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『慮る力』講演会

無から有が生み出される瞬間とは


 僕はこういうふうに思っています。健全な心と価値観を持っている人は自分の能力や技量に応じて、仕事や、あるいはそれ以外の社会参加を通して他人の心に訴えかける努力をするべきだと思うんです。
 どうしてかというと、さっき言ったビル・ゲイツみたいに仕事やいろんな社会参加を通して、相手の心に訴えかけることができるのは、人間が持っている無限の可能性だと思うからです。

 すごいことだと思います。相手の心に訴えかけることで相手の心にプラスになったら、そこに価値が生み出されるわけです。それによって自分自身も満足できるわけなんです。まさに無から有が生み出される瞬間ですよね。
 努力を続けることで、自分自身が人間的に成長することもできるわけです。それが人と人とのつながりの基本なのではないかと思うんです。こちらにいらっしゃっている方に、視覚障害者の方がいらっしゃいます。皆さんは「自分は他人に頼る立場だ」と思われるかもしれませんけど、僕はそうじゃないと思うんです。
 「自分は一方的に頼っているんだ」と思ってしまっては、逆に「やっぱり頼りたくない」という気持ちが働いて反発したり、あるいはそれが相手に負担感を感じさせることになると思うんです。そうじゃなくて、お互いにやっぱりもたれ合っているところってあるわけです。
 この本の中で病院のお医者さんの精神科医のケースがあるんですが、彼のところに、例えば2年間ずっと毎週通い続けているアルコール中毒の人がいて、彼は先生と会わないとまたアルコールにおぼれちゃう。
 だから先生を頼って精神的な杖にして生きているわけですけれど、先生のほうも、「いや、でも僕もやっぱり彼らがいないと、家族みたいなもんだから」と言い方をするんですよ。そういう患者さんが20人くらいいるらしいんです。前々回に和田秀樹さんがここにやって来て、同じことを言っていたと思うんです。精神障害者のキャンプにお医者さんが参加できなくなって、それが嫌だって泣いたお医者さんがいるという話をしたと思うんですけれども、お互いに先生も患者を頼りにしている部分がある。


 つまり「自分は頼っている」と思うのではなくて、自分も何かできることがあるわけです。それはいろんな形で、精神的な形でも。そういうふうにお互いの心で通じ合うことが貴重だと僕は思います。そのために必要なことは何か。最後にもう1回繰り返しますけれど。リラックスして相手によく注意を向けて自分を無にすることですね。
 そうすれば相手の行為を無理なく、素直に受け取ることができると思うし、相手を尊重してお互いが支え合えるのではないか。そういう自然な関係をつくることができると思うんです。これをもって「慮る力」というお話を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございます。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

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