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『慮る力』講演会

「自分は、会社の利益よりお客さんの利益だ」


 それで、そうはいいながらもビジネスですから、ちゃんと葬儀の進行とか費用は、理解して納得してもらわなくてはいけないんですが、もうしつこいぐらい繰り返して説明をしなくてはいけないと。ところが気が動転していますから、みんなうなずいているだけで、ほとんど理解をしていないこともあるんです。ですから説明をして了解をしてもらったことは、ちゃんとメモを取って、手書きで文章にして残しておかないといけない、というところも仕事であり、また気遣いの1つでもあるということです。

 それでも全然取り乱している人というのは、もう親戚の人と相談してやるしかないというケースもあるわけですが、彼自身は「本当に遺族の気持ちを反映している葬儀をやりたい」というところに非常にこだわっていますね。やっぱり世話好きな親戚の人が出てきたら、その人が思うように葬儀を取り仕切ってしまうわけですけれども、親戚の人にやってもらうと本当は例えば「ここのお墓の隣に入れたかったのに」とかいうのがあってもそれは反映されないようなこともあるわけです。ですから、そういうのは何とかフォローするように、彼は立ち回りたいと思っているということです。
 そういうふうに心が弱っている遺族ですと、それにつけ入るということ簡単にできるんです。それはやってはいけないというふうに、彼は自分をすごく戒めてまして、それはまさにプロとしての職業倫理なわけです。

 お医者さんの場合だったら、「ヒポクラテスの誓い」というのがあって、やはり患者さんの利益をはかって行動をしなくてはいけない、弱みにつけ込むようなことがあってはならないという、そういう倫理があるわけですけれど、やっぱりプロである以上は相手のことをとことん考えて仕事をし、また相手の利益を守らなくてはいけないわけなんです。そういう部分が今非常にゆるくなってきているな、というふうに僕は思います。プロがだんだん減っているというふうな気がするんです。

 では、どういう考え方がプロ意識の根っこの部分にあるかということですけど、彼はこういうふうに言うんですね。お葬式が悲惨な状況であればあるほど、頑張ろうというふうに彼は考えると言うんです。とにかく心底そういう悲惨な状況のご遺族には同情すると。
 「もし、あした自分が死ぬんだったら、会社の利益のために、例えばちょっといい仏壇を使うとか、そういうふうなことをするよりも、あのときあのご遺族に満足を与えることができた、ああよかったなというふうなことの方が満足できる」と、「自分は、会社の利益よりお客さんの利益だ」と言うんです。だから彼自身は「自分は競争には全く向いてない人間です」と言っていました。確かにそうだと思います。ですけれど、そういう人も世の中には必要なんだと思うんですね。
 その葬儀がすごく悲惨なケースだったらば、もう遺族の人は気が動転してますから、彼が一生懸命仕事しても、お客さんはよろこんでくれるということはないんです。むしろ気がつかないんですね、彼がやっている気配りには。むしろ安らかに大往生をしてもらった雰囲気の人の方が、「いやあ、よくやっていただきました」というふうに感謝してもらえるというふうなことなんです。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

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