仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「警察裏金告発の行方」

「正義の人」 シナリオ版「仙波敏郎物語」 

●仙波さんを支える会





□愛媛県警本部通信指令室外の廊下

  正岡が仙波と話している。

仙波「参りましたが。さっき友だちと廊下ですれ違ったときにね、もうわしに話しかけんといてくれやって言われたんですよ」

正岡「なぜですか?」

仙波「僕と話したことは、全部上に報告しないといけんらしいんです」

正岡「なんだそりゃ」

仙波「本部全員にそういう指示が徹底しとるらしいんですわ。
 だから、そうか、めいわくかけて悪るかったのう。もう話しかけんけんの、と断ったら、ほんとにうれしそうな顔しとるんですよ。僕を裏切って上に報告書を書くんが、よっぽどつらかったんでしようねえ」

正岡「そんな締め付けをやってるんですか。とんでもないな。
 ……そういえば、仙波さん、昨日女性の家に行きませんでしたか?」

仙波「えっ、行きましたけど、何か?」

正岡「まずいなあ。うわさが広がってますよ。

仙波「うわさって? 女性って、いとこの家に行ったんですけど」

正岡「えっ、そうなんですか。仙波に女ができたって話で、広報がうれしそうに記者クラブで吹聴して行きましたよ」

仙波(怒って)「また僕を尾行して、変なことを言い触らしとるようやな」

正岡「情報戦になってきましたね。まあいいでしょう。
 うちの局では、今晩のニュースで、仙波さんの不当異動について特集して流しますから。ドカンときますよ、これは」



□仙波さんを支える会 講演会会場


  支える会が主催する資金集めのための講演会には、
  数百人の市民が押しかけている。
  仙波と東と古茂田が、入り口で参加者を出迎えている。

東「えー、仙波さんを支える会にご入会希望の方は、こちらの申込書にご記入ください」

古茂田「(正岡に向かって)昨日の愛媛テレビの報道が効いているみたいね。ありがとう」

参加者「仙波さん、あんた男やで。応援しとるで」

参加者「報復人事に負けんと、頑張ってくださいね」

  演壇に東、仙波、弁護団が着席する。

東「それではわたしのほうから、全国の警察で裏金がつくられとるという実態について、みなさんにお伝えしておきたいと思います。ご質問がありましたら、適宜お願いします」

仙波「東会長にいろいろ細かく調べていただきました」

  東、資料を見ながら話し始める。

東「まず、裏金づくりの手法についてですが、捜査費と捜査報償費はほぼ全額が裏金に回っています。だいたい年に200億円でしょうね

 次に旅費が非常に大きいですね。京都府警では、03年度に本部と警察署に支給された7400万円の旅費のうち、6割の4300万円が裏金に回されたことがわかっています。交通費や宿泊費の実費分は本人に支給しますが、日当や旅行雑費を裏金にしていたようです。
 旅費については、捜査員個人の銀行口座に振り込まれるわけなんですが、各部署の幹部や会計担当者が、振り込まれる個人口座の通帳とキャッシュカードを本人から提出させて、本人の知らんうちに口座から出し入れして、裏金にしてしまうという方式が全国で広く行われていました。ですから、実際に捜査で出張したにもかかわらず、旅費がもらえなかったという笑えない話もあったようです。
 北海道での裏金問題が大きくなるにつれて、通帳は本人に返還されるようになりました。愛媛県警でも同様です。

 警視庁の機動隊では一人あたり月5万円支給される日当を全額ピンハネして、まるまま裏金にして、月に一億円の裏金がつくられていたという証言があり、この詳細は本になって出版すらされています」

参加者「太い話じゃのう」

東「ええ、これはもう太いですよ。トータルで年間400億円の横領ですからね。3億円犯人もびっくりの大泥棒ですよ。

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この物語は事実に基づいていますが、一部の登場人物、警察幹部間のやりとりなどは創作しています。またいくつかのエピソードは場所を変えたり、実際より省略、時間を前後させて描いています。