仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 


 

●人生を賭けた主張





□法廷内 続き

裁判長「そろそろ時間もあれですから……」

仙波「裁判長、本人尋問をさせてください」

裁判長「原告どうぞ」

  仙波はテープレコーダーに手を置いて質問する。

仙波「菅課長、あなたはこの裁判で、宣誓の上での証言として、私が言いもしないないことを、たくさん話した。妻や息子のことを……、私のプライバシーをことさらに暴いた。
 でもそれはもうどうでもええ。ひとつだけ教えてくれ。あなたは告発の前日に、警察内で私を拉致しようという話が出たが、あなたがそれを止めたという話をしましたね。この話も否定しますか?」

  菅はさらに動揺し、テープレコーダーと仙波の顔をチラチラみる。

菅「ら、拉致なんて言うはずがない、ち、力ずくで止めようという話が出たんだ……」

  傍聴席がわっと沸く。

傍聴席「それは犯罪だろう」

  その声で菅は自分が失言したことに気づきうろたえる。

仙波「裁判長、最後にひとつだけ言わせていただけませんか」

裁判長「長くならないように」

仙波「警察官僚は、地方警察を支配するシステムを悪用して自分たちが手を汚さずに巨額の税金を横領し、ばれそうになったら地方の警察官に罪をなすりつけ、自分たちは罪に問われないという制度を作りました。これはあまりにも洗練された悪のシステムです。
 警察は、裏金づくりを告発しようとする善意の人たちを、これまで組織の敵として葬ってきました。僕も、いままさに葬られようとしとります。

 だけど、僕は聞きたい。警察は、自分たちが罪を犯していて、どうやって犯罪者を捕まえられるのか。自分たちがウソをついているくせに、どうやって犯人に自供させられるのか。
 ここにいる警察官たちは、組織文化として、自然に裏金づくりをさせられ、黙って裏金をつくっていれば昇任させてもらえるという共犯関係に組み込まれています。その結果、彼らは正義心を奪われてしまった。もしこの人たちに正義心があるのなら、この神聖な場で、こんな誰が聞いてもウソだとわかるデタラメを並べないでしょう。

  警察というのは、市民の安全を保証する拠り所なんです。何か困ったことがあれば、警察に相談しに行ったら何とかなる。物を取られたら、警察に行ったら一生懸命探してくれる。この市民からの信頼感がわれわれを警察官たらしめるものです。そのために市民は、捜査費を貴重な税金の中から割いて渡してくれてるんです。その信頼を裏切り税金を着服していて、検挙率が上がると思いますか。市民の信頼と協力がないと、犯人はますます捕まえにくくなるんですよ。

  ここにおる人たちは、裏金と退職金をたんまりもらって逃げおおせると思っとるんでしょう。でも裏金づくりは、警察の規律を破壊し、社会に必要不可欠な警察の機能を弱体化させているんです。市民との絆は1度失われたら、回復はたいへんです。困るのは、みなさんの子供や孫なんです。つまり警察幹部は、将来の世代から搾取しとるわけです。それでええのか。そこにカケラでも正義があるのか!
 わたしが人生を賭けて言いたかったことは、たったひとつです。(被告人席を指さして)今の日本で日常的に組織的に犯罪をやっとるのは、ヤクザと警察だ。しかし私は警察に正義を取り戻したい! 警察は裏金を認めて謝罪し、過去を清算すべきだ。
 ……以上です」

裁判長「……被告側の方、今の原告の発言を聞いて、何か言いたいことはありませんか?」

  原告側、全員下を向いてしまう。
  飛び交うヤジ。裁判長は左右の陪審と顔を見合わせる。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。