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『慮る力』講演会

お茶は純粋に他人のためにたてる


 最後に茶道はどうなっているかというのを見てみたいと思うんです。
 僕は、実はこの話を千宗室さんのところに聞きに行くまで、茶室に入ったこともない人間だったんで、1回お茶のお師匠さんのところに行って茶室に入ってみて、「こういうことをするのか。一体これはなぜなんだ、よくわからないな」というふうに思いながら千宗室さんのところに行って話を聞いてみたんですけど、そのときのお話をしたいと思うんです。家元はこういうふうに言うんです。「お茶は自分のためにたてるんじゃなくて他人のためにたてるんですよ」と。

 あくまでもてなしなんです。茶事でお茶たてますけどお客さんのためにたてているわけであって、亭主は自分では飲まないですよね、ですからそれは「純粋にあなたのためにを思っている」というのを表現しているわけです。だから茶事にはいろいろなルールがありますし、またもてなすために大変な準備があります。掃除しなきゃいけないし、道具はどれにしようかなとか、掛け物とか花とかいちいち工夫をしなければなりません。でもその工夫はお客さんのことを思っている亭主の気持ちをあらわしているものなんです。
 そういう思いやりがなければならない、またお茶の世界では思いやりにはさりげなさがなければならないみたいです。おれはこういうふうにしてあなたのことを考えてるんだという、押しつけがましい部分があっちゃいけないと。
 そうじゃなくて私はこういうふうにさりげなく、でもあなたのことを考えてるんですよというふうに、亭主の姿勢で示して、招かれてるお客さんの方もあなたが考えてるもてなしはこういうものですね、というふうなことを自然にすうっと受け止める、お客さんと亭主がすうっと自然に一体化するという、そういうふうなのがお茶の中では望ましいんですよということなんです。1歩ずつ歩み寄るということです。
 上司と部下の関係でも、家族でも摩擦が起きているところってあると思うんですけれど、1歩ずつ譲り合う、1歩ずつ歩み合うそういうふうなことがあればいい、そこに必要なものは思いやりの心なんです。お互いを思いやる。
 何を思いやるのか。相手は自分と同じような心を持っている人なんですと。だから自分が心が痛いときには相手も痛いんです。

 ですから相手の気持ちを考えて行動する、そしてそのときに自分の気持ちもちょっと抑える、あるいは相手を思いやった行動をする、そういうことが大切なんだと思うんです。お客さんが緊張している場合には、お茶の場合はお客さんの気持ちを揉みほぐしてあげて、お互いリラックスをすると。あなたのためにこのお茶をおいしくたててお菓子も用意しました、あなたにこの一碗をささげますと言うから、お客さんもありがとうございましたというふうに受け取ることができると。
 お茶はそういう意味じゃなかなかいい道具だと思うんです。お茶を出してもらって「おれに茶を出すのは当然だ」なんていうふうに思ってるんじゃ話になりませんよね。出してもらったらありがとう、というふうに自然に言えると思うんです。

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