仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●裏金の闇.2





□仙波さんを支える会 講演会会場 講演会の続き

東「それで一昨年以来、北海道、福岡、熊本、京都、静岡、東京、高知など全国のオンブズマンやマスコミが警察裏金問題を追及してきました。都道府県警を楯にして安穏としていた警察庁も無視していられんようになったんです。
 それで、警察庁でこれらの噴出した裏金疑惑のもみ消しにあたっとるんが、ちょっと前に愛媛県警本部長に来とった小林ですよ」

参加者「へー、あいつかあ」

東「小林は警察庁に戻って、いまでは官房長にまで出世しとります。
 彼は、全国の各県警に対して、そうした疑惑を一切否定し、これ以上内部告発が起こらないように力でねじ伏せろ、と命令したらしい。最初は、裏金問題は都道府県警のごく一部でたまたま起こったことで、全国ではそんなことはあり得ない、とノンキャリの首を切ってしらを切り通していました。
 不思議なことに、証拠の文書は全国の警察の部署の3/4にあたる326部署で一斉に紛失したんですよ」

参加者「警察庁が証拠隠滅を指示したんやな」

東「それから警察は、議会からの監査を妨害するために、愛媛でも北海道でも、資料には徹底してマスキングして、何も読めないようにして提出してました」

参加者「なんで情報公開せんでもええんですか?」

東「捜査上の秘密、だそうです。警察は仙波君の裁判の証言でも、この"捜査上の秘密"を押し立てて拒否してくるでしょう。
 それから愛媛県議会でも、正岡さんのスクープから始まった大洲署の領収書偽造問題が追及されました。現場の警察官たちは、裏金の実態が明らかにされて、県警が謝罪して、裏金がなくなることを期待したんやけど……」

正岡「聞き取り調査で、愛媛県の監査委員4人が大洲署の会計課職員から聞き取りを行ったのですが、その捜査員の両脇には大洲署長と県警本部の会計課員が座っていて、その他にも複数の大洲署の会計課員が取り囲んでいたそうです」

東「そんなんで本当のことを話したくても話せるでしょうかね。県警は明らかに、事実を言わせんようにするために、プレッシャーをかけたわけです。こういうのも小林官房長の指示に沿ってるんでしょう」

参加者「警察は、徹底的に裏金問題を隠蔽するつもりなんですね」

東「その通り。だから裏金もみ消しのための警察内部のプレッシャーもたいへんなもんなんです。北海道では、裏金を捜査費に回したら検挙率が上がる、なんて意見具申した警察官が飛ばされて、結局退職に追い込まれています。他の県では告発会見の前に別件逮捕された警察官もおったし、04年8月には、北海道の興部警察署長が遺書に、自らも裏金を作り受け取っていた、と書いて監査の直前に自殺しました」

参加者「なんなんぞ、まるで恐怖政治の独裁国家やないか」

東「幹部は腐っとっても、現場の警察官はやはり正義心を持っとりますからね。議会の調査が入ったら、ホントのことを言おうとする警察官もいますよ。まじめな警察官は、こんな腐った組織の中で毎日葛藤しとるんです。
 北海道では、ノンキャリたたき上げで本部長クラスになった原田宏二さんが記者会見を開いて、私の現役時代には確かに裏金をつくっていました、と爆弾告発をしました」

参加者「やったやないですか。警察庁も降参して、裏金の存在を認めたでしょう」

東「フフフ、甘いですよ。裏金疑惑を否定しきれんと考えた小林官房長は方針を変更して、証拠があるものについてはその年、その署だけ不正があったと認めて謝罪せよ。しかし幹部が私的に横領したことは一切認めるな、と命令を変更したんです」

参加者「あくまでも警察官僚の責任は認めん、いうつもりですね」

東「当たり前でしょう。トカゲのしっぽ切りですよ。警察全員が犯罪者なんやけん、トカゲも反抗できませんしね。
 そして勇気ある証言をした原田さんには、例えば、
 卑怯者、道警OB最大の悪魔、全国警察OB一番の大馬鹿者
 友と組織を裏切った告発者の責任を取れ さんざん甘い汁を吸い尽くしたくせに、恩を仇で返した裏切り者
 といった手紙がたくさん届いています。こうした警察内部からの中傷の手紙は、仙波さんや、仙波さんを支える会事務局にもたくさん届いてるんです」

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。