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『慮る力』講演会

間違いがあってはならない仕事


 お客さんのことを1番慮らないといけない仕事って何かなと考えたんですが、葬儀社という仕事があります。お葬式をする仕事です。皆さんも当然、一生のうちに何回かは、かかわられることになると思います。
 公益社という会社があります。これは東証1部上場の大阪の会社ですが、世田谷にある営業所で当時入社6年目の実直そうな青年のお話を聞きに行きました。

 この公益社という葬儀社。非常にユニークな会社で、葬儀はどうも料金がよくわからないということがあるんですけれども、この会社は最初から100円単位で金額を出していて、それがおもしろかったので僕は結構前から注目していたんです。
 この人は年間に50件ぐらい個人葬、社葬とかではなくて個人のお葬式を取り仕切っておられるという営業の方です。どういうふうな仕事をするかというと、遺族から連絡が来まして病院かご自宅に伺って、遺体を安置所に持っていきまして、葬儀の日取りとか内容とか費用を決めて、葬儀では司会進行をしてお客さんの誘導をやって、お骨の安置までやって、お墓や四十九日や法事などについての窓口をやるという一連の流れすべてをやる人なわけです。

 で、この人が何で葬儀社に入ったかということからお話を伺ったわけですが、彼は中学生のときにお母さんが亡くなって、大学3年生のときにお父さんが亡くなって、両方喪主をやらなくてはいけなかったと。そのお葬式をやったときに、やっぱりお金がよくわからないというのがあって、でも、その忙しい中で葬儀社の言うがままにやらなくてはいけなかったので、あまりにも気遣いがないではないかという思いがあったみたいです。
 それから、例えば出棺直前に「棺の中に何か入れたい物はないですか」と葬儀社の人に言われて、そんなこといきなり言われたってわからないわけですよ、ですからますます取り乱してしまうわけです。そういうところが原点にあって、もし自分が葬儀社に入って司会をやったならば、もっと「喪主の立場としてこうしてほしいのではないか」というふうなことを、ちゃんとやってあげることができるのではないだろうかという、そういう動機で葬儀社に入った人なんです。


 彼が言うには、まずお葬式の状況になったら、遺族はとにかくすごい混乱状態にある、気が動転しているわけです。精神的に非常に不安定になっている。看病疲れの人もいますし、いきなりそういう不幸に見舞われた人は、どうしていいかわからないということがある。
 うろたえているわけでありまして、そうするとそういう中にあってそのご遺族に満足していただけるような葬儀を出すためには、何をしなくてはならないのかというと、本当にちょっとした気遣いが大切だと言うんですね。
 例えば、病院から式場に直行する場合も、自宅の前を通るコースに変えてあげるとか。お葬式の日に晴れていただけでも「晴れていてよかった」というふうに思う、少しでもいいことがあったらそれにあやかりたいと思うのが、ご遺族の心理なのだと。だから、逆にそのときに自分が致命的な失敗をしたら、それはもう一生遺族の心の中に残るんだから、間違いがあってはならないと彼は言うわけです。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

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