしまうのですが、平場で売る特別企画品などは、ナショナルブランドの力を借りて、うちの方で「この時期にこの商品をやりたい」と考え、素材や色を希望して、先方のデザイナーと相談しながら商品をつくっています。平場では、価格の安さと価値のバランスに注意し、一年を一一タームに分けるほど細かくシーズン性に配慮しています。

 商品をつくるには、まず顧客ニーズの汲み取りを行います。コンピューター情報のデータ分析は当然として、データに現れないことも考える必要があります。データに出てくるのは売れたものの情報だけですが、例えばお客さんが黒色と赤色とで迷って、結局赤の方を買ったというような「どういう買い方をしたのか」ということはコンピューターのデータには現れないのです。ですから、自分の目で確かめたり、販売員から売場情報をもらったり、あるいは「これが自分の店の代表的なお客さんだ」という人を売り場で追いかけて何を買うか確かめたりして、その上で結局、最大公約数を発見するのがポイントになります。
 例えば、ツインニットで、カーディガンとセーターがセットになっている商品があったのですが、お客さんは「セーターだけほしい」とか「違う柄との組み合わせが欲しい」と言われるケースがあることを発見したりします。お客さんに選択の権利がないのが問題だとわかったので、バラ売りする企画にしてみると、これがまたヒットしたりしました。

 ショップの売れ筋情報との連動も考えに入れます。
 サイズも重要で、ミセスは体形が変化しているので、アジャスター付きパンツなども売れます。パンツの股下は、裾上げに一〇〇〇円くらいかかります。そうすると、本体を二〇〇〇円で買ったとしても裾上げを含めると三〇〇〇円かかることになってしまいます。だったら、標準サイズのバリエーションをそろえるようにすれば加工料が取られません。
 われわれは「モンペなんかダサイ」と思いがちですが、お客さんの声を聞いてみると新宿区内にある東京女子医大などの病院に午前中に集まって、その帰りに毎日ここに寄られる方が圧倒的に多いということがわかりました。ですから、「診察の時に苦労しないで着脱可能な服が欲しい」というご要望があります。「であれば、いったい幾らなら買っていただけるのか」というふうに考えていくわけです。
 この売り場で最初に提案した旅行着についても、百貨店に求める服というのはすべて「写真に撮られることを想定して着る服」という旅行着のレベルなわけです。そこで、旅行というシーンを考えて、「軽くて降りたたんでもしわにならず、撥水性という機能も備えたトラベル着」というふうに打ち出して、そこを強調してお客さんを惹きつける工夫をしたわけです。
 機能性に目をつけると、家庭で洗うことができてクリーニングに出さずにすむ商品であるとか、売り場づくりの参考にした巣鴨のとげ抜き地蔵商店街の定番商品である健康肌着などもあります。
 陳列にも気を遣っています。陳列棚は、普通の売り場より低くしています。また若者向けのブティックでは、棚に商品を二、三枚重ねるだけでスマートな感じを出していますが、百貨店では商品の量感が必要です。しかし、セーターは何枚も重ねると重苦しい感じがします。そこで、スチロールの芯を中に入れて、五枚一〇枚重ねてもきれいに見えるような工夫をしています。こうした売場の演出も、商品の仕込みと並んで集客のための装置なのです。友人とゆっくりとそぞろ歩き、休めるスペースもつくっています。そのように人を賑わせる仕組みと仕掛けをしているのです。人が集まらないところに商売はないのです。


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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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