| |
驚くべき公聴会の即時性、柔軟性、専門性
中林美恵子氏
中林 また公聴会が法案を作成する一段階という理由以外で開催されることも往々にしてあります。それは社会に大きな問題や疑問が発生したとき、たとえばエンロンの会計問題や一般企業倫理問題とか、ヨーロッパ通貨統合におけるアメリカへの影響だとか、行政府を監督するうえでのヒヤリングだとかという機会を捉えてのタイムリーなものが多いです。
公聴会という場があり、何を即座に取り上げるべきかという価値判断ができる議員や、またはそれを議員に伝える能力のあるスタッフがいて、公聴会作業や立法作業ができるわけです。
現実的には、法案が提案されて、委員長が「これは本会議に送る必要がある」と判断すれば、それを審議するためにまず公聴会を開きます。これが基本形です。ただ単に法案が出たからといって委員会はいきなり本会議には送りません。必ず公聴会を開きます。
運営者 必ず開くんですか?
中林 なぜなら委員会に提出されても委員長が取り上げない法案が80%くらいあるのが現実ですから、委員長が取り上げるという事実だけでも、委員会での大掛かりなプロセスが始めまるのだという合図です。つまり公聴会はその一歩です。
たとえば歳出法案にしても、予算決議にしても。公聴会を開かなければ国民に対しても何をやっているのか分からない。委員会が仕事をちゃんとしているという事実を示すためにも「公聴会を開きました」っていう記録は欲しいわけです。
運営者 証人を選ぶのはだれですか。
中林 まずどんな公聴会を開きたいかを言い出すのは、委員会のスタッフ・ディレクターのこともあれば委員長や筆頭議員のこともある。議員が言いだしたら、これはもう絶対にやります。たとえば現予算委員長のケント・コンラッドは言い出しっペになるのが好きな人ですから、いろいろな公聴会を開こうとしますね。
証人の選択については、議員が詳細を既に把握している場合にはそれを尊重しますが、まだ勉強段階なので実際にはスタッフが自由に選んでしまうことが多いです。
証人の数も公聴会によってさまざまです。例えば「グリーンスパン連銀議長を呼んでアメリカの経済がどうなっているのか聞きましょう」というときは、彼ひとりですし、「日本経済の低迷が与えるアメリカへの影響を勉強しよう」というときは日本専門家からウォール街のアナリスト、そしてシンクタンク研究員などに来てもらう可能性があるでしょう。時間も朝から晩まで開くこともあれば、午前中だけで終わることもあります。
運営者 証人もまた両党の側のスタッフが選ぶわけですね。
そうするとですね、公聴会というのは、議会が間違いを犯さないようにするためにチェックする役割を果たしていることになりますね。議員がその法案のために最も必要な知識を得た上で、委員会審議を行うことができるわけですね。
中林 スタッフにとっても同様です。スタッフといえども全てを知り尽くしているわけではなく、あらゆる分野の専門家でもありません。議員もスタッフも、常に猛スピードで懸案を学ぶ力が必要とされます。
それで公聴会は法案に関することだけではなくて、「ただ勉強したいだけ」の時も開けるわけです。自分の所属する委員会の権限範囲であれば、「EUの通貨統合はアメリカ経済に大きな影響を及ぼすのではないだろうか、これは少し勉強しておきたいな」という意図で開いていいのです。
また公聴会は、議員にとっては公の記録が残る場所であり発言するチャンスでもあります。たとえば日本に関連する公聴会が開かれると日本のマスコミが駆けつけますが、これも「発信効果」のひとつです。効果がある理由は、「いざとなれば議員が法案作成に与える影響がもしかして大きい」というシステムへの理解があるからです。
次へ進む
|