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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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百貨店
五〇代婦人服への顧客の要求をすべて満たす総合力を発揮

KO百貨店




 現在、「ミセス路線」で好調のKO百貨店ですが、八九年頃にそれまで二階分だった婦人服売り場をもう一階増やしました。
 バブル景気で消費が好調だったので、高級路線を進めたのですが、バブル崩壊とともに徐々に売り上げが落ち始め、九三年にはKOストア社長だったK氏を社長として迎え、対策に乗り出しました。ところが、売り上げが落ちている九六年、T島屋が新宿南口に巨大店舗をつくり進出してくることがわかりました。KO百貨店は売り場面積四・一万平方メートルと新宿では最小の部類に入る店舗規模しかありません。
 これには、みんな相当な覚悟を固めたようですが、迎え撃つK社長は「新大衆路線」という戦略を打ち出しました。
 百貨店とスーパーマーケットの中間のプライスを狙ったポピュラープライス(だいたい普通の百貨店の三割引き)と、便宜性を強く打ち出した商品で、顧客にKO百貨店のアイデンティティーを訴えるという方針です。

 T島屋対策の商品政策として、伊勢丹を初めとする新宿に立地する他店は五〇代のミセスの売場をさらに若返りさせたのに対して、以前からミセスに強かったKO百貨店は、さらに「五〇代そのものの等身大の服」に品揃えを変えていきました。まず旅行をテーマにした低価格品をセーター売り場から発信し始めたのです。
 顧客政策としては、五~六〇代以上のお客さんに対して「見やすく、選びやすく、買いやすい」売り場をつくるため、ゆっくりお買い物できる環境構築を心掛けたそうです。
 また、リピーター率を高めるため、お客さんへのインセンティブとして、礼装のコンサルティングや、「正しい下着の付け方セミナー」をお客さんをモデルにして行い、お客さんに友達を連れてきてもらえるような心配りをしたそうです。

 

 このミセス路線の新しい四階婦人服売り場は、九六年にオープンしました。それから五年間、売上はおおむねプラスに推移し、百貨店業界全体の売り上げが落ち込み続けている中で、つねに前年実績を切らずに伸びています。KO百貨店の中で一〇%の面積しかない、四階の売り上げは全体の三五.六%を占める一〇八億円ですから、婦人服売り場の健闘は売上や利益の維持に大きく貢献しているようです。
 また、メーカーとのタイアップを含めた半オリジナル商品の売り上げ比率が二五%あるというのも非常に大きな特徴です。他の百貨店では多くて一〇%、たいていは二%程度しか自分たちのお客さんに向け商品の開発はやっていないようです。
 普通のナショナルブランド商品も、お客さんが入ればその数に比例して売上は上がるわけですから、お客さんの来る売場をつくり、商品をつくることが百貨店にとって大切であることがよく分かります。

 百貨店の売り場は、メーカーから来ている販売員が担当しているショップ(箱)の部分と、平場から成り立っています。
 驚かされるのが、平場の横で常時セールをやっていること。お客さんに企画を比較してもらうようになっています。エスカレーターの真ん前で、いつもセールをやっている百貨店は珍しいでしょう。隣で三〇〇〇円のコートを宝探し的な感覚で漁っているお客さんの横に、三万六〇〇〇円のコートがあるという感じです。しかし「三〇〇〇円のコートではもの足りないな」と思ったお客さんは隣のコートに手を伸ばしますから、結局両方売れることになります。

 この階には、ブランドのショップを一つつぶして、休憩所をつくっています。休憩所は通路からの視線をさえぎる大きな樹の幹があり、その向こう側のスペースでちょっと休憩をしたり、一服したり、荷物の整理をすることができます。自動販売機で飲み物も飲めるのですが、なんとこの休憩場の横は喫茶店になっているのです。普通なら、自動販売機を置かずに喫茶店の売り上げを増やそうと考えるはずなのですが、そういう発想はなさそうです。また、売場の周囲に椅子を三〇〇脚置いて休息できる場所を確保しています。

 売場は、そぞろ歩きができるように、メインの導線は二メートル半の幅を取ってあります。バブルのころの売場は間接照明だったそうですが、それは取り外して見通しの利く明るい売場をつくり、平場でも商品がフェースアウトする(客の視線に晒される)ように、什器も工夫しています。
「POP日本一の百貨店を目指そう」という掛け声のもとにプライスカードもきちんとプリンタで印字しており、最初は「スーパーみたいだ」と揶揄されたようですが、今ではすっかり定着しています。これもお客さんへの心遣いかと考えることができます。



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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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