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『慮る力』講演会

「心の力」は存在するか


 つまり自分の気持ちを集中させないと、相手の気持ちを読むということができないわけです。
 ということは、相手の気持ちを読むためには、自分自身の心に気を配る必要があるわけですね。
 それはどういう状態なのかというと、運転でいうとリラックスして運転するということなんです。リラックスってどういうことかというと「やれやれ」と脱力状態になっているのは、これはリラックスとはいわないんです。リラックスというのは、力は抜けているけれども気が前に向いている状態です。「これから運転するぞ」と思っている状態。
 このときに人は能力を発揮できるんです。相手を見て相手が何を考えているか知ることができるわけです。

 脱力というのは力が抜けているし、気も抜けている状態なんです。緊張している状態は、力が入っていて気が抜けている状態なんです。そういうときは自分の持っている能力は発揮できないから、緊張していると自分がやりたいことばっかりが前に立ちますから、周りの状況がわからないんです。
 例えば、急いでいるときは一生懸命、前のめりに歩いていますから、つまずいたりしてしまうと。何か「向こうに行きたい」ということにとらわれるんじゃなくて、緊張せずにリラックスして、自分がこれからやることに、とにかく心を向けるべきなんですね。そうすれば観察力が上がって、感受性も良くなるということだろうと思うんです。
 これは要するに「構え」というものなんです。構えは武道の言葉ですけれど、構えをつくるのは結局、意識をすることです。相手のことを考えるとか、状況を考えるという意識をするということです。僕が取材した安全運転センターの人によりますと、もし、すべてのドライバーにこういう心の構えができていたら、事故の数も3分の1ぐらいに減るんじゃないかというふうに言っていましたね。僕もそうじゃないかと思うんです。

 運転を教える教官の人が言っていたんですが、こういうふうに心構えができますと、「心の力」を使うことができるんじゃないのかなと。「心の力がある」と言うんですね。つまり心を使うことによって、周囲に気配りができるし、相手の心の先を読むことができるということなんですけれど。
 もっと言うと、例えばその人が初めてのコースを走るときにも、普通は初めて走るから怖いわけですけれども、自分の心の力を使えば、あたかもそこを何回も走っているかのように、すいすいと走ることができるというふうなこと。
 例えばF1ドライバーの頂点にいるような人は、そういう時速何百キロの世界で、アイルトン・セナは「鈴鹿の130Rで神を見た」と言っていますけれど、それはやっぱり自分の心の世界と対話するところまでいって、その力を使って走っているというところがあるのかも知れないなと。そういう腕前の部分までいくと、心の領域に入っているんじゃないのかなと考えられると思うんです。

 今お話した運転の話をまとめますと、まず人が生きていくために、相手と接触して交わっていくためには、最初に自分の立場や目的は何なのかということをよく考える必要があると。
 2番目に自分の心をもっと相手に向ける。相手のことを考えるということを認識する必要があるわけですね。
 3番目に自分自身の意識して心をコントロールする。つまり急いでいるときは急がずに1テンポ待って、間をおいてリラックスをするようにすると。
 その3つのステップを踏むと相手が考えていることがよくわかるし、摩擦が相手との間で起きないし、お互いが緊張せずにすみますし、結果として物事がうまくいくという。そういうことがあるのではと思います。自分の立場や目的を考える、そして相手のことを考えるとか相手に心を向ける、自分の心もコントロールする。
 運転のことを考えていくと、その3つを意識するということが重要なのではないかと考えを進めることができるわけです。これは前置きですが、ここを延長してプロフェッショナルの人はどういう仕事の仕方をしているかをこれから見ていきたいと思います。

人間力とは、「大人になること」と見つけたり

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