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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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自動車の運転における「慮る力」2

安全運転中央研修所研修部 総括代表教官 Tさん

■対人理解……相手ドライバーの心の動きが読める

 運転に集中するということは、「心を向ける」ことなのですが、今は電車の中で携帯電話をしたり、床に座り込んだり、自分にしか心を向けず周りに目配りしない若者が多い「ジコチューの時代」です。
 以前であれば、マニュアル車だったので、ギアチェンジにもいちいち注意が必要でしたし、道路も悪かったので穴を避けるなど運転操作に意識を集中する必要がありました。しかし今はパワステやオートマチックができて車の操作は簡単になり、道路事情もよくなりました。無意識の中で運転の動作がすべてできるようになったために、ドライバーの危険に対する感受性が薄れているのです。危険を察知できなければ、そのままのスピードで突っ込んでしまいます。
 事故を起こした人に話を聞くと十人が十人、「思いがけないところで急に曲がって来た」とか「割り込んできた」と言い訳します。しかし、車は走るか曲がるか止まるかしか選択肢がないので、車の動きを予測することは十分可能なはずです。危険の予測ができていない、「相手が何を考えているか」を読めないていないのです。

 運転者は、まず「こちらの方向に動こう」と考えてそれから身体が動くのです。だから心が動いた時点で車が微妙に動いている。ウィンカーを出すのはその後のことなんです。
 ベテランドライバーは、周囲の車のドライバーの「心の動き」を、車の微妙な動きから直感的に読みとっています。急いでいるドライバーは、アクセルワークやハンドル操作、加速減速などの動きがせっかちになるので、そこからドライバーの心理状態を読み切って、ウィンカーを出す前に対処しているから、危険にあうことが少ないわけです。
「もしかすると」といつも思っていれば、危険を避ける操作までの反応が早くなるはずです。もし車のスピードが半分に落ちていれば、ブレーキの制動距離は四分の一に短縮します。
 運転に集中していないから反応速度が遅れるし、車のスピードが速いままで危険に突っ込んでしまうわけです。
 相手のドライバーの心の動きを読むのは、ジコチューではとても無理なんです。でもバイクの場合、車線を変更するには周囲の車の動きを見ていなければ危ないので、ライダーは必ずそれをやっていますわ。

■セルフ・コントロール……集中力

 初心者の場合は、意識して運転操作をしていますが、なれてくると無意識に運転操作をやっています。そうすると運転に集中できるので周囲の状況に目を配れるようになる。モノがよく見え、全体を見ることができるのです。
「見る」という行為は、ただ前を見ているだけではダメで、心が向いていなければなりません。目でモノを見るのでなく、「心で見る」ということ。目は心の窓であり、人は自分に興味がないモノは認知しないんです。

 集中というのはリラックスをしている状態のことです。「今から運転するぞー」と、気持ちが前に向いている状態。だから全体を見ることができて、人の動きや周囲の車の危ない動きが察知できるようになるわけです。でもこれは「やれやれ」とソファに座っているような脱力状態とも違うんですよ。

 リラックスには、物理的な面と心理的な面があります。
 リラックスしている時は、「力を抜いていて、気が前に向いている状態」です。
 ちなみに「脱力」というのは、「力が抜け、気も抜けている状態」
「緊張」は「力が入っていて、気が抜けている状態」のことです。緊張していると能力が発揮できないので物事はうまく行きません。
 気が入っている場合では、「こうしよう、ああしよう」という自分の意思があるわけで、これから自分がやろうとしていることに心が向いているのです。

 すなわち運転するときには、「構え」が必要です。これは「意識する」ということで、武道の言葉です。心を向けていることでしょう。もしドライバーすべてにこうした「構え」ができていれば、事故の数は三分の一くらいになってもおかしくないと思います。
 こうした心の作用は、普段の文化的生活の中では忘れていることです。でも、「心の力を使う」というのは可能なことです。普段は「心をどこに置いているか」を忘れて、本来われわれが持っている能力を使っていないだけなのです。
 心を向けるだけで周りも見えてくるし、目配りができる、これが「集中している状態」です。緊張しても物事に執着してしまうだけです。
 「ハンドフリーの携帯電話なら運転に危険がない」と思っている人もいますが、ちょっと込み入った話になってくると心が話の方に向いてしまうので、集中力が途切れてしまいます。ですから物理的に手を離して運転するのが危ないのではなく、運転に心を向けているかどうかが問題だとわかります。



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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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