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「慮る力」単行本 人間力とは慮る力

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自動車の運転における「慮る力」1

安全運転中央研修所研修部 総括代表教官 Tさん

 中核都市であれば、街の中心部の道路というのは、自動車の交通量が多いため三車線もある広い道路になっていると思います。そこを朝夕のラッシュ時には車が道を覆い尽くして走っているわけですが、しかもみんなただまっすぐ走っているだけではなく、自分の行きたい方向にてんでバラバラに車線変更をしています。ドライバーの視界は限られていて、車の動きも限られているにもかかわらず、そのように密集して走っている時こそあまり事故は起こらないものです。
 それをみんな当たり前のことだと感じていますが、よく考えるとこれはもの凄く複雑な調整を、何人ものドライバーの間で行っていることになります。若葉マークのドライバーであれば、そうした混み合ったところに入っていくには多少の恐怖感を感じるものですが、慣れてくればまったく自然に運転することができるのはなぜでしょうか。運転に慣れるに従って、「どのように周りを意識すればよいか」がわかってくるから、自由自在に他の車との接触しないだけの距離を取りながら走れるようになるのです。
 運転時のドライバーの意識について「運転の達人」に聞こうと、茨城県の太平洋岸にある安全運転中央研修所を訪ねました。

*「構え」があれば周囲のドライバーの心理が読める

 安全運転中央研修所は、特殊法人自動車安全運転センターが建設した安全運転教育を総合的に行う施設で、一周五キロの周回路の中にモトクロスコースや模擬市街路、宿泊施設を備えている大規模施設です。全国から受講者が指導員の資格取得などのために集まっています。
 総括代表教官のTさんは、本田技研工業からの出向者です。本田技研工業では、昭和四五年に安全運転普及本部という組織が、創業者の本田宗一郎の命令でつくられました。本田はその五年ぐらい前から、白バイ警官に対する運転技術の講習を警察庁から委託してやっていたわけですが、鈴鹿サーキットの中で本格的な指導員の養成を行うために作られた組織だそうです。主にホンダの社員や、販売店の人に運転について教えていたそうですが、後に営業車が多い電力会社やガス会社、郵便局、運輸関係の会社、高校の教員などに対象が広がってきました。
 ホンダが参戦していた自動車レースは、安全の極限を追及したものです。なぜなら、安全マージンが大きいとレースに勝つことができないので、勝つために常にギリギリの線を追求しているからです。そこでレースで培ったノウハウ、知識をベースにして二輪車に対する安全運転の講習を始めたわけです。
 それが今度は自動車に対する安全運転講習に拡大するのですが、最初はなかなか理解されなかったそうです。なぜなら、二輪車は転ぶと危ないので安全運転を意識しますが、「四輪は転倒しないから安全だ」というくらいの認識しか一般にはなかったからです。確かに、自動車が小さな事故を起こした場合は本人にケガはありません。しかしこれは自分中心の発想でしかありません。自動車のドライバーは被害者にはなりませんが、加害者になってしまうのです。

■自己認識……自分は周囲のドライバーに助けられている

 最近、「棺桶型事故」といって、自動車の乗員の死亡事故が増えています。車対車、車対立体障害物の事故です。最近ではABSやエアバッグが装備されるようになって、車の安全性は昔に比べると格段に良くなっており、本来なら死亡事故や死傷者数は減っていてもおかしくないのです。ところが実際の事故は減るどころか増えている。これは、車の安全性が向上する以上に、ドライバーの運転技能が退化していることを意味するのではないでしょうか。
 みんな「運転は誰にでもできるもの」と思っています。確かに、二〇年前であれば、履歴書に「特技」として書ける時代でしたから運転は一部の人の専門知識、特別な技量であったわけです。しかし現在では、国民皆免許の時代です。中にはサンダルや裸足、ハイヒールで運転する女性や、化粧をしながら運転をしてる人、子供を胸におぶって赤ん坊をエアバックがわりにして運転している女性ドライバーすらいるという状況です。彼らは「運転とは操作である」と勘違いしているわけです。

 確かに、運転操作は一見単純に思えます。

走る=アクセル
 曲がる=ハンドル
 止まる=ブレーキ
 だけの操作ですから。しかし、これができるだけでは一人前ではない。本当の「運転」はあらゆる道路環境に合わせた高度な能力が要求されるわけで、運転は、本来は難しいことなのです。周囲の状況によって、情報の取り方や注意の配分の仕方が違ってくるからです。
 料理でも、煮炊きは誰にでもできますが、本当に食材の味を引き出す料理は並大抵ではできません。料理では、「このレベルでよい」と妥協すれば、それ以上の腕前の向上はありませんね。料理ならそれで良いが、運転は命にかかわります。

 運転の下手な人は、自分が周囲のドライバーに助けられているとは意識していません。しかし本当のところは、ドライバーは周囲の車の動きを察知して、減速して割り込ませてやったり、追い越させたりしているのです。
 それを意識していなければ、自己中心的な動き方をして、周囲に迷惑を掛けてしまいます。しかも本人は、自分が迷惑を掛けているとは思っていないのですから始末に悪いです。



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『慮る力』 お断り この本の目的は、純粋に「ビジネスマンの意識」について論じたものであり、いかなる商品・サービスの購入、団体への加入をも推奨するものではありません。また本書は、あらゆる商品・サービスの宣伝、宗教・政治など諸団体の活動とはまったく無関係です。この本は2001年に取材したものであり、内容が古くなっている可能性があります。

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