仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●裏金の闇.1





□仙波さんを支える会 講演会会場 講演会の続き

東「それで一去年あたりから、あちこちの県で警察の裏金の匿名告発が相次いだんはみなさん知ってますよね。
 特に北海道では、地元テレビ局と共産党に裏金づくりの詳細な資料が送られてきました。これをテレビ朝日が全国放送で報道して、大変な騒ぎになったんです。

 議会の追及の結果、04年9月13日の北海道議会では、北海道警の芦刈本部長が、1998年度から00年度の3年間にわたって、道警のほとんどの部署で捜査費と捜査用報償費がほぼ全額裏金になっていたことを認めました。
 総額は約14億円です。道内68の警察署、道警本部各課、各方面本部、警察学校など159部署のほぼすべてで裏金づくりが行われており、署長や本部の課長、会計担当者らは裏金の実態を熟知していたということすら本部長が認めています」

  参加者ざわつく。

東「北海道新聞では、これだけの裏金を作るには約40万枚の会計文書を偽造する必要があると推計しています。捜査員の"支出伺"と"精算書"、それに現金を受け取ったとされる架空の協力者のニセ領収書などを必死で偽造するわけです。完全にシステム化された裏金づくりが、仕事そっちのけで、膨大な手間暇をかけて行われとったということです」

仙波「警察官だけでなく、運転免許センターの食堂のおばちゃんにまでニセ領収書を書かせてとるんですよ」

東「だいたい、県警単位での裏金づくりのイメージは、こんな感じ(資料リンク有り)ですよ。要するに、貴重な税金を幹部以下全員で横領するための恐ろしく細かい仕組みが警察全体に広がっていると言うことです。分配の原則は"上に厚く、下に薄く"です。
 県警本部は裏金に回す予算が少ないので、福岡県警の場合"基本経費"という名目で、各署に配分時に25%カットして上納させていたらしい。
愛媛県では、年度始めに県警本部会計課の予算担当者が各警察署の署長室を訪れて、
この署には今年は旅費をいくらつけるから、カラ出張してそのうちいくら本部にキックバックしろ
と署長にお願いしていたそうです。つまり、県警本部が各署にカラ出張を強要していたわけです」

参加者「組織的な横領やな、まちがいない」

東「北海道では、これらの裏金のうち2億5000万円を返還することになりました。金を返してすむ話なんかと思いますが、この時OBを巻き込んだ強引な返還のプロセスの中で、会計担当のOBからの反発として、彼らがどのように裏金をつくってきたのかという証言も明らかになってきたんです。

ある警察署では、年間予算が6000万円のうち、一般署員の正規の日額旅費すらピンハネされて、600万円が裏金になり、そのうち500万円は署長が転勤するときに当然のように餞別として懐にしていったそうです」

参加者「警察署長いうんは、たいした泥棒じゃのう」

東「このOBは裏金づくりのやり方を、道警本部会計課の幹部から個人的に指導されたと語っています。
裏金を警察署の次長や副所長に渡すときには、大学ノートに年月日.科目、金額を書いた様式をつくり受領印を必ずもらうこと、そうしないと会計担当者が裏金をつくって公金横領した張本人になってしまうんだそうです。そのため当時作成した裏金明細書は今も手元に保管しているとのことです。
道警では冬場寒いので本部に、サッシにしてほしいと頼んだら、会計担当者に、そちらの交番は去年すでにサッシになっていると言われたらしい。つまり物品費が裏金になってしまっとるんやね。捜査に必須の携帯電話も自腹。出張しても打ち切り旅費といって、旅費がまともにもらえない。日当や時間外手当までもピンハネされとります。実際に捜査協力者に捜査用報償費を払ったら、せっかく会計担当者が裏金づくりのためにつくった架空の設定がおじゃんになるので、所長に大目玉を食ったという話もあります。 多くの会計や庶務担当者は、毎日裏金をどうつくるかで頭が一杯だった、と証言しています」

参加者「なんか、裏金づくりのために涙ぐましい努力をしとるんやなあ」

参加者「ほじゃけど、税金やぞ」

参加者「あっ、ほうか! けしからんのう。
それにしても、そんだけ大きな不正がなんでバレずにすんどるんですかね? 全員がうまく口裏を合わせるいうんもむつかしいでしょう?」

東「結局、27万人の警察組織全体でやっているマネーロンダリングなんですよ。裏金づくりに使っている書類は、表紙から書式まで地域が違っても同じだったりします。
現場レベルでは、所属長や警部になる前に、東京の警察大学校に行くわけですが、そのとき捜査費で不正を行う手法を、全国の担当者同士が情報交換するらしい。
国の会計検査をすり抜ける方法についても、都道府県警の担当者に対して、警察庁の会計課職員が研修にやってきて引っかからないようにする方法をちゃあんと指導してるんです。その指導マニュアルのコピーもわたしの手元にありますよ。
県警の監査室がやっている内部監査というのは、実際は不正隠しの打ち合わせのことなんです」

参加者「裏金の元締めは警察庁か」

参加者「東さん、もう呆れてね、開いた口がふさがりませんよ。いったい警察幹部の意識はどうなっとんですかね」

東「連中はね、ちゃんとした予算と裏金の区別が、すでにつかんようになっとるんですよ。
公僕意識なんか露ほどもありません。自分たちはお上である。お上にはなにかと金が必要なんだ。そのカネはどこかから出てくるはずだ、お上のためなんだから出てこなくてはならない、という考え方です。だから裏金は、彼らにとっては絶対に必要なものなんです。理屈なんかないんです。
一方部下のほうは、裏金の存在はあまりにも自然なことであって、告発の必要性すら意識していません。不正経理の片棒を担ぐのを積極的にやりたいと思っているわけではありませんが、ただ前任者の申し送りに従って、日常業務として淡々とこなしているだけなんです。

参加者「裏金づくりは警察の仕事の一部ということかあ」

仙波「いや、裏金づくりのほうが、仕事より大切なんです」

参加者「冗談やないですよ!」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。